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14-5 グリムの出征

 二日後、グリムは女王に謁見し、要請を正式に受け入れた。

「陛下、お受けするにあたり、二つお願いがございます」

「申してみなさい」

「総指揮官はクオール殿でお願いします。 全体の士気のためと、私に対する注目を下げ自由に動けるようにするためです」

「良いでしょう。 もう一つは?」

「私のやることに、異議を唱えないこと。 私の自由に制限を設けないことです。 私がやろうとすることは、常識的には有り得ないことです。 ですがそれが相手の裏をかくことになります」

「分かりました。 好きにやりなさい」

「あっ、すみません。 もう一つございました」

「なんです?」 さすがに女王は少し嫌な顔をした。

「キラン殿の謹慎を解いてください」

「なんですって」

「今回の作戦に加わってもらいます」

「それは良いが、あなたは構わないのですか?」

「構いません。 彼は彼なりに王国のことを考えての行動です」

「わかりました。 そのように手配しましょう」


 その後、クオールとキランが呼ばれ、女王より命令が伝えられた。 二人は驚くと共に喜んだ。 クオールには増援軍の総指揮官として兵の編成を準備するように命令された。 ただしグリム将軍と良く相談して、グリム将軍の作戦を全面的に支援するように命じられた。 キランにはグリムの件については不問にすると伝えられた。 その変わり、グリム将軍と行動を共にして彼を補佐せよと命じられた。 クオールはグリムと今回の作戦について打ち合わせをした。


「女王陛下の要請は受けたものの、正直なところまだ作戦は固まっていません。 ただ基本戦略は、兵力の壊滅ではなく兵站を切るなどによって、撤退を余儀なくさせようと考えています」

「分かった。 取りあえずどのような作戦にも柔軟に対応できるように、考えておこう」


 5日後、グリム達は王都から出兵した。 兵の総数は1万5千、クオールを総司令としてグリム、キランが将軍として率いた。 グリムは慣れない騎竜にまたがり進んだ。 その脇をグレイブが従った。 グレイブは兵達の間ですぐに噂になった。 宮殿で巨大化したグレイブを見た兵から噂はすぐに広まり、グリムは兵達の間で“魔獣将軍”と畏怖されていた。


 キランがグリムに近づいて来ると言った。

「今回、私の謹慎を解いてくれるように、陛下に進言してくれたのはあなただそうですね」

「いや、まあ・・・。 今回、あなたの力が必要だと思ったからです」

「ありがとうございます。 必ずやお役に立って見せますよ」

「よろしくお願いいたします」


 目的地のサルバンまでは1カ月近くかかる見込みだ。 途中のケアルまでは11日かかった。 ケアルからサルバンまでは更に14日ほどかかるとみられた。 ここでグリムはクオールに提案した。


「作戦を考える上でも、先に行って戦場を良く見たい」

「どうするつもりだ。 森は迷い易いし、前線ともなれば危険だぞ」

「こいつと行く」 グリムの側で寝ていたグレイブを指さした。

「なるほど、これならばどんな魔獣が襲って来ようと心配ないな」

「兵は私が率いていきましょう」とキラン。

「ありがとう」

「ではそう言うことで、私は明日の早朝には出発する。 サルバンで会いましょう」

「分かった。 だが気をつけてくれよ。 もしあんたに何かあったら今回の作戦は失敗に終わる」


 翌朝、グリムとグレイブは街の外まで来ると、グレイブが本来の大きさに戻った。 グリムがその背中に乗るとグリムが言った。

「それじゃあ行くか。 まずは南に向ってくれ」

「承知した」 グレイブは黒い翼を大きく広げると、南の空に向って羽ばたいた。 事情を知らないケアルの警備兵達は、突然現れた巨大な魔獣に大騒ぎになった。


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