11-6 激闘(2)
グリムはゴリラ男と対峙した。 ゴリラ男は右腕をぐるぐる回した。 そしてグリムに向って突進してきた。 グリムはゴリラ男に向って拳銃を2発撃った。 銃弾は胸に当ったが、ゴリラ男は止まらなかった。 グリムは跳び上がり、ゴリラ男の頭上を越えて反対側に着地した。 ゴリラ男の拳は勢い余って地面を叩きつけた。 その地面は爆発したように土を飛び散らし、大きな穴があいた。 ゴリラ男は振り向き言った。
「拳銃など、俺には効かないぞ」 男は笑った。
(チッ、どうするか・・・。 他の奴らもすぐにやって来る、時間をかけていられないぞ)
再びゴリラ男は突進してくると、ゴリラ男は右腕を振り上げてグリムに殴りかかった。 グリムはその拳をかわしながら男の懐に飛び込むと、勢いを生かして男を投げ飛ばした。 男は地面に背中を強烈に打ち付けたが、何事も無かったかのように素早く起きて膝立ちになった。 ゴリラ男がグリムの方に向いた時には、既にそこにグリムはいなかった。 ゴリラ男が驚いた時、不意に髪の毛を鷲づかみにされた。 グリムは男の背後に立っていて、銃口を男の後頭部に当てると、素早く2発撃った。 延髄を撃たれた男は絶命し、そのまま前に突っ伏した。
(これで二人・・・)
グリムは素早くその場を離れた。 敵の位置を確認すると、両脇から二人が近づいていた。
(クソッ、振り切れないか・・) グリムは近くの木に登った。
突然グリムは殺気を感じた。 隣の木から黒い塊が襲って来たのだ。
(いつの間に・・・) グリムはかろうじて直撃はかわしたが、左腕を切り裂かれた。 敵は女だった。 その女はヒョウのようにしなやかに木の枝を移動すると、軽やかに木を跳び移った。 女は再びグリムに襲いかかった。 グリムは枝に座ったまま後方に倒れ込んで女の攻撃をかわすと、そのまま地面に降り立った。 だがそこにはもう一人の男が待ち構えていた。
「逃がさねえよ」 ずんぐりとした男はそう言うと、戦闘服の上半身を脱ぎだした。 そして男の目も赤く光り出した。
(こいつも何か能力があるのか? 何をやるつもりだ)
男の体には幾つものコブのようなものがあった。 そしてそのコブが少しずつ大きくなっていった。
(何だ? 分からないがヤバイ気がするぞ)
コブ男はグリムに近づくと、自分の胸のコブを絞った。 するとコブから緑の臭い液体が噴出した。 グリムはその液体をかわした。 液体はグリムの後ろにあった木にかかった。 “シュウー”という音とともに液体が付着したところから煙のようなものが上がった。 そしてその部分が融けてボロボロになり、黒く変色していた。
(酸か? あの液体はヤバイ・・・) と思ったところへ、木の上から今度は女が飛び降りながら攻撃してきた。 グリムは斜め前方に転がりながらかわした。 女の爪は鋭いナイフのように木の幹を切り裂き、三本の傷跡を残した。 女はすかさず四足で立つと、再び襲いかからんと低く構えた。 その姿はまるで獣のようだった。 尻には長い尻尾が揺らめいていた。
一方、駐車場にいたカエンは、運動場の方で銃声が聞こえると、意を決して車のエンジンをかけた。 その音でセシールが目を覚ました。
「どうしたの?」 セシールは目をこすりながら言った。
「悪いおじさん達がきたのよ。 逃げるわよ」
「グリムのおじさんは?」
「おじさんは、悪い人達と戦っているの」
「おじさんは、大丈夫なの?」 そういうと、シックルを抱きしめた。
「おじさんはね、とっても強いの。 とってもね・・・誰にも負けないわ」 カエンは自分に言い聞かせるように言った。 そしてライトを点けずに静かに駐車場を抜け出した。