表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/157

15-20 対決(6)

 「待って!」命令する女の声が聞こえた。 男達は銃を構えたまま、身じろぎもしなかった。 兵の後ろから、同じ戦闘服を着た女が入って来た。

「撃ってはダメよ! その人は次の国王様よ」 そしてヘルメットのフェイスシールドを上げた。 そこにいたのは見知った顔だった。

「クレアか・・・」

「ユーゴ、また会ったわね。 私を殺す?」 クレアは微笑んだ。

「冗談を言っている場合か。 だが助かった」 グリムは拳銃を下ろした。

「いえいえ、助かったのはこちらの方よ。 死神に睨まれたら生きてはいられないわ」クレアは兵の腕に手をかけて銃を下ろさせた。

「クラウスを追っている。 見なかったか?」

「それなら、他の者が少女を抱えて上に上って行くのを見たと言っていたわ」

「えっ、小型の戦闘艇で脱出を図っているのでは無いのか?」

「それはもう我々が押さえているから無理ね」

「分かった、ありがとう」

「待って! あなたはもう重要人物なのだから、無茶はしないで。 後は我々に任せて!」

「そうは行かない。 これだけは自分で決着をつける」

「分かりました。 ではこちらの制圧はお任せください」


 グリムはクレア達から別れると、クラウスが上って行ったという非常階段を上って行った。 そして緊急脱出用のハッチを開けると、宇宙船の上に出た。 ひんやりとする微風が頬をなでる中、闇の中に立っている男が目に入った。 そしてその隣にはセシールが立っていた。


「やっと来たか。 決着をつけよう。 お前が勝つか、私が勝つか」

「セシールを離せ!」

「良いだろう、もうこんなガキはどうでも良い」 クラウスはセシールから手を離すと、もう一方の手に握っていた何かを口に入れると、ガリガリと噛み砕いて呑み込んだ。 セシールはその間にグリムの方へ走ってきた。 グリムはセシールを抱きかかえた。

「良かった。 怪我はないか?」

「うん、グリムが必ず来てくれると信じていたよ」

「もう少しで、全て終わる。 危ないからさがっているんだ」 グリムはセシールを下ろすと、諭すように言った。


 グリムがセシールを遠ざけて、クラウスに向うとその姿に驚いた。 上半身は筋肉の塊のようになり、服は破れて上半身がむき出しになっていた。 顔も端正だった顔立ちが、ごつい鬼のような顔になっていた。

「クレアル社の薬を飲んだのか? バカなことを・・・」

「行くぞ!」 クラウスは見かけからは信じられないほどのスピードで距離を詰めると、グリムの顔面に拳を叩き込んだ。 グリムは反射的に首を回して攻撃を殺したが、完全には防ぎきれず後方に吹き飛ばされた。 クラウスはグリムに反撃の余裕を与えず攻撃をたたみかけた。 グリムは宇宙船の外壁上を転がりながら、攻撃を避けた。 クラウスの拳は、ミサイル攻撃にも耐えられるように設計された外壁を砕いていった。

「どうだ、私を机に座っているだけの男だと見くびるなよ」 クラウスの攻撃は更に激しくなった。 グリムも応戦するが、足場が悪い上に滑りやすく、拳に力が入らなかった。


 グリムは腹にクラウスの拳を受けて、10メートル以上吹き飛ばされた。

(クッ、あばらを何本かやられたか・・・) グリムはセシールの方を見た。 セシールは震えながら、グリムの方を見ていた。

「まだだ、お前には何度も煮え湯を飲まされた。 そう簡単には殺さないぞ」 クラウスは燃えるような赤い目を輝かせて、グリムに近づいて来た。 腕には鎌の様な物が生えていた。

「お前の腹を引き裂いてはらわたを引きずり出して、もがき苦しんでいるところで、あの娘の首をかき切ってやる」 クラウスは笑いながら腕の鎌を振り上げた。

「負けないで、お父さん!」 セシールが泣きながら叫んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ