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15-4 救出作戦(1)

 グリム達がコーヒーを飲んで一息ついたところで、モーリスがきりだした。

「それじゃ、そろそろ作戦を立案するために、お互いの情報共有をしましょう。 私が受けた命令は、グリム殿の娘さんの奪還と王位に就くことに全面的に協力しろと言うことです。 女王様は、我々が万能で何でも出来るとお考えらしい」 モーリスはため息を一つついた。

「何度も言っているが、私は王位には就けない。 それは考えなくてかまわない」

「そうはいきません。 陛下の意向は絶対です」とキラン。

(何を言っても無駄か・・)

「ふう、分かりました。 だが、セシールの救出を優先してください」

「それについてですが、娘さんの居場所はこちらでつかんでいます。 クラウス王子の邸に軟禁状態です。 拘束や虐待などを受けることもなく、健康状態も良いようです」

「なぜ、そんなことが分かるのですか?」カエンが疑わしそうに聞いた。

「それは、仲間が潜入しているからです」

「なるほど」

「元々、今回の戦争の鍵を握るのがクラウス王子であると考えた我々は、王子の動向を探ろうと、仲間を潜入させていたのです。 そこへ二カ月ほど前に少女が連れて来られました。 それがセシールです。 初めの頃こそ元気がなく塞ぎ込みがちでしたが、最近は邸の者に逆らうこともなく、何かをじっと待っているかの様だということです」

「賢い子だわ。 きっとグリムが助けにくると信じているのね」

(待っていろセシール、もう少しだ)

「彼女は当面、危害を加えられると言うことはないと考えられますが、救出は困難だと思われます」

「警備が強固と言うことか?」

「その通りです。 広い邸は高い塀で囲まれており、機械警備の他に警備犬、警備員は常時30人ほどいます。 建物のあちこちには仕掛けも設置してあるらしいです。 更にレッドアイズと思われる者達が10人以上いるとのことです」

「レッドアイズを配置していると言うことは、こちらの襲撃は想定内ということだな」

「そうです。 何の用意もなく踏み込めば、全滅でしょう」

「こちらの使えるアセットは?」 リオンが聞いた。

「武器は調達できます。 人的には私を含め5人です。 一応銃は扱えますが、戦闘のプロというわけではありません」

「我々を含めても11人か、厳しいな。 やはりもっと兵を連れて来るべきだったか」とキラン。

「邸の図面は手に入りますか?」とグリム。

「簡単な見取り図なら。 精密な図面となるとセキュリティが厳しくて・・・」

「私がやるわ」とカエン。

「では図面をもとに、具体的な計画を考えてもらうとして、もう一つの事案の方に移りましょう」


「グリム殿をカーセリアルの王にするには、ユリウス王による王子認定と後継宣言が必要と考えます」とリオン。

「そうです。 しかし、現国王の病状は重く、ながく持たないと考えられています」

「グリム殿が国王にお会いして、お墨付きをいただいてそれをマスコミで公表するのはどうでしょう」とリオン。

「失敗するでしょう。 第一に国王にお会いすること自体、困難でしょう。 仮に面会できてお墨付きをいただけたとしても、クラウス王子はそんな物はねつ造したものだとして握りつぶすでしょう」とモーリス。

「今、セルタス派はどうなっていますか?」

「セルタスが逮捕されて以来、沈黙しています。 クラウス王子の切り崩しにあって、鞍替えしている者もでています。 以前は閣僚の内、三分の二はセルタス派が占めていましたが、今では王子派が逆転しています」

「セルタス自身はどうなっています?」

「警察の取り調べが続いています。 セルタス自身は罪を頑として認めてはいないようです」

「驚いたな。 クラウス王子が、サッサと罪をねつ造して有罪にして殺してしまうかと思っていた」とグリム。

「王子自身は、本心はそうしたいのだと思います。 しかしセルタスは国王が最も信頼する重臣でした。 国民の大半も半信半疑です。 そこでそのようなことを強行すれば、逆に国民は王子を疑うようになるでしょう。 それでできないでいるのです」

「なるほど。 そうなると、セルタスを救出することが必要ではないですか。 セルタスは、王がユーゴを次期王にしたいというのを知っていたはずです。 セルタスを救出してセルタス派を復活させ、クラウス王子を追い詰めるしかないでしょう」

「簡単に言ってくれる。 それはセシールを救出する以上に難易度が高いぞ」とモーリス。

「とにかく、セルタスが収容されているところを特定してください。 あらゆる可能性を検討して見ましょう」とリオン。


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