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11-13 船からの脱出

 グリムは男を訝しんだ。

「あんたは何者だ? なぜ助けた?」

「それは後回しです。 あなた方の敵ではありません。 とにかく今はここを逃げなくてはいけません。 じきに船員が異変に気付いてやって来ます。 あなた方は尋問を受けるでしょう。 そして港に着いたら警察に引き渡されるでしょう」 リオンは救命ボートのカバーを外しながら言った。

「逃げると言ってもどうやって・・・・」とカエンが自分の怪我も気にせず、シャツの袖を破ると、グリムの傷口の止血をしながら聞いた。

「これでこの船を離れます」 リオンがボートの船体を叩いた。

「外海でこんなボートじゃ遭難するぞ」

「大丈夫です。 近くに仲間の船がいます」

「セルタス派か? いや、アルクオンだな」 グリムがそう言うと、リオンは黙って笑った。


 リオンがボートを海面に下ろすと、グリムとカエンがボートに乗り移った。 二人ともリオンを全面的に信用したわけでは無かったが、選択肢がないと判断したからだった。 三人を乗せたボートは次第に客船から離れていった。


 太陽が東から昇ってくると、カエンはグリムの傷を確認した。 腕の傷は銃弾が貫通しており、傷口の出血も止まっていた。 カエンはボートに備えられていた救急箱から消毒液を取り出すと、消毒して包帯を巻いた。 太ももの傷の方も筋肉が銃弾を押し出していた。 カエンはピンセットで銃弾を取り除くと、消毒して包帯を巻いた。

「すごい回復力だな」リオンがそれを見て言った。

「カエンの傷も見せてみろ」 グリムが確認すると、額の脇を少し切っていただけだった。 血も固まってかさぶたになっていた。

「良かった、皮膚を少し切っただけだ」 グリムが包帯を巻いてやった。


「ところで近くに仲間の船がいるとのことだったが・・・」 辺りには小舟も見えなかった。

「ええ、もうすぐです」 リオンが南の海を見ながら言った。

「どうやって見つけるんだ?」

「アクロの力です」

「何? そろそろ話してくれてもいいんじゃ無いか? 少なくともあんたは、俺達が何者かは知っているのだろう?」

「そうですね、存じています。 私はアルクオン王国の諜報部員です」

「やはりそうか。 何を企んでいる」

「そう構えないでください。 私はあなた方に協力したいと考えているのですよ」

 グリムは訝しんだ。

「どう協力するというのだ?」

「それはおいおい、まずはアルクオンまで行きましょう。 丁度船が来たようです」 南の水平線に白い帆を張った船が見えた。

「それはダメだ。 出来ればスモールリーフに戻して欲しい。 俺はセシールを救出しなければならない」

「どこにいるのかも分からず、何の準備も無しにですか。 彼女は大丈夫です」

「なぜそう言える!」

「冷静におなりなさい。 あなたらしくありませんよ。 いいですか、彼女が連れ去られたのは、彼女に利用価値があるからです」

「・・・・」

「彼女の利用価値の一つ目は、あなたをおびき寄せるための餌です。 ですからあなたが来るまでは生かしておくはずです。 二つ目は、彼女はセルタス派の最後の希望です。 切り札を押さえることによって、セルタス派の動きを封じることが出来ます」

(こいつ、どこまで知っているんだ・・・)

「ですので、当面彼女は安全です。 手荒なマネもしないでしょう」

「しかし、一日も早く救ってやらねば・・・」

「急がば回れですよ。 とにかくあなたを一度連れて来るように命を受けておりますので、一緒に来てもらいます」

「誰の命令だ?」

「女王です」


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