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8-7 逃避行(2)

 朝になると、グリムはセリナの部屋をノックした。

「おや、こんな朝早くどうしたね。 シックルならここにいるよ」 シックルはセリナの腕に抱かれていた。

「ばあさん、事情があってここを出て行かなければならなくなった。 ここに100グランある。 受け取ってくれ」 セリナは少し驚いたが、黙って金を受け取った。

「何があったかは聞かないが、また急だね」 セリナはシックルをなでながら言った。

「すまない。 数日したら俺を訪ねて男達がやって来るだろう。 絶対に関わらないでくれ」

「分かったよ。 それでこの子はどうするね。 逃げるには負担になるんじゃないかい? あたしが預かろうか」

「えっ、そうしてもらえると助かります」

「グリムはそう言っているけど、アンタはそれでいいかい? あたしと暮らすかい?」 セリナはシックルに話しかけた。 シックルは顔をあげてセリナを見つめた。

「ナーゴ」 そう鳴くと、シックルはポンと跳んで、グリムの肩に乗った。

「おや、嫌われてしまったね。 その子はあんたと一緒にいたいってさ」

「はは、こいつは俺がくたばるところを見たいんですよ」

「死ぬんじゃないよ」

「ありがとうございます。 お世話になりました」


 午前中に荷造りを済ませて、カエンを待った。 と言ってもほとんど荷物など無いのだが。

(さて、問題はこれからどこへ行くかだ。 小さな町や村はかえってよそ者は目に付きやすい。 潜伏するならやはり大都市だ。 ここから一番近い大都市となると、西のシドニールか。 だが、奴らもそう考えるだろう。 裏をかいてしばらく街の外で暮らして密かに戻って来ると言うのはどうだ。 だめだ組織の者達に俺の顔は知られている、じきに顔を見られて噂になるだろう。 となると・・・)


 昼過ぎにカエンがやって来た。 赤と黒のチェック柄のシャツにジーンズというカジュアルな姿だった。

「お待たせ。 さあ行きましょう! あら、この猫ちゃんは?」

「シックル、俺の相棒だ。 ていうか今なんて言った?」

「よろしくね、シックルちゃん。 あたしはカエンよ」 そう言うとシックルを抱いた。 シックルは何の抵抗も見せず大人しく抱かれると、「ナーゴ」と鳴いた。

(こいつ、女には甘いんだな)

「さあ、出かけましょう」 カエンはシックルを抱いたまま部屋を出た。 グリムは慌ててリュックを持って後を追った。

「おいおい、出かけるってどこへ行くつもりだ? 飯を食いに行くのか?」

 カエンは何も言わず、どんどん階段を降りていった。 外に出ると、そこに白いバンが停まっていた。

「この車は?」

「私たちの家よ!」

「わ・た・し・た・ち? 何を考えているんだ?」

「私も一緒にいくわ!」

「何だと! ピクニックに行くんじゃないぞ!」

「分かっているわ。 私たち良いコンビだと思わない?」

「だめだ! 俺に関わるとろくなことにならないぞ」

「分かっているわよ。 何せ死神さんだものね」

「何故だ? 死ぬかも知れないのだぞ!」

「私はずっとサイクロプスのガーバンに、復讐することだけを生きがいに生きてきたの。 でもあなたのお陰でそれが達成されたら、何だか気が抜けた感じなのよ。 だから今度は私があなたを扶けてあげたいの」

「その気持ちはありがたいが、それでもだめだ。 危険過ぎる」

「もしも私が死ぬことになったとしても、後悔はしないわ。 私自身で決めたことだから。 これはもう決定事項です!!」 カエンは有無を言わせず、言い切った。

「はあーっ、どうしてこうなる」 グリムは頭を抱えた。

「見て、この車改造してあって簡易のキャンピングカーになるのよ」

「いつから考えていたんだ?」

「あなたがレッドアイズの話をした時からよ」

「なんてこった・・・」

「さあ、乗って!」 カエンはドアを開けると、後部座席にシックルを乗せた。

「どこへ行くつもりだ」

「王都よ」 それはグリムも考えていた事だった。

「勝手にしろ!」 グリムは諦めて助手席に座った。

「私の本当の名前はレジーナ・シオンよ。 よろしくね」 そう言うとカエンは車を発進させた。


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