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10-5 王家の事情

 グリムを車に乗せ、ライトで傷口を確認した。 二人とも驚いた。 グリムの左右の脇腹や腰に計7発の銃弾が当っていた。 しかしいずれの銃弾も腹部内部にまで到達していなかったのだった。 傷口の出血も既に止まっており、体が銃弾を押しだそうとしているようにも見えた。


「信じられないわ・・・」

「ああ、いくら小口径の銃弾と言っても、通常なら内蔵が破壊されているはずだ。 仮に奇跡的に内蔵に損傷が無かったとしても、出血多量で失血死する可能性が高かった」

「あなたが死神だから? 神様が死ぬことを許さなかったって言うわけ?」

「そんな訳あるか。 これもアクロの力によるものだろう。 銃弾が当る直前に体を防御しようとしたから、銃弾の腹部貫通をくい止めることができたのだろう」

「とにかく、あなたが生きていて良かったわ」 またカエンが泣き出した。

「ああ、君のお陰だ。 ありがとう」


 カエンは穴を元通りに埋めると、家まで車を走らせた。 キールにはグリムが息を吹き返した事は、知られたくなかったからだ。


 翌日、グリムは驚異的な回復を示した。 体が銃弾を押し出し、ピンセットで銃弾を取り除くと、傷口は既に塞がっていた。 体を動かすと痛みはまだ残っていたが、動く事は可能だった。


 カエンは傷口を消毒して、包帯を巻きながら話した。

「私の方は、王家の方を調べたの。 あなたも今の国王ぐらいは知っているよね?」

「たしかユリウス・グラゼオールじゃなかったかな。 会った事は無いけど」

「そう5年前に、前王アリオンが崩御されて弟のユリウスが即位したの」

「あれ、王様なんて雲の上の人だから興味が無かったけれど、たしか前王には王子がいなかったか?」

「ブランドンのことね。 優秀な王子で、前王もすごく期待していたらしいわ。 でも前王が亡くなる1年ほど前に飛行機の事故で亡くなっているのよ。 前王は失意のあまり、それで体調を崩されたと言われたの」

「ああ、そんなこともあったかも知れないな」

「それで、王子がいなくなったので、弟のユリウスが王になったわけね。 それで現国王なのだけれど、現在病気療養中でほとんど政務は行なっていないという話しよ」

「病気は重いのかい?」

「病状は公表されていないけれど、ネットの噂では大分重いらしいわね」

「もし現国王が亡くなったら、次は誰が王になるんだ?」

「普通に考えればクラウス王子ね。 だけどクラウス王子には少し気になる噂があるのよ」

「どんな噂だ?」

「ユリウス王が、クラウス王子に対して次期王になることに難色を示しているというの」

「なぜだ?」

「クラウス王子は気性が激しく好戦的と言われているわ。 王子は国防大臣も務めていて、アルクオンとの戦争を強力に推進している一人よ。 現国王は今までの戦争状態を終息させたいと考えていると言われていて、王子と考え方を対立させているというのよ」

「なるほど、もしクラウス王子を排除したとしたら、王の候補は誰になるのだ?」

「それが、適当な候補がいないらしいわ。 ユリウス王には他に王子がいないし、前王にもいないわ。 他の王家の血筋となると何代もさかのぼった、かなり傍系になってしまうらしいわ」

「王女はいなかったか?」

「一人いたけど、たしか数年前に病気で亡くなっているわね」

「なるほど。 しかしそれと俺にどう関係してくると言うのだ?」

「私の推理が正しければ、大いに関係があるわ」 カエンは包帯を巻き終えると、救急箱をかたづけた。

「そうか、では名探偵の推理を拝聴しようか」 グリムは包帯の上から傷をさすった。

「その前にコーヒーをいれるわ」


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