表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/157

15-5 救出作戦(2)

 三日後、二つの作戦についての検討会議が行なわれた。

「まずセシールの救出ですが、クラウス王子の邸への侵入方法については、どうですか?」リオンが聞いた。

「まあ案としては、ほぼまとまりつつあります。 侵入は私とグレイブでやります」

「そんな無茶だ!」とキラン。

「レッドアイズも待ち構えているんですよ」とリオン。

「ピンポイントで急襲し、セシールを奪取して離脱するつもりです。 まあ細部はもう少し練る必要はありますが・・・」

「セルタスの方はどうですか?」

「警察の収監所は警備が厳重だ。 この人数で襲うのは無理だ」とモーリス。

「近々、裁判が開かれると聞いているわ」とカエン。

「その移送の途中を襲うのか?」とモーリス。

「そうね、やるにはそこしかないわ」

「なるほど、だが事前に移送ルートが分からないと準備が出来ないぞ」

「護送チームは幾つかルートを考えて、当日になるまでルートは明かさないだろう。 こちらは幾つかルートを想定し、そのルートごとに待ち伏せポイントを決める必要がある」グリムが言った。

「なるほど、裁判日はいつだ?」

「9月5日、6日後ね」

「ではそれで襲撃プランを練ろう」とモーリス。

「あまり時間はないぞ」とキラン。

「それと、そうなるとセシールの救出作戦の決行日が問題ですね」とモーリス。

「なぜ?」とカエン。

「セシールの救出が先だと、我等の活動が敵にバレて、セルタス奪還が難しくなる。 逆もまたしかりだ」

「じゃあ、同時に行なわなければいけないってこと?」

「そうだな、そして同時に成功させる必要がある。 セルタスの奪還が成功しても、セシールの救出が失敗、あるいはグリムに何かあって死亡でもしたら、全てが水の泡だ」

「どんどんハードルが上がっていないですか」とリオン。

「セルタスの奪還作戦を成功させるには、足りないものがある」グリムが言った。

「何ですか?」とキラン。

「スナイパーだ。 しかも一流の腕を持つ者が要る」

「私は弓が得意です」 キランの部下のトーラが言った。

「弓では距離が限定されるし、難しいだろう」

「どうするのですか?」

「少し考えさせてくれ」とグリム。


 グリムは翌日の夜、ある人物を訪ねていた。

「本当に生きていたのか・・・・」 キールは驚いた顔で言った。

「幽霊ではないぞ」 銃口をキールに向けながら、グリムが言った。

「今度こそ私を殺しに来たのか。 いいだろう、撃ちなさい。 私は後悔していたのだ。 息子のように思っていたお前を、自分の手で殺さねばならなかったことを・・・」 そう言うと、キールはイスに座った。 グリムはイスには座らなかったが、キールの側に近づいた。 銃口は下げなかった。

「あんたに復讐するために、ここに来たのでは無い」

「ならば、目的は何だ?」

「あんたの力を借りにきた」そう言うと、グリムは銃を下ろした。

「何だって、私はお前を殺そうとしたのだぞ!」

「あんたは命令に従っただけだ。 軍人にとって命令は絶対だ。 違うか?」

「その通りだ。 私に選択肢はなかった」

「だが、思い出して欲しい。 我々は国に忠誠を誓ったのであって、クラウスに忠誠を誓ったのでは無いはずだ」

「何が言いたい。 私にクラウス王子を裏切って、セルタス派につけと言うのか?」

「このまま戦争を続けても、カーセリアルにとってもアルクオンにとっても不幸な結末しかない。 それはあんたが一番良く分かっているはずだ。 軍は国を守るためにあるはずだ。 このままクラウスのやり方では、国が滅ぶぞ」

「・・・・・・」

「俺を殺そうとしたことは、もう良い。 力を貸してくれ!」

「何をしようとしている。 私に何をさせようと言うのだ?」

「セルタスを奪還する」

「なるほど・・・」 キールは驚かなかった。 逆にそれでグリムの考えている事を理解したようだった。 キールはグリムの目を見つめた。

「一つ聞きたい。 ユーゴ、お前はこの国を背負う覚悟があるのか?」

「・・・・・」今度はグリムが黙ってしまった。

「お前のやろうとしていることは、突き詰めればお前が国を治めるということだ。 お前にその覚悟があるのなら、協力しよう」

「俺は、自分に国を治めるなんてできるとは思っていない。 だが、このままクラウスに任せてはいけないと言うことだけは言える。 もし俺のような戦う事しか能のない者でも、それでもこの国が必要としてくれるのなら、何にでもなろう」

「そうか、分かった。 具体的なプランを聞こう」


 それから10分ほど話して、グリムはキールの家を出た。 キールはドカッとイスに座ると大きくため息をついた。 目をつむってしばらく考えていた。 そして電話をかけた。 男が出るとキールは言った。

「先ほど、ユーゴが来ました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ