表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/157

16-3 大切なもの

 トキオのあるクラブ

 カエンは赤いドレスで、少しガラの悪い若い男を、接客をしていた。

 

「だからここはそう言う店じゃないのよ。 触らないで!」 カエンは男の頬を叩いた。

「何をしやがる、俺は客だぞ! 十七、八の娘じゃあるまいし、少しぐらい触ったから何だ」 男はカエンを殴ろうとした。 そこへマネージャーが現れカエンに言った。

「シェリーさん、一番のお客さんからご指名です」 カエンはこれ幸いと、そそくさと席を立った。

(誰だろう?) まだこの店に入って一週間も経っていない。 そんな贔屓の客などまだ付いていないし、心当たりが無かった。 しかも一番はVIP席でスモークのガラスで完全に仕切られているのだった。


 カエンが中に入ると、そこには四人の男がいた。 ソファーに座った男が二人と、部屋の隅に立ったボディガードと思われる男が二人だった。 カエンは最初、薄暗くて顔が良く分からなかった。 一人は薄暗い中なのにサングラスをしていたからだ。

「ハーイ、シェリーです。 ご氏名ありがとうござい・・・・」 カエンは男達の正体が分かって、声が出なくなった。 右に座っていたのは、エクリプスのボスで現在はこの街のドンと呼ばれているクレイ・ローガンだった。 そしてその左にいたのがグリムだった。

「どうして・・・・」

「カエンが姿をくらますから・・・・」 グリムはサングラスを外した。

 クレイが立ち上がった。

「まあ、後は二人でじっくり話してくれ。 俺達は席を外そう」 そう言うと、二人のボディガードに退出を促した。 二人はユーゴのボディガードだったため、ユーゴの顔を見たが、ユーゴが頷いたため外に出た。


 二人は座ったまま黙っていた。 カエンはうつむいたままだった。

「一緒に来てくれ。 セシールが待っている」

「私は行けないわ・・・」

「なぜ?」

「そんなこと分かっているじゃない。 もうグリムとカエンじゃいられないのよ。 あなたは王様なのだから」

「そんなことは関係無い。 俺はオレだし君は君だ」

「そうは行かないわ。 あなたはいずれ良家のお嬢様と結婚して立派な王様になるのよ。 私が側にいられる訳がないじゃない」

「俺には君が必要だ、そしてセシールにも」

「・・・・・」

「君は以前、ビッグリーフに渡るときに、俺達は家族だと言ったね。 俺達は家族なんだよ。 セシールはカエンのいるところが家だって言って、王宮を出たがっている」

「私だってセシールと暮らしたいわ、でも・・・」

「カエン、君が必要だ。 俺を支えて欲しい」

「私には、王妃にはなれない」

「君は俺の背中を押しながら、君は逃げると言うのかい?」

「でも・・・・」

「俺は、父親と同じ過ちはしない。 お願いだ。 愛している」

「私もよ・・・」 カエンは泣き出した。 グリムはカエンを抱きしめた。

「分かったわ」

「ありがとう」

「じゃあ、早速行こう。 近くにヘリを待たせているんだ」 グリムは立ち上がろうとした。

「待って、すぐには行けないわ。 色々とやらなくちゃ。 部屋も借りたばかりだし・・・」

「ダメだ、また一人で考えたら、姿をくらましかねないだろ。 それにセシールに約束したんだ。 今日中にカエンを連れて帰るってね」

「強引ね」カエンは涙を拭くと笑った。


 二人がボックスから出てくると、すぐ側の席でクレイが飲んでいた。

「話しはまとまったかい」

「ああ、ありがとう」

「いいってことよ。 それよりそんなに大事なら、二度と手放すなよ」 クレイはユーゴの肩を叩いた。 それを見てボディガード達が反応した。

「ああ、そうするよ」 ユーゴが問題無いとボディガードを手で制した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ