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6-2 情報屋(2)

 道路は渋滞ほどではないが、そこそこ車が走っていた。 カエンはスピード出したかったが二車線とも塞がって追い越せず、少しイライラしていた。


「リック、奥さんに電話して、すぐにお子さんを連れて家を出るように言うのよ。 奴ら、すぐに家に行くわ」 男はハッとしたように、すぐに腕に着けた時計型の端末を使い電話をかけた。

「ニーナ、ケビンを連れてすぐに家を出るんだ。 悪い奴らがすぐに家に行く。 いや、ダメだ! 荷物なんて準備する時間は無い、すぐに出るんだ」

「お前達、知り合いなのか?」

「リックは私と会う約束だったの。 それを奴らに気付かれて、拘束されるところだったのよ。 あなたが通りかかって助かったわ」

「奴らは何者だ」

「サイクロプスの連中よ」

「何だと!」

(しまった。 だから関わるべきじゃ無かったのだ。 自分からもめる火種作ってどうする)

「止めてくれ。 俺は関係無い」

「何を言っているの。 三人も叩きのめしたくせに。 もう関係無いなんて通用しないわよ」

「くっ、こいつは何をやったんだ?」

「リックはサイクロプスの幹部の一人の経理担当だったの。 そしてその幹部が、本部に上納すべき金をごまかして自分の闇口座に送らせていたのよ。 リックはそれに気付いたの。 そしてその幹部は口封じのためにリックの身柄を押さえようとしたわけ」

「何てこった」


 後ろからヘッドライトが、猛スピードで近づいて来るのが分かった。

 カエンは交差点を右に曲がった。 後ろの車も同じように右に曲がった。

「つけられているぞ!」グリムがカエン言った。

「分かっているわ」

 後ろの車は、隣の車線が空くと車線変更をして隣に並んだ。 グリムが倒したチンピラ達だ。 助手席に座った男が窓を開けると、笑いながら拳銃をつきだした。

「撃たれるぞ!」グリムが叫んだ。 カエンは思いっきりブレーキを踏んだ。 “キキーッ!”という音と共に車は急停止した。 銃声がして銃弾はフロントガラスの前をかすめた。 後ろの車も驚いたように急ブレーキを踏み、危うく追突しそうになった。 怒ったドライバーが抗議のクラクションを鳴らした。


 カエンは再び車を発進させた。 チンピラ達の車は左の車線で止まっていた。 カエンはハンドルを握りながら、懐から何かを取りだしてグリムに渡した。

「これを使って」

「これは・・・」それは22口径の拳銃だった。 グリムは素早く弾倉を確認した。青い車が再び隣に並び、男が拳銃をグリム達に向けた。 だがグリムの方が早かった。 銃声とともに男の額に銃弾がめり込んだ。 撃たれた男はドライバーの方へ寄りかかり、ドライバーはハンドルを取られて車がふらついた。 その隙にカエンが再び加速して青い車を引き離そうとした。 グリムはダメ押しに窓から腕を伸ばすと、フロントガラスを撃った。 フロントガラスは細かな蜘蛛の巣状に割れ、視界を失ったドライバーは中央分離帯に乗り上げて、車は車道に横転して止まった。


 20分後、グリム達が乗った車は、リックと呼ばれた男の家族が隠れている公園に到着した。 リックが辺りを見回すと、奥の暗闇で数人の人間が動いているのが見えた。 公園沿いの道路には黒い車が停まっていた。


「一歩遅かったようだぞ。 三人だな」とグリム。 リックが心配そうにグリムの顔を見た。

「今更、見捨てないよね」とカエン。

「助けてください! お願いします、妻と子どもを助けてください」

「自分で、命をかけて助けようとはしないのか」グリムは男を見つめた。

「私だって、できるならば自分で助けたい。 だけど私には無理だ・・・」

「分かった。 ここにいるんだ。 だが、無理だと諦めたらそこで終わりだ」 グリムは車を降りると闇の中に消えて行った。


 「こんなところに隠れていやがったのか。 オラァ、逃げられないぞ」 男が女性の腕をつかんだ。

「止めてください。 私たちは何もやっていません」

「やったのは、あんたの旦那だよ。 恨むなら旦那を恨むんだな。 さあ、来るんだ」

「止めろ、ママを放せ!」 7歳くらいの子どもが男の腕にかじりついた。

「痛えな! クソガキ!」 男が子どもを殴った。 男の子が地面に倒れた。 もう一人の男が、子どもを引き起こして捕まえた。

「おい、大事な人質だ。 とっとと連れて行くぞ」 別の男が言った。 その時、女性を捕まえていた男が、背後から男に首を絞められていた。 男は数秒後に気を失って倒れた。 その倒れる音に前を歩いていた男達が気付き、後ろを向いた。 だがその時には遅かった。 子どもの腕を持っていた男は顔面を殴られて、地面に崩れ落ちた。 残った一人も、何が起こったのかも理解出来ずにいるうちに、男の肘をみぞおちに受けて悶絶した。


「さあ、早く旦那さんが待っている」 グリムが女性に小声で言った。 女性は頷くと、子どもの手を取りグリムの後を走った。

「さあ、早く乗って!」 カエンが車のドアを開けた。

「ニーナ、ケビン、無事か?」 リックは妻の手を取った。

「あなた!」

「車を出せ!」グリムが言った。 グリムは後ろを気にした。

「車なら来ないわ。 私がタイヤを切り裂いておいたから」

「そうか」 カエンの機転にグリムは笑った。


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