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目が覚める。
遂に今日が出発日だ。準備は完璧だ。あとは出発するだけなんだが......。最後に輝夜成分を取っておくか。これからかなりの間会えなくなるからしっかりと目に焼き付けておこう。
「あ、お兄ちゃんおはよう。今日は旅行の日だね。」
輝夜はこの世の終わりのような顔をしながら暗い声で話した。なんか凄く悪いことしてる気分......。
「な、なんかごめんな。」
「うん。いいよ。」
声に覇気がない。ううっ、マジで俺まで悲しくなってくる!!
ギュッ
「!?」
いきなり輝夜が抱きついてきた。
「にゃにゃにゃ、にゃにをしゅるぅ!?」
ビックリして物凄い勢いでかんだ。うっ。わっ、笑うな!!お前だって好きな子にこんなことされたらこうなるだろ!!
「だって、お兄ちゃん居なくなっちゃうからお兄ちゃん成分をちゃんと吸収しておかなきゃ......。」
拗ねたような声で輝夜は言った。やっぱり俺たちは家族なんだな。思考が同じだもん。
「俺も、おんなじこと考えてたよ。輝夜成分を取っておかなきゃな~。」
そうして思いっきり抱きついた。
ギュゥー
「「にゅぅ~~~~~。」」
ー数分後ー
「「はぁ、はぁ。」」
途中から完全に格闘技(意味深ではない)だったな。これで本当に準備万端だ。
「なんかごめんね、ちょっと拗ねてた。」
「いや、悪いのは俺なんだ。いきなり旅行に行きたいだなんて。」
「うん。そうだね。だから行くのは止めよう!!」
「却下だ。」
何を心配しているのか、そんなに心配することはない。何たって俺は勇者だ。使命を遂げるまでなくならない大丈夫だ。
そんな他愛もない話をして、俺は十分に輝夜成分を取れた。
さぁ、出発だ。俺はリュックサックを背負い家を出た。
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「はぁぁぁぁ。」
光太を見送った輝夜は深いため息をついた。
「お兄ちゃん大丈夫かなぁ?」
輝夜は光太のことが大好きだ。どのくらいかというと、光太の為なら喜んで命を差し出せるくらいだ。
普通の家族ならほんの少しの間旅行に行くくらいそこまで気にしないだろう。しかし、輝夜は違う。彼女には光太が全てなのだ。
一人の少女は光太の無事を祈る。
スキルの効果が発動される。このスキルは使ったことはないが、感覚で使えるようになっていた。内容は、「勇者の無事を祈ると、勇者の運が微量上がるかもしれない」というかなり曖昧なものだ。
それでも祈らずにはいられない。少しでも安全になるなら少しでも強くなるなら。その少しの差が何か変えるかも知れない。
彼女は確信している、光太は大丈夫だ。何故なら。
お兄ちゃんは勇者なんだから
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俺は今絶賛もうダッシュ中である。
何故なら......。
「ぁああめちゃぁぁんああげぇるぅよぉぉぉぉ!!!!」
婆さんが追っかけて来てるからだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
やっべぇ!!この婆さんただ者じゃねぇ!!
だって今の俺は成人男性の走るスピードを遥かに越えている。なのにこの婆さん、追い付いていやがる!!
おかしい!!何なんだよこの婆さん!!
咄嗟に魂の色を見た。うん!!真っ白!!
これなら多分世界に害はないだろうしもうすぐ老いで死ぬだろう。だから俺は殺さなくていい!!(確信)
ースキル 逃走を獲得ー
よっしゃぁ!!逃げるぞ!!
この時輝夜が必死に祈ってくれていたことを光太は知らない。
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俺はあの婆さんのこともありもっと鍛練が必要だと思い知った。多分位階を上げればすぐに早くなれるだろうが、それだけでは足りない。位階は次第に上がりにくくなるし、それだけでは安全性が確保されない。ただ力だけがあるよりも力プラス技術も必要だ。技術は力に乗数計算されると思っていい。スキルや鍛練ではそこを補える。
なので今から夜になるまで走り込みをしようと思う。決して婆さんに負けたからそれが悔しくてもっと早くなろうって訳じゃない。
その走り込みは夜までやろうと思っていたが、延長してしまい、翌日の夕方まで続いた。
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小野光太
銅級1等級
身体力 20
設備力 2
魔法力 0
気法力 0
神聖力 0
スキル
忘れないE 勇者E 記憶力E 身体力C 投擲D 剣術D 危機察知D 痛覚軽減D エネルギー消費減少C 貯水F 格闘術E
逃走F
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ー逃走ー
F.あなたの逃走時のスピードを5%上げます。
E.???