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14-14 カーセリアルとの戦い(6)

 ブレイガーの軍中

 ブレイガーは、昨夜の魔獣との戦いによってちりぢりになった兵達を集め、再編するのに午後までかかった。 1万の兵は8千まで減っていた。 ブレイガーは砦の麓まで来ると、砦に翻るアルクオンの旗を見て激怒した。


「何と言うことだ。 すぐに奪い返すぞ」 ブレイガーは兵達に攻撃を命じた。

「しかし師団長、向こうには魔獣使いがいると思われます。 また昨夜の様なことも考えられます」

「分かっている。 しかし中央の砦も奪われているようだ。 もしこのまま西の砦まで奪われたら、我等は撤退するしかなくなるぞ。 我等がここまで来るのにどれだけの年月と犠牲を出してきたと思う。 それを無駄にするようなことは絶対にできない。 何としても奪い返すのだ」


 東の砦

 「来たぞ!」サラが兵達に声をかけた。 砦の門に続く山道を、迷彩服を着た兵達が押し寄せてきた。 ロケットランチャーを持った兵も何人かいた。

「今だ、撃て!」 グリムは命じた。 砦の壁の上から、兵達が自動小銃を乱射した。 寄せ手はまだ弓が届く距離ではなかったので、油断していた。

「何だと、奴ら銃を使っているのか。 誰が使い方を教えた」とブレイガーは歯がみした。 グリムは、砦の中にカーセリアル軍が残した武器を見つけると、サラの兵達に自動小銃の使い方を教えたのだった。 もちろん撃ったこともない彼らに正確な射撃などできる訳がなかった。 でもグリムはそれでも構わないと考えていた。 周りに銃弾が飛び交えば、カーセリアルの兵達は容易に進軍できないからである。


 「門を破壊しろ! 一気に突入するぞ」 ブレイガーは命じた。 ロケットランチャーを担いだ兵達が前に出てくると、肩膝をついて肩に担いだ。

「まずい。 サラ、あの筒を担いだ奴らを狙え!」 グリムはそう言うと、自分は近くの兵の弓と矢を奪うようにとると、素早くロケットランチャーを構えた兵に向って矢を放った。 兵との距離は50メートル以上あった。 通常なら矢が届く距離では無かったが、グリムはアクロの力を使ったので、矢は見事に届いた。 しかも矢は筒を貫通し、その衝撃で破壊したのだった。 それをみたサラも同じように矢を放った。 その矢は弾頭に当たり、暴発した。


「クソッ、一旦下がれ!」 ブレイガーは砦の上から死角になるところまで、兵を下げた。

「ウオーーッ!!」砦の兵達は歓声を上げた。

「まだだ。 暗くなったらまた攻めて来るぞ」

「その時は、また追い返しますよ」とサラ。


 グリムの言うとおり、夜になって再度ブレイガーは攻撃を命じた。 夜の闇に乗じてブレイガーの兵達は、再び砦の門に迫った。 しかし砦の兵達もそれに対して備えていたため、門を抜くことは許さなかった。 サラは部下達を良く指揮し戦いは深夜まで続いたが、ブレイガーはついに諦めて撤退していった。


 その日の夕刻、西の砦

 レビンは6千の兵を率いて、西の砦を攻めようとしていた。

(今夜中に落とすぞ。 明日になれば、サルバンを攻めていた軍勢が戻って来るはずだ。 守備兵は百から3百だ、一気に攻める)


 レビンの号令のもと、兵は三方から攻め上った。 そして兵達がもう少しで門にたどり着けると言う時、夕闇の中に兵達は「バラバラバラ・・・」という音が近づいて来るのを聞いた。 その音は次第に大きくなり、轟音になったかと思うと、砦の上空に3機の戦闘ヘリが現れた。 ヘリはライトで門に殺到する兵士に向って、機銃掃射を加えた。 アルクオンの兵達は、悲鳴を上げながら次々と倒れていった。


「何だこれは?」 レビンはヘリを初めて見た。 そしてその凶悪な攻撃力に驚愕した。 この戦闘ヘリは、砦の救援に間に合わないと判断したセルゲイが、ベルリアンの基地に出動を要請したのだった。

(こんなのどうやって戦うんだ) レビンは呆然とした。


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