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14-15 カーセリアルとの戦い(7)

 形勢は逆転した。 砦への突入も時間の問題と思われていたところへ、突然の戦闘ヘリの参戦で、レビンの軍勢は混乱に陥った。

(まずい、まずいぞ。 どうする) レビンは焦った。 目の前で次々と部下達が殺されていくのを見て、レビンはヘリに向けて火球を放った。 しかし火球はへりの脇をかすめていっただけだった。


 その時、空にもう一つ何か動いているものがあった。 巨大な翼を持つ巨大な生物だった。

「こ、これは・・・・」 レビンは空の闇に目を懲らした。 ヘリが一機その存在に気付くとライトをそちらに向けた。 そしてそこにいたのは、巨大な黒い魔獣、グレイブだった。 そしてその背中にはロケットランチャーを構えたグリムがいた。


 ヘリは慌てて、グレイブに機銃攻撃を加えた。 しかし、グレイブの体にはその程度での攻撃では効かなかった。 グリムは戦闘ヘリに向ってロケットランチャーを撃ち込んだ。 ヘリは慌てて回避しようとしたが、避けきれず機体の後部に被弾しそのまま隣の山の斜面に激突し爆発炎上した。

(グリム殿か? 助けに来てくれたのか・・・)


 残った二機のヘリは、一斉にグレイブに向きを変えるとグレイブを攻撃し始めた。

「グレイブ避けろ。 向こうにはミサイルもある。 まともに食らうとさすがにヤバいぞ」

「承知した」 グレイブは巨体にもかかわらず、素早く空中を飛び回りヘリからの攻撃をかわし続けた。 グリムはそんな中で、背中に立ち弓を構えた。 矢をつがえると、良く狙いもせず放った。 放たれた矢は急なカーブを描いてヘリに向うと、機体の斜め上から貫通した。 ヘリは機体を傾かせると、急激に高度を下げていった。 ヘリは森の中に不時着すると、しばらくして炎上した。


 最後に残ったヘリは、グレイブに向ってミサイルを発射した。 グレイブはそれをかわしたが、ミサイルは反転して追尾してきた。 グリムはアクロの力で無理矢理ミサイルの軌道を逸らすと、ミサイルは山の斜面に突き刺さり爆発した。 グリムは再び矢を放つと、矢はローターの羽根に当たりヘリは急速に浮力を失った。 ヘリは必死に高度を上げようとしたが、そのまま制御できずに砦の下の斜面に激突した。


「さすが、グリム殿だ!」 レビンはそう叫ぶと、あらためて兵達に砦の攻撃を命じた。 兵達もヘリがやられたのを見て士気が上がった。 そこからは砦が落ちるまではそう時間はかからなかった。 日付が換わる頃には砦は落ちた。


 翌日の午後、セルゲイの軍勢が西の砦の麓まで到着した。

「くそっ、間に合わなかったか。 戦闘ヘリもやられたと言うのか」 セルゲイは歯がみした。

「どうされますか、総司令」 指揮官の一人が言った。

「やむを得ん、悔しいが退却だ」

「そんな、この軍勢であれば、まだ砦は落とせます」

「背後にはサルバンの軍勢が迫っている。 砦を攻めれば背後を突かれる。 我々の負けだ」

「そんな、今度こそサルバンを陥落させる事が出来ると思ったのに」

「機会はまたくる。 速やかに撤退するぞ」 セルゲイは全軍に命じた。


 西の砦

 「将軍、カーセリアルの奴らこちらに来ないで南下しています」物見の兵が叫んだ。

「グリム殿の読み通り、退却するようですな」とレビン。

「そうですね」グリムは頷いた。 グリムの隣には小型化したグレイブが寝ていた。

「たぶん本当に撤退するのだろうと思いますが、そう見せかけて反転すると言うこともあり得ます。 警戒は怠らないでください」


 しばらくすると、クオール達が率いる軍勢が到着した。

「グリム殿、おめでとうございます。 お手柄ですな」とクオールが笑いながら言った。

「いやいや、皆の頑張りのお陰です」

「いいえ、この作戦はグリム殿がおられなければ成功しなかったでしょう」とレビン。

「とにかくこれで女王様との約束は果たせました」

「さあ、俺達の勝ちだ。 勝ち鬨を上げろ!」レビンは叫んだ。 それに応え砦中に歓声が響いた。


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