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2-4 山の神の審判(1)

 エリオラの家の前に顔役達が現れた。 屈強な男達も一緒だった。

「逃げられないように、縛った方が良いのではないか?」 顔役の一人が言った。

「こいつは逃げない。 俺が逃げるように言ったのにな。 不必要におとしめるのには反対だ」とゼオル。

「必要ない」ライカイは言った。

「おじさん、どこかに連れて行かれるの?」 ペックは心配そうに言った。

「大丈夫だ」“名なし”はそう言うと、ペックの頭をなでた。

「帰ってくる?」

「ああ」

「絶対だよ! 約束だよ!」 ペックは男のシャツにしがみついて、男の顔を見上げた。

「ああ、約束だ」 “名なし”は戻ってこれる自信があった訳ではなかったが、ペックを心配させないためにそう言ったのだった。 エリオラも心配そうに男の顔を見つめた。 男は笑って頷いた。


 山の洞窟前

 村から1時間ほど山を登ったところに洞窟はあった。 洞窟の中は深く、迷路のようになっており、村人であっても入ることはなかった。 通常は太い木を交差して封鎖されていた。


 「良いか、“名なし”よ。 ことはいたって単純だ。 これからお前には、この洞窟に入ってもらう。 そして10日後に迎えに来る。 生きてここを出ることが出来れば、山の神に許されたと言うことだ。 はれてこの村の一員となれる」とライカイは説明した。

「中は迷路のようになっている。 魔獣もいるかも知れないから気をつけるのだ」 呪術師のゲリオルはそう言うと、水の入った素焼きの壺とナイフを一振り渡した。

「申し訳ないが、中に持って入れるのはこれだけだ」

「ありがとう」“名なし”はそう言うと、洞窟の中に入っていった。 男が中に入ると、男達の手によって入り口は岩でふさがれた。


 中は入り口がふさがれると暗かった。 だが、やがて目が慣れてくると次第に回りの様子が見えるようになってきた。 壁面の所々が青い光を放っていたからだった。

(さて、どうしたものか。 食料がない。 水も3日と持たないだろう。 最低でも水は見つけなければならない。 だがこれはヘタに入って行けば、出て来れなくなるぞ)


 “名なし”は恐る恐る壁を伝いながら奥に入っていった。 すると歩き始めて10分ほどで岩につまずき、水の壺を落としてしまった。

(何と言うことだ) 痛恨のミスに、割れた壺を見つめながら数秒間動けなかった。

(これで、何が何でも水を見つけなければならなくなったぞ) “名なし”は気を取り直してまた進み出した。

(空気の流れを感じる。 閉塞された空間では無いと言うことだ。 取りあえず空気が流れて来ている方へ進もう)


 どれぐらい歩いただろうか。 “名なし”自身は1キロ位進んだように感じていたが、実際は100メートルも進んでいないのかも知れないと思った。 平地だったら歩数を数えればある程度距離は計算できる。 しかし曲がりくねって更に起伏もあるところを歩いていれば、いつのまにか元の場所に戻っていたなんて事もあり得るからだ。


 奥に進むにつれ、壁面の光る岩が多くなってきた。 そのため内部がより明るくなり見やすくなってきた。 そして洞窟の内部も広くなっていた。 ふと右の壁際を見ると、何かが横たわっていた。 “名なし”が近づいてみると、それは骸骨だった。

(先客さんか。 服がぼろぼろだ。 大分昔のものだな) 骸骨の眼窩が虚ろに見つめているように思えた。

(ヘタをすると、俺もこうなるのか)


 更に降っていくと巨大な空間が現れた。 そこには青い地底湖が広がっていた。 水は壁面の青い光る岩のせいか、青く見えた。 水は透き通っており底までがくっきりと見通せた。 “名なし”は水際まで慎重に下りて行くと、両手で水をすくった。

(飲めるのか? 匂いはない。 見た目もきれいそうだ。 気になるのは回りの光る岩だ。 この岩の成分が溶け出している可能性が高い。 その成分は有害ではないのか?) 恐る恐るなめてみた。 味はなかった。 しばらく考えていたが、“名なし”は飲むことにした。 いずれにしてもこの水を飲まなかったら死ぬのだ。


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