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5-10 護衛(3)

 グリムは異変を察知した。 いつのまにか反対側の部屋にまた武器を持った人々が集まっているのだ。

(まずいな、これは。 最悪の展開になるかも・・・)


 会議の部屋に拳銃を持った男達が入って来た。

「残念だ。 こんな手は使いたくなかったんだがな。 ゲイツ、そんな不戦の協定ではサイクロプスの攻勢には通用しない。 奴らはお前等に触手を伸ばすだろう。 そしてお前等は屈服するに違いない。 そうなってからでは、我々との力の差は歴然となり、もう対抗出来なくなる。 もう一度考え直せ!」 髭の男が言った。

「くっ、断る!」とゲイツ。

「そうか、バカな男だ・・・」 小太りの男が、冷酷に覚めた目で言った。 男達が銃を構え、銃口を二人に向けた。 部屋の中は一気に緊迫した。


 その時、突然扉が開かれ、グリムが部屋に飛び込んで来た。

「待て! 動くな!」 グリムは左手に何か持っていた。 銃を持った男達は、グリムに銃口を向けた。

「死にたくなかったら、動くなよ。 これが見えるか。 俺がこのリモコンのボタンを押せば、このビルは吹き飛ぶ」 グリムは手に持った物をあげて見せた。

「何だと!」と小太りの男。

「地下駐車場にある俺達が乗ってきた車に、10キロのC4(プラスチック爆薬)が積んである。 このビル程度を爆破するには十分だ」 グリムがそう言うと、グリムの顔を見ていたクレイが追い打ちをかけた。

「ふっ、俺達だってバカじゃない。 何の準備も無しに来るとでも思ったのか?」

「クソッ、ハッタリだ! やっちまえ!」 小太りが命じた。 部下達はお互いに顔を見合わせ、躊躇した。

「待て!」 メガネの男が止めた。

「痛み分けだな。 お互いに退こうじゃないか。 話し合いは終わりだ。 我々はそちらが攻撃しない限り敵対はしない。 クレイ、帰ろう」 ゲイツは立ち上がった。

「おい、待ってくれ」と髭の男。 クレイ達はその声にかまわず部屋の外に出た。 男達もそれ以上何も出来なかった。 グリムとボスの護衛係は武器を回収し、周りに警戒しながら下に降りた。 途中の5階のフロアを通った時、グリムは中に見た顔を発見した。

(あれは確か、ビーナスのカエン。 なぜこんな所に?) グリムは不思議に思ったが、今はそれどころでは無かった。 周りに注意を戻した。 向こうも客が入った中で銃撃戦もできないと判断したのだろう、手を出して来なかった。


 車に乗って走り出すと、クレイは一息ついた。

「グリム、良い仕事だった。 爆弾はハッタリなんだろう?」

「ああ、とっさに思いついた」

「あのリモコンはなんだ?」

「車のスペアキーだ」 運転手に何かあった時のために、スペアキーを預かっていたのだった。

「あっ、ははは、愉快だ。 もし奴らがお前のハッタリを信じなかったらどうするつもりだったんだ?」 クレイは腹を抱えて笑った。

「ボスの一人を人質にとるつもりだった」

「あの状況でか?」

「ああ、やれたと思う」

「そうか。 ところで、何故後ろの部屋に人が隠れているのが分かった。 部屋に飛び込んできた時も、絶妙のタイミングだったぞ」

「詳しくは話せないが、俺は耳が良いんだ。 他の人が信じられないくらいに・・・」

「そうか・・・。 じゃあ、うかつにお前の悪口も言えないな」 クレイはそう言って笑うと、それ以上詮索しなかった。


「お前はどう思う? 今後奴らがどうでるか。 聞いていたのだろう?」

「しばらくは手を出して来ないと思う。 デメリットしかないからな。 交渉が決裂した以上、手を出せば全面戦争になりかねない。 そうなれば喜ぶのはサイクロプスだけだ」

「やはり、そう思うか・・・」

「気をつけなければいけないのは、かえってサイクロプスだろう。 奴らが言っていたように、サイクロプスはこちらを狙ってちょっかいを出して来るはずだ。 あるいはケルベロスとの間に火を点けようとするだろう」

「お前は参謀としても有能なようだな。 やはり俺の右腕として欲しいな」

「お断りだ!」 グリムはすかさず言った。


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