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パーティーにご招待

「なぜここでヴィクトリアの名前が出るんだ」

「なんでって、元はと言えば兄さまが用意したんじゃないか。婚約者をターゲットの元に送り込むなんてさすが鬼畜だ。あ、これは僕にとっての最大級の誉め言葉だよ?」

「婚約者なんて親同士が勝手に決めたものだろう」

「そんなことは言っても、ヴィクトリアが自分に惚れこんでいるのを利用して雑魚女騎士に送り込んだんだろう? 結婚っていうエサをちらつかせてさ」


 ここまでお喋りだと頭が痛くなる。人を不愉快にすることが好物であるからこそ、ガブリアスは俺から離れない。疎まれても、その好物をみすみす眺めているだけでは飽き足らないらしい。


「ねえ、兄さま。あの女騎士を殺すときはぜひとも僕を一番の観客席に招いてね。あの高飛車な顔が苦痛で歪んでいく姿を見届けたいからさ」

「……」


 そんな日はきっと来ないということを、この男はわかっていない。リディアを殺すその場所は、俺だけがいればいい。


 俺だけが──。


***


「まあまあ! リディアお嬢様、これはとんでもないですわ!」


 ばあやが嬉しそうに用意していたのは、パーティーの招待状だった。しかも机の上に高く積み上げられるほど大量だ。


「……なにこれ」

「なにって、リディアお嬢様と結婚したいと願う男性たちではありませんか。元々はリディアお嬢様の人気は高かったですけど、ここ最近、幼い少女を救った伝説が街でもしっかりと広まっているようですよ」


 どうやら変に目立ってしまっているらしい。本来のリディアなら、幼い子どもを命がけで守るという行為はしなかったはずだと、後々になって気付いたけれど、起きてしまったことはどうしようもない。


「ばあや、このパーティーには参加しないという選択もあるの?」


 そう聞くと、ばあやは心底悲しそうな顔を見せた。


「リディアお嬢様、今までもそういう選択を真っ先にされていましたよね。ですが、今回は別です。そろそろ結婚を考えてもいいんじゃないんですか?」

「で、でも……ええと、ほら! 私は一応、騎士団に所属しているわけだし、結婚して家庭を持つって現実的ではないと思うの」


 なんて言ってるけど、騎士団はもう辞めるつもりだ。さすがにばあやが聞いたらショックで倒れてしまうだろうから、なかなか言い出せずにいる。


「ええ、それもそうです。ですが、いつまでも騎士団にいるわけにもいきません」

「え?」

「旦那様には決して言えた話ではございませんが、リディアお嬢様にはいつか騎士団から脱退されたほうがいいのではないかと思っているのです」


 嘘、ばあやは騎士団を辞めることに賛成なの?


 てっきり反対されるかと思っていたのに。


「いつかは結婚し、幸せな家庭を築いてほしいとばあやは切に願っております。ですから、まだ結婚は先だとしても、将来の結婚相手を今から探すというのは悪くないのではないですか?」

「……ばあやの気持ちはわかったわ」

「なんと! わかってくださったのですか?」


 信じられないとでも言いたげに、ばあやの顔に輝きが出る。


「ばあやは嬉しいです。今までのリディアお嬢様は、結婚という言葉が出てくるだけで吐き気を感じていたというのに」

「そ、そこまで!?」


 いや、でも確かにリディアに結婚は結び付かなかったかも。


「ええと、ちなみに、騎士団の脱退はばあやは何歳ごろを考えているの?」

「そうですね、……ニ、三年後でしょうか。子どもを産む年齢も考えなくてはいけませんし。あ、旦那様にはどうか内緒にしてください」

「も、もちろんよ」


 二、三年後じゃどう考えても遅い。その間に私は殺されているはずだ。騎士団はさっさと辞めた方が懸命か。


「ねえ、ばあや。お父様の姿がずっと見えないけど、いつ帰ってくるのかしら」

「旦那様はこちらには戻られません。基本的には騎士のみが宿泊する屋敷がございますから、そちらにいらっしゃいますよ」


 なるほど、そういう屋敷があったのか。できればお父様には早いところ切り出したほうがいいとは思うけど……ああ、でも小説を読んでいたときでもリディアのお父様ってものすごく圧力があったというか、怖かったんだよなあ。目の前でちゃんと話せるだろうか。


「さあ、リディアお嬢様。ひとまずどなたの招待を受けるか決めましょう」

「え……あ、うん」


 とはいえ、すぐに会いに行けそうにもないし、それに結婚なんて話が出れば、少しは騎士団を辞めやすくなるかもしれない。


「わかったわ。じゃあ、ばあやのオススメを教えて」

「そうですね……これだけ量があると──」


 そこで、ばあやは何か気付いたように手元の動きを止めた。


「リディアお嬢様、一番よい方法がございましたよ」



 そして迎えたパーティー当日。ばあやの「よい方法」というのは、私の屋敷──つまりはエヴァンズ家でパーティーを開くということだった。そこまではよかったのだけど……。


「リディア?」


 招待客を見て私は目を疑った。パーティーに出席すれば、なぜかそこにはオスカーとレオにヴィクトリアというメンバーが揃っていたのだから。


「ど、どうして皆がここに……!?」

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