止まない雨
雨が止まない。生まれた時からずっと。
隅々まで空を見渡しても、西の空はおろか、どこの方角にも雲の切れ間はない。
足が水に浸かってきた。地面が限界まで水を吸収してしまったようだ。
それから瞬く間に水位が顔の位置まで上がってきた。傘は消えている。いつ手を離してしまったのだろうか。
すぐに体が浮きはじめ、浮かんでいないと息ができないようになり、そうなってようやく、ずっと心に抱えていた悲しさや恐怖、不安、孤独、虚しさが、蓋を押し上げて溢れかえってきた。どうしてこんな目に遭わないといけないのか。どうして雨は止まないのか。一体いつまで降り続けるのか。どうしてこの世界には私しかいないのか。こうまでして生きる意味はあるのか。
それでも雨は止まず、水位は上がり続けた。
溺れないように必死に足掻いた。そうするしかなかった。地面から遠くなるにつれ、空気が薄くなる。顔は水の外に出ているのに、溺れているみたいに苦しい。
次第に雲が顔に当たるようになった。雲は空気中の水だ。払いのけないと窒息してしまう。だが、ここを越えればもう雨は降るまい。止んだからといって状況が良くなるわけでもないが、とにかく信じて抗い続けた。
しかし、そのがらんどうな希望はあっさり打ち砕かれた。
雲の切れ間が見えて、水位が雲の高さを超えたのに、雨が止まないのだ。
希望を失い、雲という目印を失ってからは、体力が一瞬にしてなくなった。
水面がどんどん遠くなっていく。とうとう力尽きて、沈んでしまったようだ。意識が遠くなっていく。ただでさえ暗い水中が、真っ暗になった。
あれからどれくらい時間が経ったのか。目が覚めると、水の底、錆びた金属の上にいた。ビルの残骸か何かだろう。
水中で呼吸ができている。確実に沈むまではできなかったが、どうやら窒息では死なせてもらえないらしい。
何かを探すように上に向かって泳いだ。すぐに自分がどこを向いているのかわからなくなった。
それでも泳ぎ続けているうちに、かすかな光を見つけた。
その正体が何なのかはわからないが、それに向かって進んだ。そうする以外に選択肢はなかった。
時間の感覚がなくなりそうになるほど泳いだ頃、光が揺らいだ。水面の揺らぎだ。水面が近いらしい。
光を見失わないように急いで泳ぎ、水面からぱっと顔を出した。
そこには、宇宙が、星々が広がっていた。
私を導いた光は、一体どの星だったのだろう。
それでも雨は止まない。




