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プロローグ

「美味しいね。ありがとう」


 不意に聞こえた婚約者の優しい声音に、石畳の小路を歩いていたセシリアの足が止まる。


「本当!? カイン様が喜んでくれてアリー嬉しい! この茶葉って、なかなか手に入らないんですけど、カイン様のために頑張っちゃいました!」


 セシリアが視線を向けた先にいたのは婚約者のカインと義妹のアリーで、カインの言葉に大仰に喜んだアリーの鈴を転がすような声が中庭に響いた。


「そうだ! 今度は手作りお菓子を用意しておきますね!」

「いや、アリーにそこまでしてもらうのは気が引けるから遠慮しておこう」

「もう! 遠慮なんて水臭いわ! 私がカイン様に貰ってほしいだけなんだから!」

「では、今日のお茶のお礼に次回は私がお菓子を持参して来るとしよう。きっと気に入ってもらえると思うんだ」


 群青の瞳を細めて笑う自分の婚約者に義妹の頬が赤く染まるが、対照的にその様子を見たセシリアの表情は色をなくしていった。


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