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5-38「うん、ボクもみんなも居るし!」

「じーさん……!

 そうだな! 幸運を分けるなら今だ!

 街中のみんなにばら撒ける……!

 だけどよ、オレの悪運は進化してて……皆も巻き込むかもしれねえぞ?」


「進化だァ……?

 ははん、なるほどなぁ。

 テメェら2人の合わせ技か!

 クゥの悪運と、マト、お前のよく分からねえ『呪われた』宝物っていう(ギヴン)な訳だ。

 良いじゃねえか、幸運も悪運も。退屈しねえって事だろうがよ。

 ったく、弟子が気ぃ遣ってんじゃねよ」


 町長、"霞の腕"オルドが豪快に笑いながら、クゥの脇腹を肘で小突く。


「そうだぞ、クゥ!

 幸運分けてくれんなら、悪運もねえと盛り上がんねえだろ!

 気にするなんて小さく纏まっちまってよ、やりたいようにやれ! この新米が!」


 泥酔して顔を真っ赤に染めた上機嫌の町民も声を上げている。

 そうだぞー! なんて声もどんどん重なり、クゥコールが始まってしまった。


「クゥ、めっちゃ盛り上がってるし、やろ!」


「……こんだけの量で使った事はねえからなあ……ちぃと心配してただけだ。

 だけどよ、心配なんて後からでいいな!」


「うん、ボクもみんなも居るし!」


 アードとピートが親指を立てて笑っている。

 町人達と肩を組んで大盛り上がりしながら、仕切りにクゥを煽っているのが2人らしくてクスっとしてしまう。


 マヌさんは……既にキャアの背に居る。何かあったら空へと上がる準備だろう。

 酔った様子は無い。お酒、このメンバーで一番強そうだ。


 そしてガダル。机に伏してウトウトしている。

 不眠気味で寝付けない元領主が、人前で気持ちよく仮眠中。

 ベロがだらん、と口から溢れて涎ズルズル。すぐ起きそうだが守りたい寝顔だ……。


 マガロとタパも腹を出して森に倒れている。

 古代の英雄という肩書きを持つだけの、ただの酔っぱらいドラゴンと石像になってしまった……。


「クゥ、ボクも楽しみにしてる。

 クゥの(デザイア)、この世界に来て初めて見た(デザイア)なんだ。

 だから……とっても好き。

 みんなに幸運を分ける、なんて素敵だし」


 クゥの目を真っ直ぐに覗き込んでから、両手(あんよ)で頬をモチモチと撫で回す。


「マト、くすぐったいからやめろって……!

 しゃあねえなあ、師匠も弟子もご要望ってんならやるしかねえぞ!

 みんなァ! 回収の準備をしておけよ!

 今回のお宝、山分けだァ!!

 いくぜ……(デザイア)幸運の分け前(ロットロットロット)】!!」


 辺り一面に満ちるのは黄金の煌めき。

 凄まじい輝きに、目を細めなければ居られないほど。

 マガロも、黒き甲冑も、マトのポッケの赤い宝石も――クゥとマトの2人が手に入れたお宝が閃光のような光に包まれる。

 街中の魔装の灯りが霞んでしまうほど、アルクバーグは金色に包まれた。


 そして、夜空も黄金へと染まっていく。


 チィン……どこかで金貨が落ちる音がした。

 雨粒の如く、音はそこら中で繰り返し聞こえるようになり。


 ザアア、という激しい音に変わる。

 豪雨というより、ボクの世界でメダルゲームが大当たりしたような。

 まさにジャックポット……視界が金貨の雨で埋まり何も見えない。


 金貨の音に街中の大歓声が混じる。


「すごいよ、クゥ――!」


「……すごい、な……! オレもこんなの始めて見た……!

 街中が金貨で埋まっちまいそうだ……!」


「いてて……いっぱい金貨がぶつかってくる!」


「贅沢な痛みな事で!

 おっしゃあ! これが遺跡2個分の稼ぎだぜ!

 いつも手伝ってくれて、チビたちも見てくれてありがとうな!

 全員、取っといてくれ!!!」


 クゥの叫び声が小さく聞こえるくらい、黄金の雨音と大歓声が響き続けていた。


「……ったく、すげぇ量だな、クゥ。

 こんだけのお宝なら街中困らねえな! 困らねえが……多すぎんだよ!

 この金持って買い物に行くと出所が分からねえヤベェ金になっちまうんだよ!

 前はもっと宝石とか混じってやがったが……これは……ははぁん、なるほどな」


 オルドがニヤついた顔でボクを覗き込んできた。


「呪われたお宝のお裾分け、って事で良いみたいだなぁ、マト!」


「えっ……!? この金貨も呪われちゃった!?」


「ああ、呪われちまってるなァ!

 クゥの(デザイア)が生み出したこの金貨は、ミアレが発行してる世界共通の金貨だ。

 だから、どこでも使えるが……王国から調べられれば偽造品よ!

 しかも、だ」


 オルドが金貨を一枚拾って咥える。

 歯で齧りながら、頷く。

 一瞬口元で光が見えた気がする。なんらかの技、だろうか?


「王国の金貨より純度が良さそうだぜ?

 つまり、完璧な金貨……これを金にしても取引できる。

 だがな……どこで取れた? どこで手に入れたんだ……?

 その問いに返す言葉がねえ。

 出所不明の呪いを祓わないと、この量まとめては使えねえって事だ。

 サイコーに『盗賊の金貨』ってとこだな、ガハハ」


「じゃあ、シハの遺跡や二ラルゲの遺跡で見つけたって――」


「マト、それはダメだぜ。

 どっちも訳アリの場所だ。静かにしておいてやりてえし……。

 シハのお宝があそこで腹を上に向けて寝てる竜。

 ニラルゲのお宝があそこでうつ伏せに倒れてる石像。

 どっちの遺跡もやべえ伝説が隠れてる……表には出せねえだろ?」


「あっ……そっか……」


「クゥ、マト、お前ら2人が悩むコトじゃねえ。

 この金貨は実際に取引で使える物だ。街から離れ、物を買ってくるには問題ねえ。

 それに"幸運"だぜ。金だけが"幸運"じゃねえ。

 食べ物が増えたり、何故か傷が言えたり。幸せは街に満ちてるはずだ。

 よくやったな――!」


 ぽん、とクゥとボクの頭にオルドが手を乗せてきた。

 クゥを横目で見ると、照れくさそうな笑顔。

 やっぱり、この町長で親分がクゥの父親代わりなんだろうな、と思う。

 その親分にボクも撫でて貰った。


 なんだか……凄く嬉しい。


「いやぁ、すげぇコトやってくれたな、クゥさんよォ……!

 たまらねえ、金貨風呂に出来るぜ! なんて笑ってやりてえが……。

 オルドさんが言ってるように、纏めて使える量じゃなくなっちまったな。

 安心しろ、俺がやりくりは考えてやる。町人達の分もなァ!」


 アードが指でヒゲを弾きながら笑う。

 その言葉に町人達も腕を掲げる。


「こいつは忙しくなりそうですぜ、大将……!

 世界中から仕入れをやらなきゃいけねェ」


「ああ、この金で買った商品を売って、金に変えて……俺らの仕事は山盛りだな!」


「ならば、この私の出番ですねェ!

 転移の魔法など、使い切ってしまってから旅路を考えれば良いのですよォ!

 商売の送迎をしつつ、私が遺跡の情報を集める。

 宝探しにも役立ちますしィ!」


「助かるぜ、マヌさんよ。それなら、街を長く離れず世界も回れる。

 いい商品を仕入れられるぜ!」


「世界を回る……か。私は散り散りになったシハの民を集めたい。

 手の空いた時で良い、探してもらえると助かる」


「ああ、もちろんだぜガダルさんよ。

 一緒に来い、用心棒は居ねえと商人ってのは危ねえんでな。

 だが、ガダルさんが街に居ねえと守りが怪しいか?

 なんつったってよ……伝説にある黄金郷が眼の前にあるんだからなァ」


「そうですぜ、あっしも大将のお手伝いがありやすから、守りには回れませんぜ」


「何を言っておる! 我を~! 我を忘れている~!

 我が何とかする! タパも居るから大丈夫だ!

 黄金郷か~、我の鮮やかさに負けそうだが良い響きだぞ~」


「完全に出来上がった酔っぱらいじゃねえか!

 クソデカい図体でジタバタ暴れんじゃねえ!

 また壁壊すつもりか、マガロさんよ!

 ま、まぁ、そう言ってくれているなら、あの2人に任せるとするか……ん?」


「ぎゅい」


「ああ、マトのアリさんか!

 お前さんもシハ遺跡のガーディアンの鎧を持つ戦士だしな。

 なら、任せられる……大丈夫そうだな……」


「おいおい、アードよォ。 儂らの事も忘れちゃあ居ないか?

 盗賊が黄金郷に住んでるっちゅーのは、ガキが大好きなエインリットのお伽噺そのものだ。

 盗った物を盗らせないのは盗賊の嗜みだからな、守りは任せておきやがれ」


「……ちげえねぇ、オルドさんの言うとおりだ。

 そうだな、こうなっちまったら……拠点はアルクバーグだ。

 ここに……根を降ろさせて貰っても良いかい?」


「もう降ろしてんだろうがよ! ウチのクゥとマト、宜しく頼むぞ。

 てめぇらも偶には頭下げてやれ、ほれ!」


「……んだよ、じーさん……。

 お、おう、アードのおっさんよ! いつも悪ィな、これからも宜しく頼むぜ!」


「う、うん! アードのおっさん、いつもありがとね!

 頼りにしてる! 商売も教えてね!」


「お、おうよ……慣れねえからやめやがれ」


 ヒゲを指でくるくるしながら、目を伏せるアード。

 どうにもこのメンバーはすぐ照れる。


 そんなところも大好きなのだ。


「これからも、宝探し手伝って欲し……」


 そうボクが口を開いた時だった。

 人混みの中を駆け抜けてきた、ボロボロの冒険者風の男が一人。


「どうか助けてくれ……!! ギルドは無い、そういうのは町長だって言われたんだ!!

 オレの仲間が、遺跡を見つけて中に入って……ガーディアンに出会っちまった。

 助けを呼びに来たんだ、頼む!

 光が見えて、此処が街だって分かったから……」


「ったく、どこのよそ者だァ?

 頼む時にゃ名乗る……それに、面倒ごとの持ち込みはよォ、迷惑料が必要だなァ?」


 オルドが親分の顔で男の前に立つ。

皆様のおかげで毎日更新を続けられ、ついに100話目になりました!

読んで頂けて本当に嬉しいです!

これからもどうか、ゆるゆるとしたブロマンスダンジョンアタック、お付き合い頂けたら幸いです!

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