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9-11 研究所の真実

 グリムが目が覚めたのは、昼近かった。 ハムの焼ける匂いがした。

「あら、目が覚めた? 朝食、食べるよね」 カエンがキッチンから声をかけた。

「ああ」 そう言うと、グリムはテレビをつけた。 テレビでは、昨夜の研究所の出来事が報じられていた。 ニュースでは、突然研究所が複数の魔獣に襲われたと報じていた。 建物は破壊され、出火し、壊滅的な被害を被ったと。


「奴ら、さすがにそう言って繕うしかないよね」 カエンが料理をテーブルに並べながら言った。

「ああ、そうだな。 自分達が造り出しましたなんて言える訳がない」

「脱走に成功した人達はどうなったのかしら。 まさか警察が、また奴らに引き渡したなんてことはないよね?」

「奴らもこれ以上は事を大きくしたくないはずだ。 だが、その可能性もゼロではないだろう。 軍が絡んでいる、今は手を出さなくとも、秘密保持のために密かに消されると言うことは十分考えられる」

「まったく、人のやることじゃないわ」

「そうだな・・・・」 グリムは昨夜の戦闘を思い出し、樹上から銃を撃った者のことを考えていた。

(何者だ? 俺達を助けてくれた? 俺達の他に研究所のことを調べていた奴がいたということか。 いずれにしてもただ者ではない。 俺はそこにいることが分からなかった)


 その日の午後、カエンの事務所

 カエンはエイラにこれまでのことを報告した。 ただマーフが魔獣に変わってしまった事だけは言わなかった。


「マーフさんや他の人達は、あの研究所で、ある研究の実験に使われるためにさらわれたの。 私達はその研究所で騒ぎを起こし、そのすきに捕らわれた人達を脱走させることを試みたわ。 だけど逃げる途中で敵に囲まれ、マーフは私達を逃がすために、奴らに向って行ったの。 そしてマーフは逃げられなかった」

「そ、それじゃあ・・・・・」

「マーフさんは、最後にこれを、エイラさんにって・・・・」 カエンは銀の指輪をテーブルの上に置いた。 エイラは指輪を掌に載せてじっと見つめた。 やがてエイラは指輪を握り締め、静かに泣き始めた。

「あの人の遺体は・・・」 カエンはそれに対して黙って首を横に振った。


「ありがとうございました」 しばらく後、エイラは涙を拭くと礼を言った。

「あの、調査料ですが、足りませんよね?」

「いいえ、前に頂いた分で結構です」

「しかし、それでは・・・、ありがとうございます」

「エイラさん、これだけは覚えておいてください。 あの研究所にこれ以上関わってはいけません。 これは極秘のことなのです、もし遺体を引き取りたいなどと行ったりすれば、あなたやお子様も含めて命の危険があります」

「分かりました」


 エイラが帰った後、グリムはカエンに言った。

「真実を話さずに、見つけることが出来ませんでしたと言うことでも良かったのじゃないのかい。 希望を断ち切ることになるだろう」

「でも、あたしがエイラさんの立場だったら、やはり真実が知りたいと思うの。 どんなに悲しい真実であってもね」

「そうか・・・」


 数日後、グリムが浮気調査の調査計画を考えていると、カエンが何やら嬉しそうにやって来た。

「分かったわよ。 あの研究所が何を研究していたのかが」

「おおよそ想像はつくがな・・・」

「あなたが持ち出したデータ、まだ全てのファイルが見られる訳ではないけど、全体像が見えてきたわ。 あそこでレクチウムを研究していたのは確かよ。 人間の秘められた能力を最大限に引き出すために、軍からの依頼で最適な処方のレクチウム製剤の開発。 これが目的の一つ。 もう一つが人体に動物や魔獣の遺伝子を取り込んで、更なる能力を獲得すること。 そして最終的には、二つを融合させて最強の兵士を造ること、これが軍からの依頼よ」

「ハイブリッド兵士の大量生産、これが軍が企んでいることか・・・・」

「今回の件で、軍は諦めると思う?」

「いいや、諦めないだろう。 あの場所は目立ってしまうので、場所を替えて密かに再開する可能性が高いな」

「そうしたら、また潰してやるわ!」

「オイオイ、簡単に言うんじゃない」


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