4-19「かっぱらえる!」
「止まらぬなら、叩き壊すまで……!
足場、感謝するぞ!
しかし汝ら、何故戻った……!」
「勘違いすんな!
お前さんを助けに来た訳じゃねえ、そこの盗賊のお迎えだよ」
「ですぜ、マガロさん。
デカいお宝があったら、持ち帰れねえ。
マトさんがまたシワシワになっちまいますからな」
「キーヒッヒ……どちらかと言うと、そのデカいお宝がマガロさんなのですがねェ!
「きゃあ~っ!」
「待たせたな、マト殿! 褒美など要らぬが、足裏の香りで手を打とう!」
ボクを追う腕へ、ガダルが両手剣で飛びかかる。
一撃を受けた腕は見事に真っ二つ、地面に落ちた……が。
「それ、倒してもバラけて合体するんだ!」
「……くッ……面倒な相手だ……! ならば、何度でも叩き潰すのみだ!」
叩き付けた剣を担ぎ直し、横切りへ。
そのまま回転し、もう一撃。
更に袈裟斬り……切り上げと繋ぐ。
甲冑の腕は連結も再構成も出来ないまま、粉々に砕かれ続けている。
「悪ぃな、マトの事助かったぜ、ガダル!
だが壊しすぎんなよ、価値が落ちるからな!」
キャアの背からクゥが飛び降りながら叫ぶ。
「クゥ殿……! 確かにパーツの欠落は骨董としての価値が落ちる!」
ガダルが連撃を止めれば、腕は再び形を取り戻し、浮かぶ本体へと飛んで行く。
「で、この赤い石はマガロ曰くガダルん家の何かっぽいぞ! ほれ!」
「そういった物を投げるのをやめるのだ! もう少し丁寧に……!
む……!?」
ガダルが受け取った瞬間、結晶は赤い光に変わり両手剣に吸い込まれた。
両手剣は宝石で飾られた、真っ赤な刃を持つ黄金の剣へと姿を変える。
「なんか、めちゃくちゃ派手になったね」
「クッ……微妙に趣味が悪い!」
「ギラついてて品がねえな……」
「剣の気配が変わったぞ、シハの狼! それこそリーシオンの牙だ!」
ガダルがシワシワ手前の微妙な顔で剣を見つめている。
ゲームの最終進化装備そのものだけど、好んで装備している訳でなかったパターンもあるんだなあ……。
「さあて! 仕事終わらせて、帰って晩酌すんぞ!」
『おうよ!』
先陣を切るのはキャア。
マヌダールを雑に下ろし、再び舞い上がる。
「きゃああん!」
今までで見た事もない速度。
誰かを背に乗せたり、遊んでいる時とは比べ物にならない。
顔はインコだが、その姿は正しくグリフォン。
「きゃあん!」
足以外のパーツが再構築された黒い甲冑へと飛び掛かったグリフォンは、前足の爪を振り下ろす。
狙うのは頭。
続け様に逆の前足。
そのままクチバシを叩き込み、大きく羽ばたいて後退。
再び突撃して前足での斬撃を繰り返す。
「キャア強くない……?」
「あんなに動けると思ってなかったぜ……」
ドラゴンほどもある黒甲冑に張り付き、その頭部を執拗に攻撃し続けるグリフォン。
甲冑は射出した腕で撃墜を狙うも、空の肉食獣を捉えることはできない。
「やるではないか、不気味な声のグリフォン!
ならば我も本気で行かせてもらうぞ!
『豪炎竜尾』!」
マガロが大きく跳び上がり、巨大な尾を振り抜く。
その軌跡に連続して爆発が起こり、炎の半月が生まれる。
一撃は黒甲冑の胴体を正確に捉え吹き飛ばし、壁へと叩きつける。
「走れるならば、話は違うぞ!」
二足歩行の恐竜が魔法で構築された足場の上を駆ける。
走りながら、大きく息を吸い込み咆哮。
放たれた衝撃波が壁にめり込んだ敵へ追撃として跳ぶ。
「――『竜脚蹂躙!!』
尾と衝撃波の二重攻撃で動けない甲冑目掛けて、炎を纏った恐竜の蹴りが隕石のように突き刺さる。
激しい爆発が起こり、壁も敵も粉々に吹き飛んだ。
「……おぃ、クゥさんよ。アレはよぉ……」
「おっさん、アレ、防げるか……?」
「無理だな」
「ヒィィ……魔法で防ぐなら転移で逃げるほうが無難ですよォ」
「あっしも止められる気がしねえですぜ」
「クッ……! 私の祖先はアレを食い止めたと言うのか!」
ガダル、地下の扉に書いてあった絵だと押し負けてたように見えたよ……。
「きゃあああん!」
爆風から飛び退いたマガロと交代するように、キャアが土煙へと飛び込んでいく。
視界が晴れれば、浮き上がり再構築を行おうとする頭へ再び張り付いて攻撃し続ける姿が見える。
「キャアめちゃめちゃ強いんじゃん……」
「おう、そうだな……。今、宝の反応はどうだ? 何か変わったりしてるか?」
「今までと変わらないよ、甲冑のパーツは全部光ってる……!
赤い宝石を示してた光はガダルの剣に纏わりついてる。
だから……今の奪っていない宝は甲冑だけだよ!」
「で、その甲冑が止まらないと――。
扉は目立つ位置にわざとらしく着けられた宝石を外せば開いた」
「さっきより甲冑が紅く光ってるのも気になる!」
「マガロがもし1人で此処まで登ってきたとするなら扉を破壊するはず。
赤い宝石も間違いなく砕く。
あんな場所に鍵をつけたら、扉が開いて逃げちまうだろ」
「逃げても良いってこと?」
「あの甲冑がそこから出来ること――マガロを封じるか倒す手段……」
「自爆して生き埋め、とか?」
クゥの目つきが鋭くなった。
「可能性はあるな……ってことは、時間制限ありのお宝って事か!
自爆するって言うなら、その前に止めねえと残骸も残らねえぞ!」
「キヒィ……それは厄介ですよォ。
恐らく古代イルイレシアの魔法技術と、異界の技術で作られたガーディアンです。
構造を暴くのも難しい、全身を破壊しても再構成して元通り。
その内部に核も無い――いや、本当に無いのですかァ?」
「マーさん、全部のパーツが光っててボクには核がどれだか分からないんだ」
ゴオオン!と轟音が響き渡る。
壁へめり込んだ甲冑へとマガロが再び尾を放っている。
高速で飛び回り攻撃を繰り返すキャアと、一撃が重いマガロで甲冑は手一杯という様子。
「おい、クゥさんよ。
現場を見たわけじゃあねえから怪しいが、お前さんは扉や宝石を壊したのではなく。
宝石を『外したら』開いたって事でいいんだな?」
「おうよ、そしたら扉が崩れて……ジジイが来てくれなきゃ谷底行きだったぜ」
「マガロとかいうドラゴンに、その宝石は『外せる』か?」
「いや……さっきも言ったように、あいつなら門ごとぶっ壊すに違いねえ」
「つまり、本来の開門は外す、じゃなく壊すだ」
「――開門と同時に破壊された宝石のエネルギーをガーディアンが吸収。
大規模を巻き込む自爆でこの場所を土の下へと埋めるつもりだった、ということですかァ!」
「……詳しい話は分からぬ。
だが、私の持つ剣と同じ力を取り込むつもりだった、というのなら。
私の剣も力を取り込めたのだ……!」
「なるほど、ガダル。いいじゃねえか、それなら……その力を」
『かっぱらえる!』
ボクとクゥの声が重なる。
「承知した――!」
ガダルが両手剣を構え走り出そうとした時。
「みなさん、悠長すぎますぜ……!
お忘れじゃあ無いですかい、甲冑の足みてえなやつを!」
自らを引き抜こうと蠢いていた甲冑の足をピートの怪力が押さえつける。
「試し切りにはちょうど良いですぜ! やっちまえ、ガダルさん!」
「――力を奪う――正々堂々たる剣技とは言い難い――!
だが、今は騎士ではない!
そもそも全てを奪いに来たの盗賊なのだからな、私達は!
受けよ『喰らい奪う牙』」
真紅と黄金に彩られた両手剣から、紅いオーラが吹き上がる。
その形はまるで大きく口を開けた狼の頭。
ピートが巻き込まれぬよう飛び退く。
瞬間、閃いた一撃は敵を丸呑みするかの如く包み込んだ。
地面に甲冑の足が転がる。
光は消え……もはや動くことはない。
「最高だぜ、ガダル! なら、あっちのデカい本体もやれるな!」
「ああ、クゥ殿――これならやれそうだ!」
「っしゃあ、行くぞ――聞け、お前さん達!
デカい甲冑の動きを止めろ、ガダルの剣に力を奪って仕留める!
その甲冑は自爆狙い、マガロと俺らの生き埋めだ!
宝物を埋めちまったら大損だ――そこの親分にドヤされんぞ!」
アードの叫びが響き渡る。
「面白い! 我もその策、乗ってやろうではないか!」
マガロが噛みつき、壁にめり込んだ甲冑本体を引きずり出して中央へと放り投げる。
「バラバラにしちまうと、ガダルさんの技の回数が足りませんからなぁ!
あっしが……適役ですぜ!」
飛んできた甲冑へとピートが跳ねた。
その腕を掴めば、勢いを利用して足場へと投げ飛ばし叩きつける。
その横をキャアがすり抜けていく。
マヌダールを咥えると、ひょいと背に乗せ上へと飛んだ。
同時に詠唱を開始、甲冑の真上で魔法を放つ。
「欲【司書無き図書館】――。
縷縷たる書庫、棚は魔法。開くは呪文書――攻撃術。
第七階位――その道のりは白銀の雪。
風鳴く大地と輝く氷、在りし姿を永遠に飾る。
眠れ、この白き闇の中で――。
『永久氷晶』」
降り注ぐ氷の楔が甲冑を包む。
みるみるうちにその身体は氷へと包まれ凍結する。
ガタガタと蠢きはするが、その動きは確かに奪った。
「――マト、集中しろ。
核があるかもしれない、ってジジイが言ってただろ。
ガダルの一撃の後――しっかり見ろ」
「分かった……!」
クゥが倒れた甲冑の横へと走る。
無論、正面に走り込むのはガダルだ。




