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11-3 ランナウエイ(1)

 朝食が済むと、グリムはセシールと向き合った。 カエンは隣で見守った。

「セシール、良くお聞き。 残念だがお母さんは、悪いおじさん達のせいで亡くなった。 その悪いおじさん達は、こんどはこのおじさんやセシールも襲って来る。 だからおじさんは逃げようと思う。 セシールはおじさんと一緒に来るかい?」 グリムがそう言うと、セシールはまた母親を思い出して泣き出しそうになったが必死にこらえた。

「うん、おじさんと行く。 シックルも一緒?」 セシールは横に寝転んだシックルの腹をなでた。

「ああ、一緒だ」 グリムはセシールの頭をなでた。

「あたしはレジーナ、でも普段はカエンて言っているけど。 よろしくね」

「おばちゃんも一緒?」

「おば、おばちゃん! セシールちゃん、おねーさんだからね」 カエンは笑顔で言ったが、ほほが引きつっていた。 グリムがクスッと笑った。

「今、笑ったでしょ!」 カエンがグリムを睨んだ。


 グリム達はその日の午後には、部屋を出た。 王都から南にあるシドニール目指したのだった。 別にシドニールにあてがあった訳ではなかった。 とにかく王都を離れるのが大事だった。 南に向う幹線道路は渋滞していた。


「検問をやっているな」 数百メートル先に軍の車両が駐まって、兵士が車をチェックしていた。

「あたし達を探しているのかな?」

「そうだろう」

「どうする、迂回する?」

「そうだな・・・」

(奴らが、こちらが裏道を通る事は見越しているはずだ。 どこかでヤマを張って待ち構えているだろう。 だが全てを押さえる事はできないはずだ)


 カエンは右の道に入った。 そして近くにあったショッピングセンターに入った。 そこでカエンは子供服を買ってきた。 青のTシャツにオーバーオール、髪をまとめて赤いキャップに入れると、セシールは男の子に見えた。 数キロ進むとまた検問が見えた。


「俺はここで降りる、このまま進むんだ。 問題無く通れるだろう。 隣町のこのドライブインで落ち合おう」 グリムが端末の地図を見ながら言った。

「分かった」

「おじさん、いっちゃうの?」 セシールがシックルを抱きながら言った。

「少しの間だけだ。 すぐに会える」そう言うと、車を降りた。

 カエンはそのまま車の流れにしたがって進み、検問で止められた。 二人の兵士が車の中をのぞき込み、写真と見比べた。 カエンの情報は無いのだろう特段詰問されることも無く通された。


 3時間後、待ち合わせのドライブインの駐車場にグリムが現れた。

「大丈夫だった?」

「ああ、少し遠回りしたから時間がかかってしまったがな」

「お腹空いていない?」

「ぺこぺこだ」

「じゃあ、食事にしましょう」


 王都、王国軍本部

 国防大臣室でダークブロンドの髪を後ろになでつけた、20代前半の男が電話で話していた。


「エンゲル殿、まさか今回の私の措置に意義を唱えるおつもりでは無いでしょうな」

「いえいえ、そんなつもりはございません。 クラウス様、私はあなたを支持いたします」

「そうですか、ご協力感謝いたします。 それでは後ほどの会議で・・・」 男は電話を切った。 電話の相手は、警察も統括する内務大臣だった。

「ふん、風見鶏め!」

「風見鶏でも何でも、とりあえず逆らわなければ良いでしょう」 ソファーに座った、冷酷な目つきをした男が言った。 男は40代に見えた。

「あんな奴は信用できない。 昨日まではセルタス派だったのだからな」

「いずれあなたが国王になられたら、すげ替えればよろしいでしょう」 男は事もなげにいった。

「まあそうなのだが。 現国王がくたばるまでは、なるべく穏便にしたいからな」

「それも時間の問題なのでしょう?」

「それが、死にそうでなかなか死なないのだ」

「ならばいっそ・・・・」 男は意味深に言った。

「そうしてしまいたいところだが、今ヘタなことをすると、私が暗殺させたなどという噂が立ちかねない。 私のイメージダウンは避けたい」

「そうですか」


「ところで、“レッドアイズ”の方はどうなっている」

「クレアル社の研究所の破壊で、一時遅れは出ましたが、場所を替えて再開しました。 基礎データはほとんど得られていましたし、今度は兵士で実験して優秀な兵士の製造も進んでいます」

「そうか、ならばアレンの方で、ユーゴを見つけ出してくれ。 キールは役に立たないのだ。 自分で直接殺したと言いながら、昨夜セルタスの前に現れている」

「我々もユーゴ捜索を続けていたのですが、こちらも一人やられました。 そしてこの前の研究所の破壊工作もユーゴによるものだと私は見ています」

「何だと! まったく忌々しい奴だ。 アレン必ず見つけ出して始末するのだ」

「承知いたしました」


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