12-1 王都マリウル
グリム達は迎えに来たアルクオンの船で、南にある島の一つに上陸した。 トキオとベルリアンの間の海は、海賊が頻発していた。 その島は海賊達の拠点の一つだったのだ。 その島でグリム達が二日ほど傷を癒やしていると、三日目に三頭の青いドラゴンのような飛竜が現れた。 その背には人が乗っていた。 三人の男達はリオンのところへいくと挨拶をした。
「お久しぶりです。 ラウラ殿」 男の一人が言った。
「ご苦労様です。 ゴース殿。 遠路申し訳ありません」 とリオン。
「なんの、女王のご命令とあらば、どこまででもまいります」男は笑った。
「こちらがユーゴ殿、そしてレジーナ殿です」 リオンが男に紹介した。
「私はゴースです。 女王の命で参りました。 それでは参りましょう」 グリムとカエンはそれぞれ男達の後ろに飛竜の背中に乗った。 三頭の飛竜はそれから三日間かけて海とビッグリーフを北東に飛び、王都マリウルに到着した。
グリム達は王都に着くと、すぐに王宮へ案内された。 王宮までは六本足の大きな鹿の様な動物が引く馬車(馬ではないので馬車とは言わないのだろう)に乗せられた。 グリムは前から不思議に思っていた。 この星の二つの大陸、ビッグリーフとスモールリーフはその形から、太古には一つの大陸だったと思われる。 それが大きな地殻変動によって二つに分断されたのだろう。 ところがこの二つの大陸ではその生態系は大きく異なっていた。 ビッグリーフは太古の原生林が残っており、そこに住む生物は多種多様である。 魔獣も多く住み、その多くがアクロの力を使えた。 それに対してスモールリーフには、ほとんど魔獣は住んでいなかった。 動物や植物もこの星のオリジナルは少なく、人類がこの星に到達したときに持ち込んだ、動植物が多くを占めた。 グリムは、それは王国が食用のためにも積極的に繁殖させたせいもあるが、魔獣が少ないのはレクチウムがほとんど産出されないことと関係していると思っていた。
王都の街は賑わっていた。 円筒形の石の壁に白い漆喰、木を利用した円錐形の屋根、 それが大小調和を保ちながら並んでいた。 道行く人々は活気に満ち、店の軒先には新鮮な野菜、果物、肉が山の様に積まれていた。
(カーセリアルの嘘つきめ、この人々のどこが亜人だ) グリムは街の光景を眺めながら思った。 カエンは初めて見る異国の景色に驚いていた。
30分ほど街中を走ると、王宮に着いた。 王宮はカラフルな円錐状の建物が複雑に絡みついたような形をしていた。 グリム達は王宮の一室に通された。 そこは応接の間のようだった。 広くはないがふかふかの絨毯に壁にはきれいな模様の織物が掛けられていた。
(これはどういうことだ? 選択肢がないから取りあえず、成り行きにまかせていたが、我々は捕虜ではないのか?)
やがて一人の頭のはげ上がった、初老の男が入って来た。 リオンは立ち上がると深々と頭を下げて挨拶した。
「ラウラか良く戻った。 そこにいるのが例の者か?」
「そうです、サウゲラ様」
「うむ・・・」男はグリムを見つめた。
「お主はアクロ使いじゃな。 しかも相当な力が秘められている」
「そんなことが分かるのですか?」
「まあな。 だがどうやらまだその力を使いこなせていないのではないか?」
「自分では良く分かりません」
「まあ良い。 女王がお会いになられる。 一緒にまいれ」 男は歩き出した。
「あのじいさん、何者だ?」 グリムが男についていきながら、リオンに小声で聞いた。
「あの方はサウゲラ様だ。 この国の宰相にあたる役職の方だ。 失礼なことは言わない方が良いですよ」
「分かった」