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9-4 調査(2)

 「まだ、軍が組織的に関わっているとは言えないでしょう? 傭兵か元兵士のクズが、犯罪組織に雇われたということもあるでしょう?」 カエンは食い下がった。

「それはそうだが、俺は嫌な予感しかしない」

「ダメよ、こんな中途半端じゃ終われないわ! あなたがやらないなら、私一人でも調査は続けるわ」

「まったく、言いだしたら聞かないんだから・・・。 分かった、調査は続けよう。 だが、軍が関わっていると分かったら、そこで手を引くぞ。 個人レベルでどうこう出来る範疇を超えてしまう」

「分かったわ」 カエンが笑った。


 更に二日後

 その日の夜、二人は情報のすり合わせを行なった。

「その後、聞き込みを続けた結果、興味深いことが分かった。 最近失踪しているのは、マーフだけじゃないぞ。 あの近辺だけでも5人行方不明になっている。 全員が20歳から25歳の男女で、いずれも“ID無し”だ。 より広い範囲で調べれば、もっと増えるかもしれない」

「私の方は、例のマーフをさらったバンのその後の足取りを、監視カメラで追ったの。 そうしたら街から出て東へ向っていたわ。 車のナンバーから所有者を調べてみたけれども、まあ予想通り盗難車だった」

「東には何があるんだ?」

「10キロほど先に小さな町があるわね」 カエンが地図を見ながら言った。

「かえってそんな町の方が目立つはずだが・・・・」

「ああ、それとその町の郊外に製薬会社の研究所があるわね」

「研究所?」

「ええ、クレアル社という大企業ね。 それがどうしたの?」

「いや、何がと言うわけではないが、少し気になるな・・・」

「その辺を少し調べて見ましょうか」

「そうだな」


 翌日、グリムは車で東の町へ出かけた。 町の人々にマーフの写真を見せて知らないかを訪ねたが、手掛かりは得られなかった。 ついでに最近行方不明になっている人がいないかも聞いたが、そう言った情報も得られなかった。 午後になり、有用な情報も得られないので、グリムは帰ろうと思い車に乗り込んだ時、遠くになだらかな丘が見えた。 全体が森に覆われていたがその中心に白い建物が見えた。

(もしかしたら、あれが製薬会社の研究所か?) グリムには何か違和感があった。


 グリムは無意識に研究所の方へ車を走らせていた。 町を外れて3キロほど走らせると、研究所の方へ向った道を見つけた。 道を左に曲がり、道なりに森の中を丘の頂上の方へ上っていった。 中ほどまで行くとそこには検問所があり、二人の警備員が立っていた。 グリムはそこで紺の制服を着た警備員に止められた。 彼らは自動小銃を肩にかけていた。


「どちらへ行かれますか?」

「あっ、えーと、向こう側へ行きたいのですが、通り抜けられるかなと思ったのですが・・」

「通り抜けは出来ません。 これから先は私有地になりますので、お戻りください」

「分かりました」 グリムは車を返すと来た道を戻っていった。

(やはり何かおかしい。 研究所というよりは軍の施設のようだ)


 グリムは辺りを見渡し、そこから北東の方へ数キロ離れた所に丘よりは高い小山があるのを見つけ、そちらに車を走らせた。 10分ほどで山の麓に着くと、そこに車を駐めて、グリムは山を登り始めた。 藪をかき分け、1時間ほどで山の頂上に着いた。 木の上に上ると、枝の間から研究所の全体が見えた。 グリムは枝の又に腰掛けると、単眼鏡を取りだして覗いた。

(やはりそうだ。 これは・・・) グリムはカメラに接続すると、写真を数枚撮った。 その後、グリムは急いで山を下りると、研究所の方へ曲がる道から数百メートル離れた目立たない空き地に車を駐めた。 それから歩いて曲がり角のところが監視できる所までいった。 そして藪の中に伏せると、通る車を監視し始めた。 顔に虫が飛んできて、顔を這ったが身じろぎもしなかった。


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