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14-7 波乱の作戦会議(1)

 グリムは、数日間かけて敵が迫るサルバンの周辺やその後方など広範囲に、軍勢の配置や地形など詳しく調べた。 そしてクオール達がサルバンに到着する頃を見計らって、グリムもサルバンに入った。 前線の砦で戦っていたアルクオンの軍勢は次々と砦を奪われ、サルバンまで退いていた。 街の城壁の外に布陣した、撤退してきた兵士達は疲れ、傷つき士気は大分落ちている様子だった。 グリムはクオールの幕舎の前にグレイブを待たせると、中に入った。 そこにはクオール、キランの他に三人の将軍と思われる人物がいた。


「やっと来たか。 どこで道草食っていたのだ?」 クオールは笑いながら言った。 見知らぬ三人は、グリムを品定めするようにグリムを見た。

「戦場を下調べしてきた」

「紹介しよう。 七将のレビン、トーラン、サラだ。 こちらが女王陛下から新たに将軍に任ぜられたグリム殿だ。 よろしく頼む」

「俺はこんな奴と一緒に戦うことは、ご免こうむる。 この者はカーセリアルの軍人だったと言うではないか。 このような者、信用できぬ」 頬に大きな傷跡がある男が言った。

「失礼だぞ、トーラン。 グリム殿はその実力を見込まれ、陛下が直々に今回要請されたのだぞ」とキラン。

「ほう、人をあまり信用しないお主が、なぜそのようにこの男に入れ込む?」

「私は、グリム殿の力を実際に見ている。 個人の武のみならず、戦略、指揮いずれも我等よりも上だ」

「何だと、聞き捨てならないな」 小柄だが目つきが鋭い男が言った。

「レビン、キランの言うとおりだ」とクオール。

「クオール、あんたまでそんなことを・・・・」 紫の髪を持つ女性が言った。

「キランとスエルが同時に戦って、グリム殿に負けた」

「信じられない」 三人はあらためてグリムの顔を見た。

「とにかく、我々はここでカーセリアルをくい止めねばならない。 そこで陛下は、グリム殿に全権を委任した」

「何だと!」

「表向きは私が総司令官だが、全体の作戦、指揮権限はグリム殿にある。 我々はグリム殿の命令に従うのだ」

「・・・・・」 三人は言葉が出なかった。

「では会議を始めるぞ」とクオール。


「それじゃあ、陰の総司令官殿の作戦を拝聴しましょうか」 レビンが皮肉を込めて言った。

(ふう、これは素直にまとまりそうもないな) グリムは皆の顔を見渡すと言った。

「まず皆さんは現状を打開するために、どう戦うのがベストだと考えていますか?」

「何だよ、考えがあるんじゃ無いのかい。 サルバンに籠城して戦うしか無いだろう。 ここの城壁は高くて堅牢だ。 奴らの軍勢は3万ほどだ。 ここを攻めるには5万の兵は要る。 その内に攻めあぐね、補給が続かなくなり士気が落ちるだろう。 3カ月が経つ頃には蹴散らすことができる」レビンが考えを披露した。 他の二人も頷いた。

「残念だがそれでは負ける」とグリム。

「何だと!」

「カーセリアルにはロケットランチャーがある。 城門は容易く破られるだろう。 それに補給の件だが、奴らは奪取した三つの砦を自分達の前線基地化している。 そしてそこへヘリを使い物資を大量に空輸している。 奴らは本気だ」

「クッ、それじゃあ、勝つ作戦を聞かせてくれ! どう戦うんだ?」

「戦わない」

「はあ? 戦わないでどうやって勝つと言うんだ?」

「まともに戦わないという意味だ。 砦をもう一度取り返す。 そうすれば補給を断たれるとともに、背後を襲われる恐れから軍を退くしかなくなる」

「簡単に言ってくれる。 俺達がそれをやろうとしなかったとでも思っているのか? それができなかったから、ここまで一旦退いたのだ」とトーラン。

「奴らに森で奇襲をかけようとしても、奴らにことごとく読まれて裏をかかれた。 まともに戦おうとすると、奴らは弓の届かぬ距離から鉄の弾の雨を降らせ、味方の兵は次々と倒れていった」 サラと呼ばれた女の将軍が悔しそうに言った。


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