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11-1 セシール

 グリムはどうして断ろうかと考えていた。 セルタスは、そんなグリムの考えを見透かしたように言った。


「国を治めるということは、とても大変なことです。 しかし我々がしっかりお支えいたします」

「いや、それでも無理です。 クラウス王子がいるではありませんか」 グリムがそう言うと、セルタスが顔をしかめた。

「こう言っては不遜ではありますが、あの方は王の器ではございません。 ユリウス王もそれを憂慮されておられます」

(まずいぞ、このままでは押し切られてしまうぞ)

「ぜひ、王国のためにもご決断ください」

(ここは話題を変えて、取りあえず逃げよう。 そう言えば彼の髪の色、目の色、やはりあの子の父親は・・・)

「ところで、あのセシールという子の・・・」とそこまで言った時、突然銃声が聞こえた。


 “ガシャーン”庭に面した大きな窓のガラスが割れて、破片が床に落ちた。 そして銃声が続けざまに響き、庭ではボディガードが誰かと撃ち合っていた。 黒ずくめの男達が、銃を撃ちながら迫っていた。 部屋の外に控えていたボディガード達が入って来ると言った。


「大臣、至急避難します。 こちらへ」 ボディガードは有無を言わさず大臣の体を庇うようにしながら部屋の外へ連れ出した。 グリムはアリア達のことが気になって隣の部屋へ行った。


 アリアはセシールを抱きしめて震えていた。

「アリア、逃げるんだ! ここは危ない」 隣に複数の足音が聞こえた。

(クソッ、武器がない) グリムはテーブルにあった、フォークを手にした。 二人の黒ずくめの男達が、入って来て拳銃を向けた。 グリムはフォークを投げると、前にいた男の右目に突き刺さった。

「グアッ!」 男が目を押さえた。 グリムはその隙を見逃さなかった。 男との間合いを詰めると素早く銃を奪い、そのまま隣でグリムに銃を向けた男の額を撃ち抜いた。 男はその場に崩れ落ちた。 グリムは目を押さえていた男の腕を背中にねじり上げると、体を庭から新たに入って来た男達の方へ向けた。 男達は躊躇せずにそのまま発砲し、男の体に数発の銃弾がめり込んだ。 グリムは男の体越しに発砲し、二人の男を倒した。


 足音が聞こえ店の中の方から、一人の男が現れた。 グリムはすかさず男を撃とうとしたが、弾切れだった。

(チッ、まずい) グリムは素早く床にダイブして、倒れた男の拳銃を拾った。 床に転がりながらグリムは男を撃ったが、男の方も3発撃っていた。 男は胸と腹に銃弾を受けて、その場に倒れた。 グリムが立ち上がると、愕然とした。 男が撃った銃弾の2発がアリアの背中に当っていたのだ。 アリアはセシールを護るように固く抱きしめていた。 青いドレスの背中に二つの赤い丸がどんどん大きくなっていった。


「アリア、しっかりするんだ! 死ぬな!」 グリムはアリアの傷を確認した。

(まずい、肺と内臓に達している。 出血も多いぞ)

「アリア、待っていろ。 すぐに救急車を呼ぶ」

「お母さん、お母さん・・・」 セシールが泣き出した。

 グリムが立ち上がろうとすると、アリアがグリムの袖をつかんだ。

「私は、もうだめ・・。 お願い、・・・この子を・・」

「何を言うんだ・・・」

「お願い・・・あなたにしか・・・頼めない。 この子は・・・・」 そう言うとアリアは息を引き取った。

「アリアーーッ!!!」 グリムはアリアを抱きしめた。 セシールは更に大声で泣いた。

(クソッ、やっと会えたばかりなのに。 俺は何をやっているんだ)


 また足音が近づいて来るのが分かった。 グリムはアリアにそっとキスをすると、静かに床に横たえた。

「セシール、おじさんと行こう」

「イヤーッ! お母さん、お母さん・・・」 セシールはアリアの側を離れようとしなかった。 グリムは拳銃を腰のベルトに差すと、泣きじゃくるセシールを抱え、庭に走り出した。


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