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15-15 対決(1)

 グリムはセーフハウスで気がついた。 カエンが傷の治療をしていた。

「全く、いつも無茶するんだから。 三回くらい死んでいてもおかしくないわよ」

「すまない、またセシールを助けられなかった・・・」

「セシールは死んだ訳じゃない。 まだチャンスはあるわ」

「奴らは北に向った。 行きそうな場所を調べられるか?」

「任せて、これが済んだら調べて見るから。 大丈夫、必ず見つけるから。 だから今は休んでちょうだい」

「ありがとう」 グリムは血を流しすぎたせいか、体がだるかった。 そして睡魔が襲ってきた。


 グリムが再び目を覚ました時は、翌日の昼だった。 体を起こすと、まだ痛みは残っていたが、体を動かすことはできた。 傷はほとんど塞がっていた。

 食事をしながら、今後のことについて話し合った。


「今、世間はユーゴ王子とは何者だと騒然となっている。 メディアに出る必要があるでしょう。 セルタスからも電話が何度もかかっています」とリオン。

「私はセシールの救出を優先させる」

「あなたは次の王になられる方です。 危険な事は控えてください」とモーリス。

「そんなものはクソ食らえだ。 セシールも救えず王になどなりたくもない。 カエン、クラウス達が潜んでいる場所は割り出せたかい?」

「確信があるわけではないのだけれど、一カ所気になるところがあるの」

「どこだ」

「王都から北東に370キロほどのところに、軍が管理している一帯があるの」

「ああ、聞いた事がある。 新兵器の開発をおこなっているのではないかと言われているエリア35と呼ばれているところだな」

「実際はどうなの? もしそこが目的地だったとしたら、何故奴らはそんなところへ行ったの?」

「俺も知らない。 だが、一つ思い当たることがある」

「宇宙船ですか」リオンが言った。

「そうだ。 もしそこにアルクオンの遺跡のと同様の宇宙船があったとしたら・・・」

「じゃあ、クラウスは核を使う気だと言うの?」

「それは分からない。 だがもしそれを手中にすれば、軍がいくら攻めて来ても撃退することが可能だろうし、国民を人質に無理難題を言ってくることも考えられる。 そして一番恐れるのは、やけになったクラウスが一気にアルクオンの王都に核攻撃を仕掛けることだ」

「それは大変だ。 それだけは絶対に阻止しなければならない」とキラン。

「そうだな・・・」グリムがそう言った時、モーリスの電話が鳴った。


「セルタス殿だ。 あなたと話しがしたいそうだ」 グリムが換わった。

「ご無事でしたか、安心いたしました。 クラウスが、ユーゴ様が亡くなられたと、言っていたので心配していたのです」

「クラウスと話しをされたのですか?」

「先ほど。 奴らは、我等の先祖が乗ってきた宇宙船を奪取しました」

「クラウスは何を要求してきたのですか」

「『王国の正統な後継者は自分しかいない。 王国は自分のものだ。 ユーゴなど認めない』そう主張しています。 その上で、テレビで発表した事は全て嘘であることを発表すること。 次に閣僚は総辞職して、実権を渡すこと。 これを実行しなければ、セルタス派を反乱軍とみなし、実力行使をすると言っています」

「実力行使とは・・・」

「王都の主要庁舎や閣僚の邸を、直接攻撃すると言うことでしょう」

「そんなことをすれば、王都は大変なことになり、国民の被害も相当な数になるぞ」

「どうするつもりですか?」

「軍を向わせて、阻止します」

「待ってください。 軍の通常装備では、いくら兵を送っても撃退されるでしょう。 それに、セシールが捕らえられたままです。 セシールの命が危険にさらされます」

「しかし、奴らの要求は到底飲めません」

「私が行きます」

「いけません、ユーゴ様は重体とお聞きしました。 今あなたを失うわけには行かないのです」

「大丈夫です。 これは私自身が、クラウスと決着をつけなければいけないことだと思っています」

「しかし・・・・」

「とにかく、私は行きます。 セルタス殿、軍は誰が率いるのですか?」

「205特殊作戦部隊のアッカ・メイスン部隊長です」

(アッカか・・・)

「セルタス殿、部隊長に会わせてください。 エリア35の情報を得たい」

「分かりました」 セルタスは承服しかねたが、グリムの決意を感じそう答えるしか無かった。


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