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15-10 もう一つの救出作戦(1)

 クラウスの邸、セシールの部屋

 セシールには違和感があった。 今日は朝から邸中が何となく騒がしい。 警備の人数も増えているし、普段は全員は持っていない銃も持っている。

(何かおかしい。 今日は何かある。 リリアもソワソワしている)

「シックル、変だよね?」 セシールはソファーで隣に丸くなっているシックルの頭をなでた。 シックルはセシールの顔を見たが、何も心配などしていないようにあくびをするとまた寝た。


「リリア、今日は何があるの?」

「私にも分かりません。 たた、今日は絶対に庭に出てはダメよ」


 邸の南の庭

 「バサッ」という風切り音と共に、突然空が暗くなったかと思うと、庭に巨大な黒い魔獣が舞い降りた。 それを見た警備員達も初めて見る魔獣に驚き、すぐには反応できなかった。 魔獣の背中から、自動小銃を背負った三人の男が降り立ち、庭の彫像や木々の陰に隠れた。 警備員達は警笛を鳴らし仲間を呼ぶと、銃を構えて魔獣に向って発砲した。 グレイブは大きく咆哮すると、警備員達を踏みつようとして追い回した。 障害物に隠れたキラン達は、時折警備員の方へ向って発砲した。 彼らの目的は敵兵力の削減ではなく陽動、別のルートから侵入するグリムの時間を稼ぐことだった。


 その頃グリムは、北側の塀の前にいた。 中の気配を探り、警備員の位置を把握すると、深呼吸をした。 グリムはジャンプすると、10メートルはあろうかという塀を飛び越えた。 空中で体を反転させると庭を一瞥して庭の状況を確認した。 警備員は3人、他に3頭のドーベルマンが見えた。 犬たちはグリムに気付き、盛んに吠え立てた。 グリムは庭に着地すると、すぐに警備員達の銃撃を受けた。 それを横に転がりかわした。


 警備室

 アレンは監視カメラを見ていた。

「来たか、やはり南は陽動か。 それでは歓迎してやるか」そう言うと操作パネルの赤いボタンの一つを押した。


 グリムは一気に庭を駆け抜けようと走り出した。 すると右の斜め前から赤い光が見えた。 次の瞬間、右の腕に熱さと痛みを感じた。 すかさず横に転がり、木の陰に隠れた。

(レーザーか、厄介だな・・・) グリムの上腕に火傷ができていた。 グリムが庭を注視すると、あちこちに筒状の監視カメラのような物が設置されているのが見つかった。

(こんなところでもたつく訳にはいかない) グリムは念動力でそれらを次々に破壊していった。 その間にも警備員達は銃撃を加えていた。 更に警備員の制服を着ていない者達が5名現れた。

(クソッ、レッドアイズだな。 いずれも何らかの特殊能力を持っているはずだ)


 セシールは外の異変に気付いた。 窓によると外では銃声と、犬の吠え声が聞こえた。 庭のずっと奥、塀際に動く影が見えた。

「グリムだ! グリムが助けに来た!」 セシールが言った。 窓を開けてベランダに出ようとした。

「ダメよ、セシール。 危険だわ、下がりなさい」 リリアはセシールの肩に手をかけると優しく部屋の中まで下げた。

「グリムが来たのよ」セシールは“邪魔しないで”と言わんばかりにリリアを睨んだ。

「だから、信じて大人しく待つのです」


 グリムがどうしたものかと思案していると、3頭の犬たちが襲いかかろうとして迫ってきた。 グリムは拳銃を持っていたが、犬を撃つのに躊躇した。

「下がれ!」 グリムはとっさに叫んだ。 魔獣が従うのならば、もしかしたら犬にも有効なのではと考えたのだった。 すると、犬たちは急に立ち止まって、フリーズした。 そして急に体を震わせ出すと、「キャン」と鳴いて一目散に3頭とも走り去ってしまった。


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