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10-7 セルタス

 キールと会った二日後、アリアから連絡があった。 近いうちに会いたいという話しだった。 グリムは良い機会だと思い、セルタスに会いたいと伝えた。 アリアは驚いたが、伝えることを約束した。 そして翌日、セルタスが会うことを承諾したというのだ。


 グリムは翌々日の夜、指定されたレストランに行った。 そこは王都でも有名な高級レストランだった。 グリムはスーツにサングラスで店に入ると、上品そうなウエイターが近づいて来て話しかけた。


「スレイダー様ですね。 お待ちしておりました。 ご案内いたします」 そう言うとどんどん店の奥に案内された。 そこは庭園の中に設けられた離れで、ライトアップされた庭が良く見える。 中にはボディガードが既に3人おり、ボディチェックを受けた。 グリムは拳銃を持ってきてはいなかった。


 セルタスは、約束の時間が少し過ぎた頃に現れた。 この離れには地下の駐車場から店の中を通らずに来ることができた。 庭にも数人のボディガードが立っていた。 セルタスの後ろにはブルーのドレスを着たアリアと赤いドレスを着た3、4歳くらいの女の子が立っていた。


「初めまして、セルタス・ノワーナです。 何とお呼びすればよろしいかな」 セルタスは50代の端正な顔立ちで物腰は柔らかだったが、目に強い意志が感じられた。

「あっ、今はマイケル、しかし通常はグリムを使っています」

「そうですか、ではグリムとお呼びしましょう。 こちらはご存知ですね?」

「ええ」 グリムは女の子を見た。

「さあ、ご挨拶しなさい、セシール」 アリアは女の子に促した。

「こんばんは」 女の子はニッコリ笑った。

「こんばんは」


 4人は食事をしながら、世間話をした。 料理はグリムにとって初めて食べるようなものばかりだった。 食事がほとんど済み、デザートを残すのみになった時、セルタスがアリアに目配せをした。 アリアは頷いた。

「さあ、あちらでデザートを食べましょうね」 アリアはセシールを連れて隣の部屋にいった。


「さて、本題に入りましょう。 ユーゴ様、私に会いたいと申し出られたと言うことは、おおよその事はお知りになられたということですね」

「いくつかの状況証拠から、一つの推論にたどり着きました。 それが正しいのか確かめに来たのです。 私の父親は国王なのですか?」

「その通りです。 ただし、現国王ではなく前国王、アリオン王です」

「・・・・・」

「すべてお話いたしましょう。 5年前アリオン王が崩御される少し前、私と弟君のユリウス様は病床に呼ばれました。 そこでアリオン王は、王子の時代にあなたのお母様との間に、あなたを設けられたことを告白されました。 そしてブランドン王子が亡くなられた今、あなたを王子と認定し次の王にするように遺言されたのです」

「何だって・・・・」

「しかし、私もユリウス様も驚き、躊躇いたしました。 そしてユリウス様はご自身が王位を継ぐことをご決断されたのです」

「・・・・・」

「しかしユリウス王は、アリオン王の遺言を無視し、ご自身があなたから王位を奪ってしまったことに、次第に後悔するようになっていかれたのです。 そしてご自身が病床にあり、先が無いことを覚って、あなたに王位をお返ししようと考えられておられます」

「そんな・・・・」

「そこで、それに反発されたのが、クラウス王子です。 あなたの存在を知ると、あなたをより苛酷な戦場へ追いやり戦死するように仕向けたのです。 ところがあなたは戦死するどころか、数々の功績をあげ英雄扱いされてしまった。 それで焦ったクラウス王子は、部下に直接殺すように命じたのです」

「それで全てが繋がった」

「あなたを、王子と認定し、次の王位継承者として発表いたします。 よろしいですね」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 私には王様なんて無理だ・・・」

「これはアリオン王の遺志であり、ユリウス王の意志でもあります。 是非お受けいただかねばなりません」

(悪い冗談だろう。 飲み慣れない高級ワインを飲んで、きっと悪酔いしているんだ)

 グリムはめまいがしてきた。


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