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4-21「かんぱーい!!」

「っしゃ、そろそろやれそうか……?」


 帰ってきて早々、マガロがデカすぎて壊した建物の片付けが終わり。

 孤児院の庭には、何処からともなくテントやらテーブルやらが運び込まれ。

 人拐いの対策として、ランタンやら魔法の光があたり一面を照らしている。


「ビアガーデンみたいだ……」


「マト? なんだそれ?」


「ビアガーデンは転移の人が持ち込んで無いんだ……。

 ボクが居たとこの、お酒飲むお店。

 外とか建物の屋上にある事が多いから、こんな感じなんだ」


「お前もしかして酒好きだっただろ……?

 うさぎのマトは飲んじゃダメだからな」


「クゥ、ボクそのさあ」


「くしゃくしゃの顔しても、おじさんぽいだけだからダメだぞ。身体ちっさいしな。

 ハチミツとかブドウとかにしとけよな」


「むう……31才なのだけど……」


「マト〜、その顔やめてくれ〜。オレの可愛いチビうさぎで居てくれ……」


「仕方ないなあ」


 そんな話をしているウチにどんどん準備は進み。

 先ほどからピートは厨房に籠もっていた。

 彼の料理を覚えたい子ども達だけでなく、噂を聞きつけた町の人々も手伝いに入っている。


「……ああ、私の家、なくなってしまいましたァ……」


「すまぬ……マヌダール、汝に迷惑をかけるつもりは無かったのだ……」


「ま、まぁ、本や薬は全て運んで貰いましたし、大きな部屋も頂いたので……。

 その代わり、これからたっぷり研究させて頂きますよ、マガロさん」


「それにしても街中が賑やかになってしまったな、クゥ殿。

 今日はそもそも祭りだったのか?」


「あー、誰かのデカい仕事が終わると街中で盛り上がるのはいつもの事だぜ。

 話を聞きつけるとこうなる……しかも大概ウチの庭でやる」


「まあ、クゥさんよ。お前さんの親父さんが町長なんだからそうもなるだろうよ。

 で、ウチの商品の酒はそこに納品しとくぞ。身内が上客だと笑いが止まらねえなあ!」


「マガロの分はデカすぎるんでツケで頼む」


「そのツケだけは許さねえぞ」


 ドラゴンってお酒大丈夫なの?

 寝ちゃうやつと暴れるやつのイメージが強すぎて少し心配だ。


「お待たせしましたぜ!

 探索用に用意した食料が新鮮なまま残ってましたからな!

 豪華に仕上がってますぜ!」


 テーブルごとに、多々ツマミが運ばれてくる。

 完全にチェーン店。

 山盛りポテトやら、ポテトサラダ。

 ウィンナーや焼いたベーコン。

 そして明らかに転移者が持ち込んだレシピの数々。


「ボクの世界のご飯に似てる」


「飯はウマくて作りやすい方が良いんだよ、転移の先輩に感謝しな。

 さ、ピートもガダルもこっちに来い!

 マヌさんもグラス持ってんな?

 マガロ、その酒樽はツケだから後で稼いで貰うからな!」


 皆の手元には各々の好みの酒。

 マガロの前には樽。


「それじゃあ、マト。今日はお前が主役だぜ。

 報告と、乾杯……できるな?」


「報告……!」


「何を盗ったか、って事だ。好きに叫べよ」


「分かった……!」


 クゥの肩によじ登り、グラスを受け取って。

 大きな声で叫ぶ。


「みんなのおかげで、シハの地下遺跡のお宝、金貨一枚残さずかっぱらって来たよ!!

 それじゃ、打ち上げはじめよう!! かんぱーい!!」


 グラスを掲げる。

 たぶん、この世界でも乾杯で伝わるはずだ。


「っしゃあ! 乾杯だ!!」


 庭で声が重なる。

 宴会の始まりの合図。


「えへへ、おつかれさま!」


「マト〜! 良くやったな!」


 クゥがめちゃくちゃ頭を撫でてくるので、目を細める。

 しわしわにならないよう配慮して笑う。


「大きなトラブルも少なく、良い探索だったんじゃねえか!

 お疲れ様だぜ、お前さん達よ!」


 アードがクソでかグラスでワインを回している。

 実に悪そうなビジュアルだ……!


「大きなトラブルは有りましたよォ! とても大きなトラブルが!

 しかしながら、探索は大成功としましょう!

 テンションが上がって何冊も蔵書を焼いてしまいましたが、これも経験!

 良い経費ですゥ!」


「マーさん、沢山魔法使わせちゃってゴメンね」


「いえいえ! 国の図書館から拝借した異界魔法録が殆どですから、問題はありませんよォ!」


「拝借かよ! ジジイも盗賊じゃねえか!」


「拝借ですゥ!」


「して、返す本はどこにあるのだ、マヌダール殿……。

 何にしろ、だ。

 皆無事に帰れ、宝も沢山手に入った。私の剣も……」


「派手になったねえ」


「うわ! ガダル、そんな顔すんなよ……マトみたいだぞ」


「ガダルくしゃくしゃじゃん! ボク……あんな顔してるんだ……」


 ガダルが俯いたまま、くしゃくしゃになってしまった。

 首輪を無理やり抜けようとする、芝犬を彷彿とさせる……。


「豪華な事はいい事ですぜ!

 黄金が多い装備ってのは高く取引されますからなあ、ガダルさん。

 色々ありやしたが、皆さんお疲れさんでしたぜ!

 あっしは凄く楽しかったですぜ!」


「うん、ボクもとっても楽しかった! ピートもみんなも、改めてありがとね!」


「きゃああん〜」


「キャアもお疲れ様! あっ、ほら、みかんあるよ!」


「きゃあん」


「あっ、丸ごと……あっ! キャア〜! めちゃくちゃ汁が飛んでる〜! うわーっ」


「どうしてお前さん達は一瞬で大騒ぎになるんだか……」


「我も混じって良いだろうか、寂しかったと言うわけでは無いのだが」


 ドラゴンが伏せたまま徐々に近づいてくる。

 破壊しない配慮なのだろうが、おもちゃみたいで可愛い動きだ。


「おうマガロ! やっと落ち着いて話せるな……全員、紹介し合っておこうぜ」


 皆が名前と出来ること、自称している職業を語り。

 マガロが自分の話を始めた。


「ならば我も改めて名乗ろう。

 我は虹の竜が1柱、赤冠のマガロ。

 赤き願いと可能性を司る、イルイレシアの守人だ」


「ん? イルイレシアって王国じゃ無いの? 仲悪いみたいだったけど……」


「ああ。

 やつらが世界を支配し我が国である、と宣言した時にイルイレシア王国と名乗った。

 ゆえ……名すら奪われた事になる」


「うわ、顔怖! その顔ヤバいよマガロ」


「待て待て待て! その顔はやべえぞ、マガロさんよ! 

 国でも滅ぼしそうな悪人面だぞ!」


「!? 汝に言われたく無いぞ、アード!」


「はいはい、お前ら2人とも顔怖いから気をつけろ、で引き分けな。

 遺跡は残ってるけど、結局何年続いたとかはよく分からねぇ事になってるんだ、そのイルイレシア王国。

 マガロには敵だろうけど、何か知ってんのかよ」


「我は王国が生まれすぐ、あそこに封じられたので詳しい事は分からぬ。

 王国は我ら虹の竜を捉えて力を引き出せば良い!と虚言を吐き兵を差し向けたのだ。

 繰り返すが、イルイレシアは願いと可能性を具現化させる力のある土地の名前だ。

 力の根源は我も知らぬ」


「……おいマガロ? お前なんか世界の偉い竜みたいな顔してるが、もしかして……」


「何も知らぬと言っている。

 はるか昔より、赤色の願いを見張り叶え、回収して循環させる……。

 理由は分からんが、それが役割だと我の中にあったのだ」


「……キヒィ……これは……。

 所謂、今は失われている神への信仰に関係するもの。

 神のような存在の使わせた者がマガロさん達である、と言う可能性が出てきましたねェ」


「んなら、遺跡を回ったら、仲間とか情報とかもあるんじゃねえか?

 マガロの事も調べながら、宝探し! どうだ、マト?」


「うん、すごく行きたい! これからも、みんなと宝探ししたい。

 良いかな……?」


「おうよ! だが、学校もやらねえとチビ達も育たねえな……。

 次は建物や学校の準備、そんな事をしつつ遺跡の情報でも探そうぜ」


「分かった!

 マガロさんの暮らしやすい森の開拓と、マーさんの住む場所もちゃんとしてあげてね」


「マトさん! 良く言ってくださいましたァ……!」


「おうおう、分かったぜ。

 んじゃま、もう一度……これからに乾杯させてくれ!」


『おうよ! 乾杯!!!』


 盛大に声が響く。

 後は朝までの大騒ぎだった。

 街全体は明かりで煌めき、路地にすら人拐いが現れることもなさそうなほど。


 大宴会の途中、疲れてウトウトしているボクをクゥが抱えて部屋へと運んでくれた。


「ずいぶん暖かくなってんな、マト。おこちゃまはそろそろ先に寝とけよな?」


「眠くないです」


「眠いの頑張ってる顔もくしゃくしゃだし、おじさんも出てるぞ……」


「えー」


「えーじゃないんだよ、全く。ほれ、明日洗うから今日は寝ちゃえな?」


「クゥ行っちゃうの?」


「まだ外騒いでるしな、じーさんもようやく来たみたいだから挨拶に行かねえと」


「んー」


「あー! 暴れんな! なんだそのぷーーッて鼻息!

 バタバタするんじゃねえ! せっかくベッドまで持ってきたんだぞ!」


「えー」


「分かった! 分かったから足をダンダンするな!」


「むにゅ……」


「おい、ちょっと待て! 寝たのか!? マト、こんなにジタバタしながら寝たのか?

 ……ったくしょうがねぇなぁ。

 ベッドに置いといても心配だしな……連れてくか……」


「もうちょっと、がんばる……」


「寝言か? ……そうだな、もうちょっと頑張るか!」


 頭をわしゃわしゃされたのは、朧気な記憶だ。

 この後の事は、夢だか現実だかは良くわからない。


 朝、庭でマガロに寄りかかって眠っているクゥに抱かれていた事に気づくまで。

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