10-2 再会(2)
「なぜアリアがセルタスの所にいるんだ?」
「私も詳しい理由は分からないの。 あなたが亡くなったと知らされてから、セルタス様の部下達が現れて、半ば強制的にここに連れてこられたの。 今ではお屋敷で働きながら暮らしているわ」
「セルタスは何も説明しないのかい?」
「それが、私が聞いても、『これが君たちのためなのだ』としかおっしゃらないの。 理由を知れば、命の危険が迫るというの」
「意味が分からない。 騙されているんじゃないか?」
「私もそう考えた時もあったわ。 ただ、一度だけセルタス様がこんなことをおっしゃったの。 『これは王国の未来がかかっている』と」
「何だって! ますます訳が分からない。 君は王家と何か関係があるのかい?」
「いいえ、私の家系はごく一般的な市民よ」
「それで、・・・。 その、セルタスとの関係はどうなんだ?」 グリムは聞きにくそうに聞いた。
「えっ、もしかして噂を聞いた? バカね、セルタス様とは何もないわ」
「えっ、でも・・・」
「セルタス様は、笑い飛ばしていたわ。 『かえって好都合だ。 世間にはそう思わせておけ。 その方が危険度がさがる』と」
「本当なのか・・・」
「本当よ、私が愛しているのは、ユーゴだけよ」
「でも、子どもがいると聞いたぞ」
「・・・・・それは、今は言えない。 言えばあの子に危険が及ぶから」
「本当に、意味が分からない・・・。 とにかく捕らわれているとか、虐待を受けているとかでは無いのだな?」
「はい、セルタス様からは良くしていただいているわ。 セルタス様の敵が何者かは分からないけど、その敵から私達を護っていただいているのだと思っているわ」
「わかった。 とにかく何かあったら連絡してくれ」そう言うとグリムは、アリアにメモを渡した。 そして周りを確認してから、グリムは闇に溶け込んでいった。
グリム達の家
グリムは膝の上で、仰向けに寝そべったシックルの腹をなでながら、何となく釈然としなかった。 アリアとの会話からは、何度考えても合理的な理由が見つからなかったからだ。 会話の内容はカエンにも話したが、カエンも明確な答えが見つけられなかった。
「王国の未来って言ったのでしょう? それってもしかしたら、あなたに関係があるんじゃないの?」
「えっ、俺が?」
「だって、あなたのお父さんは、王家の関係者なのでしょう? 彼女がセルタスの戦いに巻き込まれたのは、あなたと付き合っていたからとか・・・」
「俺のせいかも知れないだと・・・・」 グリムの手が止まった。
「ナーゴ」 シックルが「もっとなでろ」とでも言うかのように鳴いた。
「やはり、あなたのお父さんが何者かをつきとめないと、先に進めないのかしら」
「・・・・・・」
(俺の父親か・・・)
「いいわ、お母様が王宮にいた頃に働いていた人を見つけて聞いて見ましょう」
「ありがとう」
「気にしないで、あたしも真実を分かるまでは、気になってしょうがないもの」
「だが、気をつけてくれ。 真実に触れようとする者には危険が迫るらしいから」
「分かったわ。 でもセルタスってこの国の宰相でしょう。 王様に次ぐ権力者じゃない。 そんな人の敵って、どんだけの人なのよ。 もしかしたら王様自身だったりして」
「それは無いだろう。 考えられるとすれば、軍か・・・」
「また軍が絡んでいるっていうの?」
「その可能性は十分ある。 俺は理由は分からないが、軍の上官から殺されかけたのだから・・・」
「もしそうなら、ますます厄介になるわね」
「そうだな」