表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/129

5-1「汝ら、まさか売るつもりなのか!?」

「んーーッ!」


 モゾモゾとクゥの腕の中から這い出る。

 外はすっかり朝。


 魔法の灯りが明るくなった空に溶け込むように輝いている。


「……ホントに遺跡探索、行ってきたんだなぁ」


 周囲は盛り上がった宴会の跡地。

 けれど、その場で眠る町人は無く。


 朝の庭にはボクとクゥ、マガロだけだった。


 サロペットの胸ポケットを開ければ、中には小さな影兎が眠っている。

 手を突っ込んでそっと探せば、指先に指輪が触れた。


「これ! 地下闘技場の底にあった奴……!」


 そっと取り出して朝日に掲げる。


「赤っぽいけど、何色って言うんだろ……凄い色んな色に光ってる。

 綺麗だなあ……むふふ、高そう!」


 宝石を通り抜ける光は、虹色を作り出していた。


「……お、起きてたか、マト~」


「んあっ」


 ぬいぐるみが如く、抱き寄せられた。


「もうちょい寝てろ……」


「抱っこしなくて良いよお……。おはよ、クゥ」


「おはよ、マト。これは確かによく寝れるわ、ガダルが抱きたがる訳だ。

 何してんだ、腕伸ばして」


「拾ったこれ見てた」


「クソデカ魚のトコに落ちてた指輪か」


「なんかこう、凄い感じがする」


「後でおっさんに頼んで鑑定してもらおうな」


 その時、背もたれ……デカいクッションが動いた。


「……むう、陽か……。む、汝らも居たのか」


「声でけーよ! 朝っぱらからどんな声してんだ、マガロ!」


「わっ……びっくりした!

 おはよ、マガロ。ホントにドラゴンさんがお庭に居た。夢じゃなかった」


「すまぬ、加減が分からぬ。……寝起きも久しぶりだからな。

 地下で起こしたのは汝らで、今起こしたのも汝らと言う事。

 夢ではないな」


「ま、あんな地下に居るより良いだろ。

 そういやお前、お宝の指輪の話してなかったか?

 マトのこれ、どう思う?」


「虹玉の指輪のことか?

 ……む……それだ! その指輪の事だ!」


「声がでけぇって言ってんだろ……! その指輪すごいのか?」


「高いの?」


「憎き王国が生まれる前に作られた、我らの加護を形にしたものだ」


「……王国前の遺物なら、信じられねえ値が着くな。マト、やったじゃねえか」


「にしし、すっごいうれしい」


「汝ら、まさか売るつもりなのか!?

 その虹玉の指輪は我らの力を帯びているのだぞ」


「おう、帯びてると凄いのか?」


「……」


「うわ、超渋い顔になった。マガロしわしわになっちゃうよ」


「凄い……のだぞ……?

 我ら虹の竜は願いを叶え、共に苦難を与えることで世界の可能性を増やすのが役目。

 世界には願いの末に生まれる結末と苦難の可能性と、願いのために生まれなかった可能性が存在する。

 願いの為に生まれなかった可能性の多くは正気を失い、願った主と共に世界へ還る事を望む。

 その――泡沫(うたかた)の可能性を主の心へと還す加護だぞ……?」


「ん……?」


「なんか聞いた事ある……な……?」


「ぷぅ」


「しゅっ」


「あっ! うさちゃん!

 ロトくんも!」


「強欲な者達よ、汝らはその指輪を用いて、業の先へと至ったのではないのか……?」


「悪ィ……知らなかった。

 オレらはよ、その……地下で夜になるとオレらを追ってくる影と出会って……話してたら、ちっさくなって。

 こうやって着いてきてくれるようになっただけなんだよ」


「うん、ボクも。ポッケの中に指輪をしまってたから、力を貸してもらったのかも」


「本来、夜を越えられる者は強欲なる森の長……我ら虹の竜と関わりを持つ所持者だけ。

 他の者は願いを叶え、夜へと還る事で世界は豊かに循環していたのだ」


「夜を越える……! (カルマ)と仲良くなるって事だ」


「んじゃあ、他の者ってのは(デザイア)を持つ者……夜へ還る、(カルマ)と消えるって事だな」


「汝らの言葉で間違いはないだろう。

 我ら虹の竜は願いを聞き、欲を与える者。

 けれど――その願いも、与えた欲も我らには分からず。

 我らを通った力が、欲と赦へと変わり願ったものへと届くだけ」


「ま、まあ、それだけ頼まれてちゃ覚えてたら大変だろうしな」


「フハハ、違いない! 汝らと違い眠っていても欲を与えてしまう。

 この力は我の意思ではなく、世界の意思だろう。

 我も世界の一部ということよ」 


「ねぇ、マガロ。(デザイア)は使ったほうがいいって事なの?」


「勿論だ、マト。

 多くが願い、叶え。願い、向き合い、乗り越え。そして感謝と共に夜へと還る。

 『欲深くあれ。世界はそれを望む。その全ての思いも結末も、世界を回す。

 待ち人は夜の森に。いつか、そこへと帰ろう』――祈りの言葉だ」


「……逆じゃ、ねぇか――。

 オレらは、大きな願いをするな、夜は外に出るなって言われて育ってるんだ。

 それじゃよ。願って、叶えて……満足したら世界に還れ、ってのが昔の良い事ってことか……?」


「汝が言うとおりだ。願わぬ事は、この世界を衰退させてしまうのだから。

 満足できぬなら抗って乗り越えよ、それもまた力を生み出す善行――そういうものだ。

 この指輪は更にその先。

 願いと抗いを繰り返し、生きて立ち向かうことで世界を豊かにする強欲なる聖者の指輪だ」


「やべえ難しい話になってきたな……!

 (デザイア)をしっかり使って、良い感じにすると世界も元気になる。

 もちろんやべぇ事が起こるから、それも越えろ。

 (カルマ)は、願い事の裏側で寂しがってる。

 なんとかしたきゃこの指輪を使えってことだな?」


「やや大雑把だが……汝の言葉で間違いはない。

 価値は分かったか? 世界に7つしか無い指輪を盗んだ大盗賊よ」


 パン、とクゥとハイタッチ。


「やったな、マト~! 凄いぞ~」


 めちゃくちゃ撫でてくれるので、目を細めてえへへと笑っておく。


「ってことはクゥ、この指輪で(デザイア)使えばめちゃくちゃ金貨が増えるんじゃ……!」


「んにゃ、アレはオレの手に入れた宝の幸運を配る力だからな。

 その宝はよ、マトの初報酬だから駄目だぜ」


「えー、クゥのにしたほうがお得だよ?」


「そういうもんなんだよ。ちゃんとポッケにしまっとけ。

 それに――使う必要の有るやつが何人も居るだろ。

 貸してやらないとな?」

 

「わかった! そうだね、貸してあげよ!

 うさちゃんもロトくんも可愛いから、皆のも可愛いよ」


「商人、賢者、剣士――あの者達の事か。

 しかし忘れるな。

 指輪は長にしか扱えなかった――無論、長でなくその指輪を使おうとした者は多い。

 だが……指輪だけ残して世界へと還った」


「大丈夫だぜ。皆、上手くやるさ。

 困って迷うなら、答えが出るまで待てば良い。

 不安なら、一緒に横に立ってもいい。

 影を残したって良いんだからな」


「フハハ、面白い……! 肝の据わった盗賊団よ!

 その行く末、楽しみに見届けさせて貰うぞ」


「いや、見届けてる場合じゃねえぞ。

 お前もその盗賊団のドラゴンだからな、今」


「む」


「その嫌そうな顔、何とかならねぇのかマガロ……」


「お鼻大きくなってるね。

 嫌だと目が細くなって、お鼻大きくなるんだ」


「むう……」


「デカいし目立つんだ。お前を狙ってくる敵も居るかも知れない。

 戦えばお前のが強いかも知れねえが……それが原因で面倒くせえ事にもなるだろ。

 このアルクバーグはオレのじーさんの町、全員が盗賊団みてぇなモンだ。

 悪いようにはしねえ、ちいと仲間(いちみ)で居てくれねぇか?」


「ボクからもお願いする!

 マガロのしたいことも有ると思う! それも出来るように頑張るから!

 街に居てよ!」


「……全く、そんな『願い』を聞いたのは始めてだぞ。

 村に住めなど言った長は1人も居なかったのでな。

 フハハハ! 良いだろう、この我も盗賊で良い!」


 そんなこんなで、正式に何だか凄そうな虹の竜も仲間になってくれた。

 皆も順番に目覚め、庭に出てくれば竜と話し。

 いつものようにピートが朝ご飯を作り、皆へと振る舞う。


 外で賑やかな食事の始まり。

 マガロは自分の食事を取ってくる、と笑い。楽しげに森へ走っていった。


「馬鹿野郎!!! お前さん、そのデカい図体で森へ走るんじゃねえ!

 どこから見ても怪物が暴れてるように見えんだよ!」


 アードの叫び虚しく、狩りに行ってしまったマガロは大変ゴキゲンに「暴れまわって」いた。

 まぁ……大きいから仕方ないよね。

 そして朝のドタバタが終わり、着替えて全員が庭に再集合。

 

「んじゃ、じーさんに報告に行くぞ」


 皆が頷く。

 町長……クゥの育ての親の元に、今回の仕事の報告へと向かう。


 今回は全員。

 とはいえ、キャアは飽きてしまうだろうしマガロは巨大すぎる。

 2人はお留守番だが……壊れた壁の守護者としてこれ以上にないだろう。


「じーさん、報告に来たぜ!」


「おお、来ましたかクゥ。

 おはようございます、みなさん。

 ずいぶん良い仕事だったようで、昨夜から報告を心待ちにしておりました!」


「昨日の夜も話したじゃねーか」


「あれはお酒の席ですからついつい飲みすぎて、トホホ。何も覚えていませんよ。

 それでは何を頂いて来たのか是非見せてください! さあさあ!」


 皆が一斉に机の上に遺跡の宝を並べる。

 巨大な甲冑や枷は孤児院だ。

 この後、町長こと親分が楽しみに見にくるそうだ。


「じゃあマト、とっておきを見せてやれ!」


「分かった! えっと」


 胸ポケットを開くと、指輪では無く黒いチビうさぎが飛び出してきた。


「ぷぅ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ