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7-7 地下プロレス(1)

 グリムがソファーで寝ていると、腕の電話が鳴った。 グリムは表示の番号を確認してから出た。


「驚いた、本当に生きていたのか・・・」 声の主はサイクロプスの幹部、バレルだった。

「どうした? こちらは予定通りだ」

「ボスのゲイツは死んだと聞いたぞ」

「クレイは生きている。 こちらは計画通り反撃に出る」

「分かった。 ボスのガーバンや他の3人の幹部は、今夜8時までに会場に入る。 場所は港の倉庫地区にある倉庫だ。 地図は後で送っておく。 お前は出場選手として登録してあるから、5時までには入ってくれ。 当然武器の持ち込みは禁止だ」

「承知した」

 電話を切ってしばらくすると、地図が送られてきた。 グリムはそれを、カエンに転送した。


 グリムはクレイの部屋に入った。 ここはエクリプスが押さえている家の一つで、多目的に使われていた。 クレイは不機嫌だった。 それはゲイツとの連絡が取れなかったからだ。 部下に見に行かせたところ、ゲイツの邸には外にも中にもおびただしい死体が転がっているが、警察の規制線が張られ近づけなかったとのことだった。


「ゲイツはやはり殺されたようだ。 サイクロプスのバレルが言っていた」

「クソッ、だからもっと気をつけろと言ったのに・・・」 クレイはたばこを取りだし、火を点けた。

「どうするね・・・」

「計画は続ける。 落とし前はつける」

「そうか、今夜の会場はここだ」グリムは地図を写しだした。

「分かった、襲撃の手配をさせる」

「俺は予定通り先に潜入する」

「分かった、よろしく頼む」


 午後5時、地下プロレス会場

 グリムは入り口の前に立つ、サイクロプスの一員と思われる男に言った。

「今日試合に出る者だ」

「ああん、名前は?」 男はリストを見ながら言った。

「ネルガル」

「変な名前だな。 ああ、ネルガル、ルーキーかよ。 その角を右に曲がったところから入れ。 通路に沿って進むと控え室がある」


 グリムが物置のような狭い控え室に入ると、テーブルの上に黒いタイツと覆面、テーブルの脇には黒いシューズが置いてあった。

(これを被れってことか。 趣味が良いとは言えないな) 黒いマスクに目や口の周りが赤い縁取りされた、お世辞にも格好が良いとは言えなかった。 グリムは着替えた。


 午後7時頃、控え室

 「おい、ネルガル。 次だ準備しろ」 係員が告げた。

「えっ、まだ後じゃ無いのか?」

「何を言ってやがる。 アンタの正体は知らないが、ここじゃルーキーだろ。 十分後の方だぞ。 つべこべ言わず準備しろ。 今の試合が終わったらすぐに始めるぞ」

(まずいぞ。 プロレスなんてやったことがないぞ。 バレルの手違いか?)


 巨大な倉庫の中に作られた試合会場には、沢山の客が入っていた。 会場の真ん中には四角いリングが設けられ、更に周りが高い金網で囲まれていた。 その中では2人の巨漢が戦っていたが、その戦いはグリムが思い描いていたプロレスとは違っていた。 レフリーはおらず、2人とも目や口から血を流していた。 片方がこめかみを殴られ、マットに倒れると相手は腕を取り自分の腕を絡ませて、ひねりあげて相手の肘を破壊した。 更に相手は男にまたがり、顔面を殴り続けた。 やがて下の男は体を痙攣させると、ぐったりと動かなくなった。 観客の中に、歓声とブーイングが沸き起こった。

(何だこれは、プロレスじゃないぞ。 これはただの殺し合いだ。 バレルの奴、仕組んだな。 ここで俺を始末する気だ) 反対側の隅に筋肉の塊のような巨漢が控えているのが見えた。


 金網が開けられ、倒れた選手が運び出された。 スタッフにより急いでマットに飛び散った血が拭かれ、次の試合のアナウンスが行なわれた。 ネルガルは戦闘力未知数の謎の覆面レスラー、相手は42戦無敗の破壊神ゲイリー・グレンジャーだという。 一方の壁に大きな電光掲示板があり、そこにはゲイリー1対ネルガル22という数字が表示されていた。

(あれがオッズか、観客は俺が惨めに殺されると思っているらしい)


 スタッフに促されグリムはリングに向った。 リングに上がる前にスタッフが言った。

「説明するまでもないだろうが、反則は器物を使うことだけだ。 目突き、金的何でもありだ。 試合終了はどちらかが死ぬか、完全に動けなくなるかだ。 いいな」そう言うと、グリムをリングに押し上げた。


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