14-8 波乱の作戦会議(2)
「カーセリアルは空に目を持っている。 衛星という目だ。 それは夜であろうと関係無い。 人間の体温を感知する。 その情報を指揮所と呼ばれるところから兵の指揮官に伝えられる。 だから森の中を秘かに移動しようと、筒抜けなのだ」
「何と言うことだ。 それでは勝てるわけがない」とサラ。
「私はラウラから、グリム殿が以前にたった一人でその指揮所とやらを潰したことがあると聞いているが・・・・」とクオール。
「・・・・・」 三人が驚きの目でグリムを見た。
「確かに。 だが今回はそうは行かない。 私の観察したところでは、指揮所の設備は三つの砦にそれぞれ設けられている。 三カ所を同時に潰さなければ意味が無い」
「では打つ手が無いではないか」とトーラン。
「それでも、何か策があるのだろう?」とクオール。
「まあ、一応は・・・」 グリムは自分の策を披露した。
「有り得ない。 そんなの聞いたことがないぞ」とレビン。
「本当にそんなことができるの?」とサラ。
「グリム殿ならできる」とキラン。
「その根拠は?」
「幕舎の外にいる」
レビンが幕舎の入り口を開けると、外に黒い犬の様なものが地面に伏せていた。
「何だ、こいつは? 翼があるぞ、魔獣か?」
「そうだ。 そいつを怒らせたら、サルバンの街はメチャメチャになるぞ」とキラン。
「冗談だろう?」
「本当だ、そいつはグリム殿の命令しか聞かない」 グレイブは皆の視線を感じ皆の方をチラッと見たが、興味なさそうに大きなあくびをした。
「では、グリム殿の策でいくと言うことで良いな」とクオール。
「待ってくれ。 俺にはまだこいつの言うことを、信じ切れない。 このままでは従えない」とレビン。
「ならばどうすると言うのだ」
「手合わせをさせてくれ」
「グリム殿、どうしますか?」
(はあ、めんどうくさいなあ。 だがやるしかないか)
「良いだろう」
幕舎の外、皆が見守る中、二人は対峙した。 グリムは無手、レビンは二本の木剣を持って構えた。
(どうする。 この男に認めさせるには、力の差を示すしかない。 時間をかける訳にはいかないぞ) そうグリムが思った時、視界の隅にグレイブが入った。
「私を倒されたあなたが、この程度の者に負けたりはしないでしょうな」 グレイブの声が頭に聞こえた。 グレイブの顔が笑っている様に見えた。
「行くぞ!」 レビンは二本の剣を自在に振るいながら襲いかかった。 グリムが意識を集中させると、レビンの剣がスローモーションのように感じられた。
(一気に決める!) グリムは剣先をギリギリでかわしながら、一気に距離を詰めた。
「うわっ!」レビンは驚いた。 一瞬で間合いを詰められ、しかもその動きは見ることができなかった。 グリムは左手でレビンの右腕をつかむと、右腕を腰にまわしレビンを投げた。 レビンはあまりに一瞬のことに何が起きたか分からずに、空を仰いでいた。 そして顔面にグリムの拳が迫った。 グリムの右拳は寸前で止められた。
「勝負あったな」とクオール。 トーランとサラはあまりの展開に、今見たことが信じられなかった。
「これで納得したか?」とキランは笑った。
「ま、待て、今のはちょっと油断しただけだ。 もう一度・・・」
「見苦しいぞ。 まだ彼我の力量の差が分からぬか!」とクオール。
(やれやれ。 グレイブちょっと見せてやれ) グリムはテレパシーでグレイブに言った。 グレイブは面倒くさそうに立ち上がると、広い場所まで行くと巨大化した。
「うわっ!!」 レビン達のみならず、近くにいた兵達まで驚き腰を抜かした。
「これでも信じられないか?」
「分かった、全面的に従う」とレビンは青ざめながら言った。




