15-11 セルタスの戦い
セルタス達はテレビ局に到着するとすぐにスタジオに通された。 セルタスが到着前に、テレビ局の社長に電話をかけていたのだった。 社長はセルタスの考えに同意し、すぐに会見の内容を生で放送することを約束したのだった。
テレビ局は臨時ニュースとして、放送中の番組の途中に割り込ませた。
「私が逮捕され、取り調べを受けている件について、全ての真相をお話します。 全ての始まりは、5年前、前王の病床から始まります」 セルタスは、テレビカメラの前で語り始めた。 セルタスは、前王から現国王と供に聞いた話、ユリウス王が前王の遺言を無視して即位したこと、現国王がそれを後悔しユーゴに次の王位を継がせたい意向であることを話した。 話しの内容に驚きながらも局の女性MCは質問した。
「それでは一連の事件は、それを知ったクラウス王子がそれを阻止するために、先手を打ってセルタス大臣を逮捕したと言うことですか?」
「その通りです」
「では何故それを裁判で申し上げ無いのですか?」
「事件は最初からえん罪です。 私の有罪ありきなので証拠もねつ造されています。 裁判では直接事件と関係無いことは、話すことはできませんし採用もされません。 ですからこのような強硬手段を採ったのです」
「そうはおっしゃいますが、証拠はおありなのですか?」
「もちろんあります。 アリオン王の病床での会話の音声データです。 その他にも、ユーゴ様の王子認定書とユリウス王から預かった、次期王としてユーゴ王子を指名する旨の文書です。 ですが、クラウス王子はねつ造された物だとして認めようとはしないでしょうが」 そう言うと、アリオン王の会話を再生した。
アリオン王の音声データを停めると、黙って聞いていたMCも事の重大さに気付き、少しの間言葉を失っていた。
「では、セルタス殿はこれからどうされるおつもりですか?」
「私は潔白です。 そして今もこの国の宰相です。 私は私のやるべき事を行ないます。 まずクラウス王子の国防大臣を、今をもって解任します。 そしてクラウス王子を、国家を混乱させ私物化しようとした罪で、逮捕を命じます」
「そうは申しますが、クラウス王子は軍の実権を握っておられます。 そう簡単に従うでしょうか?」
「そこで私は、国を守るために命をかけて戦っておられる全軍の兵士に申し上げたい。 ここであなた方が正しい選択をしなければ、この国は二分され互いに殺し合うことになりかねません。 そんな事は私も王も望んでおられません。 そして全閣僚も国民の皆様も私を信じて、落ち着いた行動をお願いします」
これで、ネットでは騒然となった。 それまでにカエンの流した情報によって噂として流れていた話しが、事実だったとなったからだ。 そしてこれでクラウス王子の立場が一気に悪くなった。 それと同時にセルタス派が一気に息を吹き返した。 この放送の後に、セルタスが各大臣に個別に電話をして、支持を取り付けていったからだった。
クラウスの邸
執事が慌ててクラウスの部屋にやって来た。
「旦那様、大変です。 テレビでセルタス大臣が会見を行なっております」
「何だと!」 執事がすぐに部屋のテレビを点けた。 そこにはセルタスの姿が映り、アリオン王とユリウス王の会話の音声が流れていた。
「何と言うことだ。 お終いだ・・・・」 クラウスは力なくイスに座った。
「まだ終わりではありません。 まだ挽回できます」そう言って部屋に入って来たのは、アレンだった。
「どうするというのだ。 なりを潜めていたセルタス派はこれでまた向こうに鞍替えするに違いない」
「今、ユーゴが娘の奪還のために、ここへ侵入してきました。 セルタスの拠り所はユーゴです。 もしここでユーゴが死んでしまったら、奴の計画はお終いです」
「そうか、その通りだ。 奴を殺せ、必ず殺すのだ!」 クラウスはアレンに厳命した。




