表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/157

4-7 マザー襲撃(2)

 翌朝、グリムは軍勢の移動で目を覚ました。 砦を攻撃する主力部隊だ。

(今日あたり他の砦からの軍勢とぶつかるはずだ。 だが奴らはそれを予測しているはずだし、位置も把握しているだろう。 急がねばならない) グリムは樹上で軍勢をやり過ごすと、静かに行動を開始した。


 二時間後、グリムは指揮所を捉えた。 南東に約2キロの場所である。 周辺には20人ほどの警備兵が取り囲んでいた。 それとそこから500メートルほど東には300人ほどの補給部隊と思われる軍勢が確認できた。

(さて、ここからが厄介だぞ。 侵入が気付かれたら水の泡だ) グリムは指揮所の近くまで続いている小川の中に入った。 水の中に入ることで体温を検知されないようにするためだ。 季節は初夏で水はまだ少し冷たかったが、凍えるほどではなかった。 川底は浅く足が着く程度だった。 グリムは頭に草の塊をのせ、水面から鼻から上だけ出るようにして、慎重に進んだ。


 その日の午後、グリムは指揮所まで約300メートルの所まで近づいた。 警備兵の位置を気にしながら、川から近くの林に入り茂みに潜んだ。 近くの大木に登り、枝の間から周辺の様子をうかがった。 指揮所は直接見ることは出来なかったが50メートルほど離れた場所に、同型のバックアップ車両の姿の一部が見えた。 グリムは、警備兵の配置と人の気配の有無で、そちらがバックアップであることを確信した。 更にその近くに、兵達の宿舎としての大型テントが幾つか設営されていた。


 グリムはそれから3時間、兵達の動きを観察すると供に、じっとチャンスが訪れるのを待った。

(チャンスは一回きりだ。 だがきっとやれる) グリムは自分自身に言い聞かせた。 そしてそのチャンスはやって来た。 警備兵の一人がグリムのいる木の下までやって来たのだ。 警備兵が木の側の茂みで、立ち小便をしようとした時、首に紐のようなものが絡みついた。 グリムが植物の皮を剥いで作った紐を兵士の首にかけ、同時に紐のもう一方を掌に巻いて枝から飛び降りた。 兵士は何が起きたのかも知る間もなく首を絞め上げられて意識を失った。 小便だけが辺りに飛び散り、兵士のズボンも黒く濡らした。 そこからは時間の勝負だった。 グリムは兵士の戦闘服を素早く脱がせ、自分が着た。 次にナイフの切っ先で、男の左手の甲からチップのカプセルを取り出すと自分のポケットに入れた。 兵士が万一息を吹き返した時のことを考え、素早く紐で手首を縛ると、体を茂みの中に隠した。 そしてヘルメットをかぶり、装備を身につけると、何食わぬ体で歩き出した。 その間、10分とかからなかった。


 グリムは指揮車がある方へ歩いて行った。 すると途中で警備兵とは違う兵士と出会った。 その兵士は驚いたような顔をして言った。

「どうしたんだ?」 グリムの股間を指さして言った。

「あっ、いやあ、恥ずかしいな。 向こうで立ち小便していたら、草で滑ってこの有様だ」

「ははは、ドジだな。 他の奴に見つかる前にサッサと替えて来いよ」 そう言うと兵士は去っていった。 グリムは胸をなで下ろした。 グリムはそのまま、テントの一つに入ると中を一瞥した。 武器と物資が置かれていた。 グリムはリュックを見つけると、それに手早く爆薬、予備の弾倉、医薬品、携行食糧などを詰め込んだ。 そして奥の隅に置いてあったジェットウイングを見つけると、燃料を確認しそれも持った。 そして回りに人がいないことを確認し、外に出た。

(もうすぐ日が暮れる。 タイミングとしては今だな) グリムはリュックとジェットウイングを指揮所の近くの茂みに隠すと、薄暗くなる森の中に消えていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ