表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/129

5-24「派手な口上が無くてすいやせんね」

 アードの魔装、浮かぶオーブがエメラルドグリーンに輝く。

 現れるのは美しいオーロラ。

 オーロラは布を畳むように重なり、その厚みを増していく。


 マガロを包む氷のドームの前で、何層にも重なったオーロラは一瞬で凍結。

 分厚い氷壁へと姿を変える。


「魔装開放……『狼王剣ロード・ディフェンダー』!

 この盾の前に、小細工など通用すると思うな……!

 開け、『狼王の晶盾リーシオン・グランドディフェンダー』!!」


 ガダルの咆哮と共に突き上げたバスタードソードが両刃の巨大な両手剣へと姿を変える。

 紅と黄金の光が収束、その刀身から放たれた輝きが宙に巨大な狼の家紋を描いた。


 二色のオーラが混じり合い、家紋を囲むように作り出すのはエネルギーの盾。


 マガロほどもある超巨大な盾は、轟音と共に地面へと突き刺さる。


「……キャアさん、高度をギリギリまで上に!

 敵の全身が激しく蠢いていますゥ、実による爆撃が来ますよォ!」


 マヌダールの声と共に、巨大樹の枝が大きく揺れた。

 枝から紫の実がポロリ……と落ちていくのが見える。


「あれじゃあ、自分の足元にしか攻撃できねえだろ。

 落下前に回収出来るか……?」


「クゥ、ダメだと思う。

 横へと離れて様子を見よう。

 ああいうのは……きっと飛んでくる」


「分かったぜ。

 マトがシワシワになってねえんだ、かなり可能性が高い。

 回避中心で盗れそうなら盗る、だ!」


「わかった!」


 その瞬間。

 大樹から落下を始めた実がピタリ、と空中で留まる。


「……ほら!」


「ご明察、ってとこか?

 集中するぜ、振り落とされるなよ!」


 蠢く大樹の動きが止まった。

 同時に空中で一時停止していた実が、一斉に放物線を描いて味方全員へと飛ぶ。

 その数、数十……まさに雨あられ。


 ガダルの展開した巨大盾に次々と炸裂した実が、オレンジ色の樹液を撒き散らす。

 オーラの盾ゆえに溶解はしない。


 けれど、その雫が雨のように降り注いだ石床は、泥のようになって削れ始めている。


「クッ……! 一つ一つはそれほどでもないが、この数は……!」


「我の力の影響を受けながら長年育ったのだろう。

 ……我がそばに居ることで、力を増している可能性も高い……」


「ほぼそう言うことだろうなぁ、マガロさんよ!

 だが、その位じゃねぇとな?

 探索は盛り上がらねえよな、お前さん達!」


「違いないですぜ!

 あっしの知ってるやつは、実を落とすだけでしたが……投げてくるとは面白いですぜ!

 弱点は同じハズ、狙いは変わりませんぜ!」


 ガダルの盾の影響下から、ピートが走り出す。

 足はお世辞にも速くない。

 踏み出して即、敵の懐へ肉薄なんて事は出来ない。


 泥臭く走り、紙一重の直撃を避け。

 跳ねた雫で服や肌を焼きながら、恐れる事なく巨木へと突き進んでいく。


「……(デザイア)司書なき図書館(ライブラリーアウト)】。

 縷々(るる)たる書庫――棚は魔法。

 開くは呪文書、妨害術。

 第五階位、時の法。

 回らぬ針、刻まぬ針。

 流るる理は遅れ、事象の追従を振り返る。

 鐘が告げるは昨日の夕暮れ――。

 『複数速度低下(エリアスロウ)』!!」


 上空からマヌダールの声が響く。

 放たれた時計の秒針のような光のトゲが、宙を舞う実へ次々と突き刺さる。


 実が破裂することも、ダメージも無い。

 けれど、その飛行速度は著しく低下。

 まるで、ゆっくりふわふわと降下してくる空気の抜けた風船だ。


「助かりやすぜ!」


 この着弾速度ならば、真っ直ぐ走って充分に敵の弱点へと届く。


「流石ジジイ、分かってやがるぜ! オレらの仕事も再開だ、マト!」


「うん!」


 敵の攻撃範囲から外れ、様子を伺っていたクゥも動く。

 ゆっくりと落下する木の実へと走り込んで、そっと抱える。


「落とすなよ!」


「わかった!」


 クゥがマトへと小さめの実を手渡し。

 クゥは空いた両手で再び実を抱え直す。

 これで2個ずつ運べる。


「運ぶぞ!!」


 駆け出した足は、まだ加速(ラピッド)の影響を残している。

 つむじ風の如く、氷の壁の横を回り込みアードの横へと実を運ぶ。


「お届け物だぜ!」


「だぜ!」


「ったく、爆弾を増やしやがってよ!!

 こっちはガダルと俺で大丈夫そうだ!

 実はお前さん達がバッチリやってる、木はウチの見習いがぶっ倒す!」


「おっさん、この爆発物、持ち帰り方考えといてくれよな!

 じゃ!」


「じゃ!」


 声と共に跳ねたクゥの姿はもう無い。次の実の回収へと走っている。


「……!? お前さん達、人に面倒事押し付けて行くんじゃねえ!

 ったくしょうがねぇなあ!」


 アードが盛大な溜息を着けば、氷のドームの中でごふん、と大きな咳払いが反響する。


「マガロさんよォ、ケツを床にハメたまま笑いを堪えてんじゃねえよ。

 俺には聞こえてんだぞ」


「く、苦労人だと思ってしまってな……」


「お前さんのせいでも苦労してんだよ!

 早くケツ引っこ抜け!」


「抜けぬ……」


 ハァァー、という巨大な溜息が聞こえた気がする。


 その間もピートは突き進む。

 落下する実がゆっくりになろうとも、大きく回避していては時間を食う。

 多少の被弾など気にせず、自慢の体力で真っ直ぐに突撃する方が相対的にダメージが少ないと判断した。


「身体は昔戦ったヤツより遥かにデカいですが、形は同じですぜ!

 なら――間違いなくコブをぶっ叩けば倒せやす!」


 浴びた溶解液での傷跡は全身に残り、煙をあげる。

 けれど、眼の前には弱点らしきコブがハッキリ見える――辿り着いた。


 巨樹もようやくその接近に反応する。

 爆撃木の実の間、動いていなかった根が再び激しく蠢いた。


 木の実を射出、コントロールするのに何らかの機能を集中しなければならないのだろう。


「いまさら遅いですぜ!

 力を貸してくだせぇ、魔装……『銘刀の末ネームレス・レジェンド』!!」


 腰に着けた古びた短剣を引き抜けば、いくつもの壊れた武器の幻影が重なっていく。

 折れて錆びた短剣は、無骨な片手剣へと変わり、左手にはバックラーが姿を現す。


 妨害のために振るわれた根を、いとも簡単にバックラーで弾き飛ばし。

 コブへと突き進みながら振り下ろす片手剣は、正確に根を切り飛ばす。


「ガダルさんみたいな派手な口上が無くてすいやせんね。

 ……それじゃあ、コイツでトドメですぜ!!」


 振り上げた片手剣に全体重を乗せ、コブへと叩き込む。


 硬い。

 根のようには切断できない。


「随分硬ぇですが……ンなら! 全力で叩き斬るだけですぜ!!!」


 全身の筋肉が隆起し、さらに剣へ力を加える。

 斬撃はゆっくりとコブにめり込むと、そのまま真っ二つに切断した。


 揺れ動いていた触手のような根が一斉に停止、床にドサドサと落ちる。

 大樹は根の力を失い、今まさに倒れようとしていた。


「くそ、あっしだと間に合わねえか!」


 倒れてくる巨木は、走り出してきたピートの真上へと迫る。


「――さあて、本番だぞマト。

 実より大事な物、持って帰るぞ」


 実を運びつつ、ずっと戦況を見ていたクゥが動く。


「まかせた! ボクはしっかり周りを見てる!」


「おうよ!」


 倒れる巨木の前へと疾風のごとくクゥが走り込んだ。


「お待たせだぜ、ピート。

 紙一重だな!」


「クゥさん! 助かりやす……!」


 ピートの手を掴み、思い切り横へと引っ張る。

 そのおかげで見事に幹の直撃を回避。

 枝が身体に触れ、傷跡は増えたものの、大きなケガには繋がっていない。


「っしゃあ、完璧だな!」


 ズウウウン、と遺跡全体に振動が伝わる。

 大樹が倒れた音。

 もはや動くことは無さそうだ。


 程なく全員集合。

 氷の壁やドーム、オーラの盾は消え。

 次なる大仕事のはじまりだ。


「おうおう、マジですっぽりハマってんな」


「わー。ぴったりだねぇ」


「予想以上にしっかりハマって見える……。

 屋敷に飾る鹿の頭のようだ」


「これはケツだけどな、ガダルさんよ……」


「キーヒッヒッヒ、マガロさん。

 これでは遺跡の扉ですよォ!

 何でも開ける鍵の宝物……マトさんが触れれば抜けるかも知れませんねぇ!」


「えい!」


「何も起こらぬな……」


「起こる訳がねぇだろ! マガロ、お前さんもマジな顔で信用してるんじゃねえ!」


「引き抜けば良いのですかい?

 あっしなら……!」


 そう言えば、遺跡でブン投げていた気がする。

 ピートなら引き抜けるかも知れない。


「キヒィ、お任せしたい所ですが、まずは傷の手当が優先ですよォ!」


「そうだな、違いねえ。よくやった、ピート。

 治せる時に治しちまう方が正解だ」


 マヌダールの薬品、アードの持つ道具類。

 2人が協力し全身の傷やヤケドも、手際よく治して行く。


「マトさんよ、薬や道具の使い方は帰ったら覚えとけ。

 お前さんの相棒は、ちぃとヤンチャでケガもするだろうよ」


「わかった!」


「助かるぜ、マト」


「にしし~」


「んでは、傷も治りやしたし、あっしがパパっと引き上げちまいますぜ!」


 ピートがマガロの横に入る。


「私も手伝おう!

 『超剛力(ハイストレングス)』重ねて『肉体超過(オーバード)』!!」


 虹色のオーラを噴き上げたガダルが逆サイドへと回る。


「っせえの、ですぜ~!」


「ウオオオオン!」


 2人の叫びと共に、床にヒビが走り。

 徐々にマガロの巨体が浮かび上がってくる。


「ここまで上がれば何とかなろう!

 汝らに感謝する……!」


 ようやく救出された恐竜のケツの下。

 地下への階段が口を開けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ