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3-6 魔獣襲来(3)

 村の西の荒れ地の真ん中にある木に、一匹の山羊が繋がれていた。 山羊は回りの雰囲気の異常さに震え、「メエー、メエー」鳴いていた。 荒れ地の側までムスガルの群れが出てきた。 しかし山羊には近づこうとしなかった。 ムスガル達は「グフッ、グフッ」とまるであざけるように、指を指すが近づきはしなかった。 魔獣達は知っているのだ。 日中、村人が木の回りに落とし穴を掘っていたのを、そして遠巻きに村人達が潜んでいることを。 まるでお見通しだと言っているかのように、山羊を無視して、村の中を東に向った。

(やはりグリム言うとおり、こんな単純な罠にはかからないか。 少しでも減らしておきたがったが、頼むぞグリム) ゼオルは魔獣達が通り過ぎるのを見送った。


 村の東、放牧場

 「グリム、やはり西の罠は素通りしたようだ。 もう少しでこちらに来るぞ」 戦士の一人が言った。

「そうですか。 では予定通りお願いします」 グリムは放牧場の隣に建つ畜舎の屋根に腹ばいになっていた。 村中の家畜は鳥を除いて放牧場と畜舎に集められた。 魔獣達の襲撃から守るためだった。 だが奴らは見ていた。 家畜が東側に集められているのを知っていたのだ。


 グリムの作戦はこうだった。 村人の女、子ども、老人は村長の邸に避難する。 ライカイの邸は広く、回りが高い塀で囲まれていたからだ。 そして残りの村人で、家畜の移動、罠の設置、障害物の設置を行なった。 まず村の西側で落とし穴を堀、囮の山羊を繋いだ。 これは奴らの関心をそこに引きつけるためだった。 もちろんそこで罠にかかるようだったら、ゼオルが率いる一団が弓で攻撃し、敵を少しでも減らす。 だが賢い奴らは罠にはかからず、家畜のいる村の東に向うだろうと予測した。 魔獣の一団は、村の中を通って東に向うだろう。 その時に広く分散させないために、脇道に通じる道は荷馬車や戸板、木材などで出来るだけ塞いだ。 戦士達はいくつかのグループに分かれ、村の家の屋根の上や路地に潜んだ。 狙いはあくまで群れのボスで、村の中央を通る時に屋根から網をかぶせ、身動きがとれなくなったところを矢の斉射を浴びせて仕留めると言うのが、作戦の概要だった。 しかしグリムの作戦はアッサリ崩れた。


 グリムの一つ目の誤算、ボスの大きさだった。 群れの中で際立って大きいとは聞いていたが、そのボスは身長5メートルほどあった。 とても同じ種族とは思えない大きさである。 戦士達は息を飲んだ。 網を持った戦士は、ボスを目の前にしても網を投げることが出来なかった。 何故なら、これでは網をかけてもすぐに破られて、動きを止めることなど出来ないだろうと思われたからだった。


 村の東端の畜舎の上にいたグリムは、愕然とした。 魔獣達の中に、エリオラとペックが捕らえられていたのだった。 ペックの腕にはシックルが抱えられていた。

(なぜ、エリオラとペックが捕まっているのだ?) これがグリムの二つ目の誤算だった。


 一時間ほど前、ライカイの邸

 「母ちゃん、シックルがいない。 オイラ、探してくる」 ペックはエリオラの制止を聞かず、邸を飛び出した。 エリオラもすぐに後を追ったのだった。 ペックが家の近くでシックルを見つけた頃、ちょうどムスガル達が村に入り始めた時だった。 そしてペックと後を追ったエリオラは捕らえられてしまったのだった。


 「クソッ、どうする」 グリムは対応策を考えた。 しかし、二人を人質に取られていては攻撃が出来ない。 ムスガル達も何かあると感づいたようで、二人を前面に押し出してきた。 エリオラの腕がねじり上げられ、エリオラが声にならない悲鳴を上げた。 それを見たペックが止めさせようと暴れ、別のムスガルがペックを殴った。

 それを見たグリムは、怒りが熱くこみ上げてきた。 隣にいた若い戦士がグリムの異変に気がついた。


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