7-6 襲撃(2)
「そろそろ襲撃してくるぞ、配置に着け!」グリムが一同に命じた。
「オレはどうすれば良い?」 クレイが後ろで言った。
「あんたは地下室で大人しくしていてくれ。 敵を倒してもあんたがやられたらお終いなんだから」
「そうは言うが、まるで臆病者みたいで格好がつかねえじゃねえか」
「トップは臆病なくらいで良いんだ!」 グリムがそう言うと、周りの者達が笑った。
12時を回った時、入り口に付いた窓のガラスが突然割れて、何かが投げ込まれた。
「来たぞ! 目をつむって伏せろ!」 グリムが叫んだ次の瞬間、それが爆発すると廊下中に閃光が起こった。 すると玄関と裏の入り口のドアが破壊されたかと思うと、次の瞬間大きな爆発音と供に爆発が起こった。 それと同時に玄関と入り口から押し入ろうとした四人が爆風で外に吹き飛ばされた。 ドアが開くとワイヤーにかかり外に向けて仕掛けた指向性対人地雷が爆発したのだった。 といってもクレイのところにクレイモアは無かったので、グリムが手榴弾と釘を使って作った代用品だった。
傭兵達は、こちらに備えがあることを知ると、すぐに戦術を変えた。 傭兵達は入り口の所の四人は死亡か重傷を負って離脱したが、すぐに他の者たちがバックアップに入り、家の中に手榴弾を投げ込んだ。 グリム達は二手に別れテーブルなどの家具を盾にしていたが、爆発で数人が負傷した。 更に庭にいた者が居間の中に、ロケットランチャーを撃ち込んだ。 もうこうなると家その物が大きく大破した。 次に傭兵達は、マシンガンを乱射し突入してきた。 グリム達も応戦したが、邸の中では激しい銃撃戦が続いた。
しばらくすると、グリム達の戦況は次第に悪化していった。 圧倒的にこちらの方が人数は多かったが、やはり戦闘経験の差が出てきたのだった。 奴らは正確かつ効率的な射撃で確実にこちらの戦力を削っていった。
(クソッ、やはり簡単にはいかないか) グリムは敵の射撃が止んだ一瞬を狙って立ち上がり、拳銃を2発連射した。 弾丸は軌道を変えて柱の陰に隠れた男の頭と脇腹に当たった。
(これで7人。 あと3人、それと外の木の上に1人か) グリムは敵の位置を感じ取った。 次第に煙が流れてきた。 キッチンの方から出火したようだ。
(まずい、この家はもう持たない。 早々に決着をつけないといけない。 家から飛び出せば、木の上から狙撃されるぞ)
グリムは意を決すると、瓦礫を踏みながら素早くリビングの中を走り、庭に転がり出た。 するとすぐ側を銃弾がかする音がした。 グリムは素早くスナイパーの位置を検知すると、スナイパーの次弾よりも先に銃を撃った。 グリムの撃った弾はスナイパーののど元に当たり、スナイパーが枝から落下した。
(後3人・・・) グリムは感覚を研ぎ澄まし、敵の位置を確認した。 家の中に2人、裏庭に一人だ。 グリムに続いて護衛達が煙にむせながら、庭に出てきた。 それを家の中から、銃弾の雨が襲った。
「グワッ!」 グリムの側にいた2人が倒れた。 グリムは右前方に転がり、起きあがりざまに片膝立ちのまま銃を連射した。 すると銃弾は敵の肩と額に当たりまた1人倒した。
(あと2人・・・。 うっ、裏庭の奴はどこへいった?) グリムは1人見失った。
(はっ、しまった。 クレイのところだ) もう一人はガレージ中にいた。 地下室はガレージの中にも繋がっている。 外の奴はクレイがそこにいると見抜いたに違いない。
グリムはガレージに走った。 敵が地下に繋がる階段付近にいるのが感じられた。 ガレージの扉を開けると、中から連射を受けた。 弾はグリムの頭をかすめるように背後の壁に斜めに銃痕を残した。 銃撃が途絶えると、グリムはガレージの中に飛び込んだ。 そして男がいた辺りに銃を撃った。 しかし男はすでにそこにはいなかった。
(ちっ、まずいぞ! 死なせないぞ、クレイ) グリムは男を追って、地下室への階段を降りた。
その頃、クレイは1人で、地下室の椅子に座っていた。 銃撃の音の中、何やら焦げ臭い匂いがしてきた。
(何だ? 火を点けられたのか? このままここにいて良いのか? グリムは、迎えに行くまで決して出るなと言っていたが・・・)
その時、ガレージ繋がる階段の方から足音がした。
(グリムか?) そう思った時、黒い戦闘服に身を包んだ男が現れた。
「ビンゴだ!」
(しまった!) クレイは慌てて拳銃を抜こうとした。
「遅い!」男が叫んだ。
「伏せろ!」 男の後ろからグリムの声が聞こえた。 クレイはすかさず床に伏せた。 男がクレイに向けて撃つのとグリムが男の背後から撃つのが同時だった。 グリムは弾倉に残っていた弾を全弾うち尽くした。 男は背中や、首に銃弾を受けそのまま前のめりに、床に倒れた。 グリムは素早く拳銃の弾倉を替えると、倒れた男の側に近づき、男の後頭部に2発撃ち込んだ。
「クレイ、生きているか?」 グリムが呼びかけた。
「腹を撃たれた。 遅いぞ・・・」 クレイが静かに起き上がった。 グリムが側に寄って、傷口を確認した。 弾は防弾チョッキで防がれていた。
「大丈夫だ。 弾は届いていない」
「状況は?」
「あと1人のはずだ。 とにかくここも危ない、外に出よう」
2人がガレージまで来ると、グリムは敵を探した。 庭で動いているのが5人感じられたが、敵は感じられなかった。
「確認してくる。 ここにいてくれ」 そう言うと、グリムは外に出た。 外には護衛の者達がいた。
「敵は残っていた奴は、何とか倒しました」 庭に最後の敵が倒れていた。
「生き残ったのは5人だけか・・・」
「そうです。 その内2人は怪我をしています」
「そうか、とにかく俺達の勝ちだ」 クレイがガレージから覗いていたので、グリムは手招きした。 今では邸が盛んに燃えていた。
「終わったのか? 何てこった、俺の家が・・・・」 クレイは燃える邸を呆然と見つめていた。
「クレイ、ボーッとしている暇は無いぞ。 すぐに消防と警察が来るぞ。 その前に姿を消すんだ」
生き残った7人は、2台の車に乗り慌ただしく闇の中に消えていった。 辺りには消防車とパトカーのサイレンが響き渡った。