6-9 怒りのグリム(3)
「お母さん」コニーはグロリアの顔に残ったアザを触った。
「これからどうするつもりだい? まさかあんたがこの子を育てるつもりじゃないだろうね」とセリナ。
「それは無理だ。 だが正直、どうしていいかわからない。 コニーを預けられるところを探さないと・・」
「まったく、あんたは・・・・」 セリナがあきれていると、表に複数の車が止まる音がした。 グリムは窓からうかがうと、9人の男たちが銃を持って降りてきた。
「来たか・・・」
しばらくすると男たちの足音が聞こえ、ドアが開いた。 男たちが銃を持って慎重に入ってきた。
「銃を下ろせ、子供にそんな物を見せるな」 グリムが言った。
「お前が言うな。 うちの店で銃をぶっ放しやがったくせに」 ケルベロスとの会合の時に左の席に座っていた小太りの男だった。 男はグリムの顔を見て驚いた。
「お前は、エクリプスのボディガードか・・・」
「・・・・・」
「なんだ、これは俺たちへの宣戦布告か?」
「違う! これは俺の個人的な問題だ」
「ほうそうか、それでてめえはどう落とし前つける気だ」
「今回の件は、あの変態野郎と支配人が悪い。 コニーは渡さない」
「てめえにそんなことを言われる筋合いはねえ。 あの女には3千グランの貸しがあるんだ。 素直にそのガキを渡せ。 それともてめえがその金を払うとでもいうのか?」
グリムは上着のポケットに手を入れた。
「おっと、手を出せ!」 男は、グリムが銃を出そうとしていると勘違いして言った。
「早まるな、金を出すだけだ」 グリムは札束を取り出すと、男の方へ放り投げた。
「3千グランある。 それで黙って手を引け」 小太りの隣の男が金を拾った。
「ずいぶん物好きな男だな。 だがこれじゃあ足りねえんだよ。 てめえは店で暴れている。 これはその損害分だ」
「くそっ、あと2千ある。 こちらが下手に出ているうちに帰れ!」 グリムは更に金を放ると、男をにらんだ。 男たちがその殺気にひるんだ。
「そっちこそ、立場が分かっていなんじゃないか」
「ずいぶん大口をたたくようになったじゃないか、ブレン」 セリナが腕を組みながら、小太りの男に言った。 男がセリナの方を見ると、驚いた顔で言った。
「あなたは、セリナさん。 なぜここに・・・」
「ここはあたしのアパートだよ。 駆け出しのチンピラだったくせに、欲をかくんじゃないよ!」
「くっ、セリナさんあんたが『鉄血』と言われていたのは、とうの昔だ。 あんたの威光はもう通用しないぜ」
「なんだって!」セリナはブレンを睨みつけた。
「うっ、まあ今回だけは、あんたの顔を立ててやる。 だがお前、お前は許さねえからな、覚えていろよ」 男はそういうと引き上げていった。
「ばあさん、あんた何者だ?」
「何者でもいいだろ、てアタシはばあさんじゃない!」
「でもとにかく助かった。 コニーの前で銃撃戦は避けたかったからな」
「こっちこそ礼を言うよ。 アタシには何も出来なかったからね。 コニーの預かり先は、アタシにあてがあるから聞いてみるよ」
「そうか、頼む」
翌日、セリナは知り合いの孤児院に話をしてくれた。 そしてコニーはそこに入れることになった。
「おじさん、ありがとう」 コニーはグリムに抱きついた。
「元気でな。 すぐ友達ができるぞ」
コニーは迎えに来た車に乗り込み、後ろのガラスからいつまでも手を振った。