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3-5 魔獣襲来(2)

 ライカイの邸

 グリム達が部屋に入ると、既に20人ほどの村人が集まっていた。 村長のライカイはもちろん、顔役やゲリオル、他は戦士達の中でも班長と呼ばれる幹部達だ。 グリムは何故自分が呼ばれたのか分からなかった。 戦士として認められたとは言え、新参者が参加して良い場ではないように思われたからだ。 事実、顔役の中にはグリムを見て顔をしかめた者もいたからだ。 グリムは部屋の後ろの隅に座った。


 「皆の衆、朝から集まってもらって申し訳ない。 緊急事態だ。 今朝方カウマの畑にムスガルが出た」 ライカイは緊張気味に言った。

「ムスガルだって!」顔役の一人が驚いて言った。

「数は?」

「3体だ。 こいつ等は偵察だな。 だがこれで奴らに狙われるのは、まず間違い無いだろう」ゼオルが言った。

「どうするのだ?」 顔役の男が言った。

「もちろん、戦う」

「具体的にはどうするのだ?」

「それをこれから決めるのだ」

「ムスガルはクムの実の汁が嫌いだと聞くぞ。 その汁を村のあちこちに塗れば嫌がって近づかないのでは?」 班長の一人が言った。

「そんなものは迷信だ」とゲリオル。 その後もいくつか意見は出るが、撃退のための有効策は見出せないでいた。 手詰まりになったゼオルが、グリムを見た。 グリムは、じっと黙って何か考えていた。


 「グリム、何か意見はないか」 ゼオルがふった。 グリムは驚いたように顔を上げた。 皆がグリムに注目した。

「案が無いわけではありませんが・・・・」グリムはムスガルを実際に見たこともないので、自分の案に自信が無かった。

「言ってみてくれ」とゼオル。

「群れということは、必ず統率している奴がいるはずです。 群れ全体を撃退しなくても、率いている者を倒せれば奴らは撤退するはずです」

「分かっていないな。 確かにその通りだが、ムスガルのボスは一際体も大きく強い。 知恵も回るし、アクロの力も使える。 群れの防衛戦を突破してボスを倒すなんて無理だ」 班長の一人が言った。

「何か策があるのか?」とゼオル。

「こうしてはどうでしょう」 グリムが自分の策を説明した。 皆の顔色が変わった。

「それならば、もしかしたらうまく行くかもしれないな」さっき否定した班長が言った。

「どうだろう、皆の衆。 このグリムの策でやってみようではないか」とライカイ。

「そうだな。 これが最も良いように思える」顔役達も賛成した。

「よし、決まりだ。 グリム、お前の策で行く。 皆に具体的に指示をしてくれ」

「わ、分かりました」 グリムは戸惑いながらも承知した。


 グリムがやらなければならない項目を上げると、ライカイとゼオルは急いで皆に役割を割り振った。 それからは村中が一気に慌ただしくなった。 いつ襲撃を受けてもおかしくないのである。 準備出来る時間は限られていた。 グリムの読みでは、襲撃は夜になってからだと考えた。 奴らは夜目が利くと言うことだ。 それに火もそれ程恐れないとなれば、夜の方が有利だからだ。

(時間がない。 夕方までには準備を完了させなければならない)


 村人総出で様々な準備と避難がなされた。 何とか夕方までには一応の準備が整い、村の戦士58名は全員配置についた。 そして丁度その頃、村の北西の森の木の上には、赤い光が三つ並んだものが、いくつもみられた。 そして日が沈むと、木の上の一頭が「ホホウ、ホホウ」と山に向って声をかけた。 しばらくすると、森の木々がザワザワと動き出し、闇の中に緑の毛むくじゃらのムスガルの群れが現れた。 赤い三ツ目を光らせた、約100頭の魔獣は手に棒や剣、槍を持っているものもいた。 そして後ろの方からボスが現れた。


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