8-4 対決(2)
グリムはカールに対して、ムカついてきた。
(クソッ、最悪の流れだな。 だが俺の意志は変わらない) グリムはカールの目を見据えて言った。
「俺は一度死んでいるのだ。 そんな脅しは通用しない」
「そうですか、残念です」 グリムは男の心拍数が急上昇するのが分かった。
次の瞬間、カールは懐から素早く拳銃を抜くと、窓ガラス越しに撃ってきた。 しかしグリムもそれは察知済みで、一瞬早くシートを倒した。 そしてグリムも拳銃を抜くと窓越しに続けざまに撃った。 カールは素早くしゃがみ込み、銃弾を避けた。 グリムは素早くギアをバックに入れると、砂利を跳ばしながら車の向きを変え、そしてカールに向って車を突進させた。 カールはグリムに向ってまた発砲した。 銃弾はフロントガラスを破壊し、グリムはガラスの破片を浴びながらも更にアクセルを踏んだ。 カールは脇に転がり車を避けた。 グリムはそのままスピードを緩めること無く道路に出ると、対向車のトラックとぶつかりそうになりながらもなんとか回避し、そのまま更に加速した。
(さて、これからどうするか。 もうやるかやられるかだ。 このまま逃走すると言う手もあるが・・・) グリムはルームミラーで後ろを確認した。 後ろに猛スピードで迫る車があった。
(奴だ・・・) この時間帯、走っている車は多くは無かった。 前には一台のワゴン車が走っていた。 対向車は遠くに見えた。 グリムはアクセルを踏むと対向車線にはみ出し、ワゴン車を追い越した。 対向車が迫りクラクションを鳴らされると走行車線に戻り、すぐに対向車とすれ違った。
後ろの車は執拗に追ってきた。
(やはり振り切れないか。 やるしか無いのか) グリムは覚悟を決めた。 グリムは対向車や後続車がいないことを確認すると、ブレーキを思いっきり踏んだ。と同時にハンドルを左に切った。 “キキーーッ!!”という急ブレーキ音とともに車をスピンさせると、一瞬で後ろ向きになった。 そして車を、対向車線を走らせながら、すれ違いざまにグリムはカールの乗った車を撃った。 撃った弾丸の一発はカールの車の左の前輪に当った。 カールの車はタイヤがバーストしてコントロールを失い、外灯の柱に激突した。 グリムは止まらずにそのまま走り続けた。
(やったか? いや、あれくらいでは死なないだろう) バックミラーで確認すると、カールが車から降りてきた。 そして後ろから走ってきた黄色のスポーツカーの屋根に飛び乗った。
(しつこい奴だな・・・・)
カールはスポーツカーの屋根を拳で殴ると、屋根に穴が開いた。
「ヒエーーッ! 助けてください」 ドライバーが泣きそうな顔で懇願した。
「ちゃんと運転してくださいよ。 危ないじゃあないですか。 前の車を追ってください」
「ハイーーッ!」 男はスピードを上げた。 グリムの車は川の土手の道を走っていた。 車がグリムの車に近づくと、カールはグリムの車の屋根に跳び移った。
“ドスン!” 屋根に衝撃があった。
(クソッ!) グリムは天井に向けて銃を撃った。 更にハンドルを切って車を蛇行させて、カールを振り落とそうとした。 カールの方も車にしがみつきながらも、車内に向けて銃を撃った。 グリムはハンドルを切ると、車は道をはずれて斜面を転がった。 車は二回転ほどすると河川敷で逆さに止まった。 すると、ガソリンの匂いが漂ってきた。
(まずい、引火するぞ!) グリムは慌てて車から這い出した。 グリムが走り出して間もなく、車は大きな炎を上げて爆発した。
(奴は、奴はどこだ・・・・) グリムは意識を集中してカールの居場所を特定しようとした。 するとカールが少し離れた場所から、こちらに向って歩いてきた。 手には拳銃が握られて、銃口がグリムを狙っていた。