表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/157

9-10 脱出

 塀の外に抜け出せたのは12人だった。 怪我をしている者も何人かいた。 グリムは側にいた人の顔を見た時に、驚いた。


「あんた、マーフじゃないか?」

「えっ、あんたなぜ俺のことを知っているんだ?」

「エイラから、アンタの捜索を依頼されたんだ」

「エイラが・・・・」


 グリム達がまとまって丘を降ろうとしたとき、グリムは複数の人の存在を探知した。

(まずい、包囲されつつある。 20人ぐらいか。 増援が到着したのか) グリムはどうするか迷った。 グリム一人なら包囲を突破するのは、そんなに難しくはないだろう。 しかし彼らを連れて逃げるには、無理があった。 しかももう一つ問題が発生していることが分かった。 武器を持った男達に一人の女が捕らえられていた。 それはカエンだった。

(くそっ、最悪の展開だな。 どうする・・)


「オイ、その中にこの女の仲間がいるんだろう? この女殺されたくなかったら、大人しく全員投降しろ!」 カエンの隣にいる男が、カエンに銃を突きつけながら言った。

「俺達は関係ねえ。 そんな女、知ったこっちゃねえ」 脱走した男の一人が言った。

「そうか、ならば殺してしまおう」 男は引き金に力を込めた。

「止めろ!」(クソッ、間に合わない)


 その時、男の側の樹上から銃声がした。 男は頭に銃弾を撃ち込まれ絶命した。

(何! なんだ、仲間割れか?)

「カエン、伏せろ!」グリムは叫ぶと、拳銃を抜いた。 グリムはカエンが地面に伏せると、次々と男達を撃った。 そして撃ちながらカエンのところまで走ると、カエンの体をかかえ大木の陰に隠れた。 他の警備員達もこちらに発砲してきたが、みな木の陰に隠れた。

「きっと、あなたが助けてくれると信じていたわ」 そう言うとカエンは、グリムにキスした。

「バ、バカ、今そんなことしている場合か・・」 グリムは慌ててカエンを引きはがすと、拳銃の弾倉を抜いた。

(あと2発か・・・)


 敵は銃を撃ちながら、包囲を狭めてきた。 どうやら全員殺すことに決めたようだった。

(カエンを連れて包囲を突破するのは難しいぞ)

 その時、マーフがグリム達の所へやって来た。

「俺が引きつける。 その間に逃げてくれ。 これをエイラに・・・」 マーフは左の薬指から銀の指輪を外すとカエンに渡した。

「何を言うの、一緒にエイラさんの所へ帰るのよ!」

「ダメだ、俺はもう帰れない・・・」

「なぜ?」

「俺はもう人ではないんだ。 俺はバケモノなんだ」 マーフがそう言うと、火事の炎で映る体が、みるみる変化を始めた。 服を破り皮膚が黒い剛毛で覆われ、更に背中の方には鎧のような固い皮膚で覆われた。 顔も熊のような獣の顔に変化し、目が炎のように赤かった。

(何だと、それじゃあ、あの研究所の中にいたのは魔獣じゃなくて、人間だというのか)


「ウオーーーッ!」 マーフは獣のような咆哮をあげると、敵に向って突進していった。 警備員達は驚きながらも、マーフに集中して銃撃を加えた。 マーフは身をかがめながら警備員達に近づき、襲いかかった。 マーフは全身に銃弾を浴びて血だらけになりながらも敵を引き裂き、殴り倒していった。


「行くぞ!」 グリムは他の脱走者にそう言うと、敵がいない方へ下りて行こうとした。

「マーフが、マーフを置いて行けないわ!」

「カエン、彼を犬死にさせる気か。 彼の行為をムダにするな!」

「でも・・・・」 グリムはためらっているカエンを担ぐと、足早に丘を駆け下りた。 他の脱走者も後に続いた。


 丘を降りると、そこにはパトカーや野次馬の車が集まっていた。 脱走者達は警察に助けを求めた。 最終的にここまでたどり着けたのは9人だけだった。 グリムとカエンは警察に見つかる前に姿をくらました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ