11-5 激闘(1)
グリムは、男達が発砲する直前に上に飛び上がった。 男達の銃弾は互いに交錯し地面に突き刺さった。 男達には、突然グリムが消えたように見えただろう。
「上だ!」 誰かが叫んだ。 男達は空中のグリムに向けて更に銃撃を加えた。 グリムは空中で体をひねると、銃弾をかわし囲みの外に出た。 更に着地するとすかさず加速して林の中に走り込んだ。
「逃すか! 追うんだ!」 リーダーと思われる男が叫び、他のメンバーが一斉に林に走り込んだ。
その林はかなりの広さがあり、グリムはどんどん奥に入った。 5人の位置は把握していた。
(一人一人を引き離すんだ) グリムは更に加速した。 その速度は常人には出せない速さだった。 しかしその速度について来る者がいた。 グリムは木々を利用し方向を変えまこうとしたが、まけなかった。
(やはりアクロ使いか・・・)
グリムは池の手前で止まった。 追いついた男は、5人の中でも小柄な方の男だった。
「逃がしはしない」 そう言った男の目が赤く光っていた。 そして男の両肩が異様に盛り上がってきた。
(なんだ、こいつは・・・・) グリムが危険を感じると同時に男の両肩から、何かが飛び出して来た。 グリムはとっさに片方をかわしたが、もう一方が軌道を変えてグリムの胴に絡みついた。 それはピンクの柔らかな触手のようなものだった。 その触手はグリムの体をきつく締め付け、もう一方の方は一旦縮んだと思うと再度襲って来た。 それはカメレオンの舌が離れた虫を補食するような動きだった。 グリムはその触手をふりほどこうとしたが、ビクともせず更に締め付けてきた。 更にもう一方がグリムの首に巻き付いた。
(クソッ、逃げられない)
「まだまだ、これからだぞ」 男はそう言うと、触手を通してグリムに電撃を加えた。 グリムはものすごい衝撃に体が痙攣し、意識が飛びそうになった。 グリムはその場に倒れ込んだ。
(ヤバイ、体がしびれて動けない) グリムは指を動かし、握力を回復させようとした。
「ちっ、さすが死神と言われるだけあってしぶといな。 一回では死なないか」男はそう言いながら拳銃を抜いて近づいた。 一度放電すると、充電するのか発電するのかに時間がかかるのだろう。 グリムは拳を握ったり開いたりを続けた。 男が拳銃をグリムに向けると、触手を解いた。 誤って自分で触手を撃つことを避けたかったのだろう。
グリムはその一瞬を見逃さなかった。 素早くベルトから拳銃を抜くと、赤く光る目玉の間に2発撃ち込んだ。 男は一瞬遅く拳銃を撃ったが、撃たれたショックで銃弾は左の肩をかすっただけだった。 男は二、三歩ふらつくと池の柵を越えて池の中に落ちた。 グリムはふらつきながら立ち上がり、他の敵の位置を確認した。 すぐ側まで二人が迫っていた。 グリムは林の奥に戻ると近くの木の上に上った。
グリムのいる木の下を体の大きな男が通った。 男が鼻をぴくぴくさせ辺りを見渡すと、突然グリムの方を見た。
(見つかったか) グリムの体はまだ完全にしびれがとれていなかった。
男が笑うと、男の目が赤く光り出した。 男の体はみるみるうちに体の筋肉が盛り上がり、戦闘服を破いて黒い体毛に覆われたゴリラのようになった。 そのゴリラ男はグリムの上った木にラリアットと食らわすと、“バキバキッ!”という音とともに大木を破壊し倒したのだった。 グリムは木が倒れる途中で、飛び出すと柔らかな草地を選んで転がった。
(なんてバカ力だ)
ゴリラ男は、既に勝ち誇ったようにドラミングをおこなった。