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9-7 潜入(2)

 次の日の午後、東の町のファミレス

 4人の男達がコーヒーを飲んでいた。

「おい、どうする。 今日が期限だろう? あと一人連れて行かなけりゃいけないぞ」

「ID無しじゃなければいけないから、めんどくさいんだよなあ」

「今からもう下調べしている余裕はないぞ」

「おい、あれを見ろよ! あいつ何してやがる」 一人の男が駐車場に駐まる黒いバンの周りをうろついていた。

「車を盗もうとしているんじゃないか?」


 男達は慌てて店から出てきた。

「おい、てめえ、何してやがる!」 ガッシリとした体の男が、車の側にいた男の胸ぐらをつかんで言った。

「えっ、何もしていないですよ。 見ていただけです」 男は怯えたように言った。

「嘘つけ! 盗もうとしていたんだろう」

「違います!」

「なぜ見ていた」別の男が聞いた。

「俺のダチが、行方不明になっていて、目撃者の話だと黒いバンに乗せられたと言っていたので、気になって・・・・」 それを聞いて男達が顔を見合わせた。

「ああっ、てめえ俺達に因縁つけてやがるのかあ」 そう言うと、男の腹に拳をみまった。

「うっ!」 男は腹を押さえてその場にうずくまった。

「どうする? こいつをさらっちまうか」

「ああ、ちょうど良いだろう。 こいつの手の甲に傷がある。 訳ありに違いない」 男はそう言うと、車のドアを開けた。 もう一人の男が男を立たせると、もう一発殴りそのまま車の中に押し込んだ。 後部座席にうつ伏せに倒れた男は、そのまま後ろ手に結束バンドで縛られた。


 男達は素早く車に乗り込むと、車を発進させた。 男はシートに顔を伏せながら笑った。 その捕らえられた男は、グリムだった。


 昨夜、グリムとカエンの会話

「まともに侵入しようとしても無理だ。 ジェットウイングでもあれば別だが」

「じゃあ、どうするの?」

「連れて行ってもらう。 奴らの前でウロウロして、俺がさらわれるように仕向ける」

「でもそうしたら、あなたが捕らえられて身動き出来なくなるでしょう」

「それはそうなのだが、まあ何とかなるだろう」

「気をつけてね」


 グリムを乗せたバンは、クレアル社の研究所に入って行った。 中には大きく分けて管理棟、製剤研究棟、実験棟の3つの建物があった。 その内の一番手前にある管理棟の入り口前で車は停まると、研究所の警備員にグリムは引き渡された。


 グリムは一番大きな建物である実験棟の中に連れていかれ、鉄格子のある刑務所のような個室に入れられた。 個室に入れられてから、初めて手首にくい込んでいた結束バンドが切られた。 グリムは周りを見渡した。 三方を白い壁に囲まれ、狭いベッドとトイレ、洗面台があった。 しかし鏡はなかった。 鉄格子の向こう側には通路を挟んで同じような作りになっていた。 向かい側には誰もいなかったが、斜め右側には赤毛に若い女が、斜め左側には男が入っていた。


(さて、どうするか。 ここに入れられる前に、ポケットの所持品は全て取り上げられた。 まあ想定内だが・・・) グリムは天井を見上げ、隅に監視カメラがあるのを確認した。


 グリムは大きく一息吸い込んだ。

「出せー! 俺を誰だと思っているんだ! とっとと出せ!」 グリムは大声を出し、鉄格子や壁をガンガン蹴った。

「うるせーぞ! 暴れてもムダだ、おとなしくしろ」隣から男の声が聞こえた。 グリムはそんな声を無視して、暴れ続けた。


 しばらくすると、制服を着た警備員が警棒を持ってやって来た。

「騒ぐな!」 警備員が警棒で鉄格子を叩いた。

「だせ! とっとと出せ!」グリムはかまわず怒鳴り続け、鉄格子を蹴った。 警備員は頭にきて、格子の隙間から警棒を突き入れた。 グリムはそれを見逃さず、すばやく警備員の手首をつかむと、そのまま引き寄せた。 “ガシャン!”という大きな音とともに警備員は鉄格子に顔をぶつけた。 グリムはそのまま警備員の太い腕を下げた。 格子の横棒が、てこの支点になって腕に痛みが走り、同時に肘も極められて、警備員は悲鳴を上げた。 グリムは警備員の腰にぶら下がった鍵の束を奪いとった。 さらに拘束用手錠で警備員を鉄格子に固定した。


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