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6-8 怒りのグリム(2)

 グリムはドアの所で廊下をうかがった。 男は全部で3人、階段の所まで下がっているのが感じられた。 グリムが廊下を覗くと、斜め前のトイレの所から、グリムを案内した女が、非常階段の方を指さした。 グリムは頷くと、階段の方へ2発撃った。 男達が首を引っ込めた隙に、一気に非常階段まで走り外に出た。 そして一気に4階まで駆け上がった。 4階の扉は鍵がかかっていたが、鍵を銃で撃って壊すと中に入った。 4階は他の階よりも作りが豪華だった。 グリムは一番近くのドアを開けて中に入った。 素早く部屋を見渡した。 そこはどうやら支配人の執務室のようだった。 誰もいなかったが、その隣の部屋で人の気配がした。


 グリムは静かにドアを開けた。 そして目の前の光景に怒りが爆発した。 下着姿のコニーに頭の禿かかった男が手をかけようとしていた。 グリムはとっさに銃を撃った。

「ぐあっ」男は銃弾が当たった右の前腕を押さえた。 男は驚いた顔でグリムを見て固まった。 グリムは素早く間を詰めると男の顔面を殴った。 男の前歯が何本か折れた。

「グリムのおじさん?」

「コニー、服を着るんだ。 おじさんと帰ろう」 そう言うとグリムは、倒れた男を引きずって隣の部屋に運んだ。 コニーにこれから起きることを見せたくなかったからだ。


「起きろ!」 朦朧としている男を揺さぶった。

「誰だ、お前は・・・・」

「誰でもいい」

「何故、こんなことを・・・。 こんなことをして無事にすむと・・」 グリムは男の腹を殴った。

「ぐあっ!」男は胃の中身を吐き出した。 酸っぱい匂いが漂った。

「お前の罪は、グロリアを守らなかったことだ」

「グロリア? ああ、あの女がどうしたというのだ。 全くまだ借金が残っていたのに死んじまいやがって」

「娼婦だから死んでもかまわないと言うのか? ならば俺がお前を殺してもかまわないよな」 グリムが銃口を男の口に突っ込んだ。

「ひっ、たひゅけて・・・」 男は涙を流した。

「おじさん?」 服を着たコニーが後ろに立っていた。

「ちっ!」 グリムは銃床で男のこめかみを打ち付けると、男は気を失った。


 グリムは感覚を研ぎ澄ました。 男達がやって来る。 階段側から5人、非常階段から3人だ。 グリムは窓際までいくと、窓を開けて下を見た。 ここは4階、地面までは15メートルぐらいあるだろう。 グリムは腹を決めた。

「コニー帰ろう。 いいかい、おじさんにしがみついて目をつぶっているんだ。 ちょっとの間だ」 コニーはグリムの首にしがみ付いて目をつむった。 グリムはコニーを抱き上げた。 男達はもうそこまで来ていた。


 男達が部屋に入るのと、グリムが窓から飛び出すのが同時だった。 グリムが飛び降りた場所には車が停まっていた。 大きな衝撃音がしたかと思うと、黄色のセダンの屋根がつぶれた。 グリムは車の屋根から降りると、コニーを抱えたまま裏の車まで走った。 そしてコニーを車に乗せると、タイヤを鳴らしながら素早く車を発進させた。


 車を走らせながら、グリムはこれからのことを考えていた。

(どうする。 奴らがコニーを奪い返しに来るのは確実だ。 このままコニーを逃がすのがベストだ。 だがどこに・・・。 カエンの家に一時匿ってもらうか。 いや、それではカエンも巻き込んでしまう。 我ながら無計画に動いたものだ)

「おじさん、お母さんに会いたい」

「お母さんは、亡くなったんだよ」

「知っているよ。 でもアタシ、お母さんにサヨナラを言っていないの。 どうしてももう一度会いたい!」

(アパートに戻るのは最悪の手だ。 奴らが待ち構えているかも知れない)

「おじさん、お願い・・・」 コニーは目に涙をためていた。 グリムは負けた。

「分かった、お母さんに会いに行こう」 グリムは車をUターンさせると、アパートに向けて走らせた。


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