14-3 和解
マリウルの迎賓館
グリムが遺跡から帰って数日後、カエンが客の来訪を告げた。
「グリム、なんかとても強そうな男の人が二人来ているよ。 お友達?」
「誰だろう? 俺には友達なんかいないぞ」 そう言っていると、客が通された。
「やあ、突然訪問して申し訳ない」 笑いながら入って来たのはクオールだった。 そしてその後ろに申し訳なさそうに入って来たのは、キランだった。
「これは珍しい。 どうされたのですか?」
「実は、こいつがあなたに会って謝罪したいと言うのでな。 連れてきた」
「グリム殿、今回のことは本当に申し訳無かった」キランは深々と頭を下げた。
「もういいですよ。 それよりあなたは、今謹慎中でしょう。 勝手に出歩いてはまずいのでは・・」
「それはそうなのだが。 私はどのような罰も受け入れる。 だが死ぬ前にあなたに謝罪しておきたかったのだ」
「そんな、死刑になるわけじゃないでしょう」
「いや、陛下が死を賜ると言うのなら、喜んでお受けするつもりだ」
「まあまあ、キランもそう思い詰めずに。 まずは一緒に一杯やろう」 クオールは持参した酒壺を挙げて見せた。
一時間後、三人は大分打ち解けていた。 カエンは遠慮していた。
「グリム殿は、どのようにしてあのような力を得たのですか?」とクオール。
「それは・・・」 グリムは一瞬、クオン村の人達に迷惑がかかるのでは、と考えたが、当たり障りが無いように言った。
「なるほど、そんなことが・・・」
「ではグリム殿は一度、アルクオンの兵士としてカーセリアルと戦われているのではないですか。 ではまた、我々と一緒に戦ってください。 私はあなたの武術、アクロの力、指揮官としての力量いずれもがこの国でも一、二を争うと考えています」とキラン。
「いや、あの時は自分の記憶がなくなっていて、今とは状況が違う。 確かに私は今、国ではお尋ね者になっていて居場所もない。 だが国や人々を憎んで復讐したいと思っているわけではない。 やはり同国人と戦うには抵抗がある」 グリムはそう言うと杯を空けた。
「惜しい、実に惜しい。 これほどの力を眠らせることになるのは・・・」とクオール。
「あの魔獣はどのようにして手なずけたのですか? アクロの力ですか?」 キランは部屋の隅で寝ているグレイブを指さして言った。
「力でねじ伏せた」
「はあ? 冗談でしょう」
「信じてもらえないかも知れないが、怒りにまかせて拳にアクロの力を載せて殴ったら、吹っ飛んだ」
「もう笑うしかないですな」
「ところで、私も遺跡の正体があのような船だとは知らなかったのですが、陛下はあれをどのように使われるおつもりなのか」とキラン。
「俺はアレに兵を乗せて、カーセリアルの王都に攻め込むつもりだと考えている」とクオール。
「お二人とも、私の前でそんな話しをするのはまずいのでは? サウゲラのじいさんも私にその辺のことを知られたくなくて、秘密にしていたのだろう。 私を殺そうとしたのだって、秘密保持をしたかったからだ」
「もうそんなことどうでも良い」とキラン。
「グリム殿はどう考えられる」とクオール。
「私の考えは少し違います。 あれでカーセリアルの王都を攻めるのは間違い無いでしょう。 しかし兵を乗せて攻め上るのでは無いでしょう」
「ではどのように・・・」
「あの船に搭載されている兵器です」
「兵器?」
「ええ、私は前に我等の祖先が住んでいた星、地球における戦争史を読んだことがあります。 それには、あのような空飛ぶ船が造られる様になった頃には、様々な大量破壊兵器が造られたそうです。 それには何十キロも先の山を吹き飛ばす爆弾や光で攻撃する物などです」
「そのような物が、あの船に装備されていると?」
「恐らく。 そしてわざわざカーセリアルの王都に行かずとも、ここから攻撃できるはずです」
「何ですと! では女王陛下はアレを使って一気に決着をつけるおつもりか」とクオール。
「ただし、そう簡単には行かないでしょう」
「何故です?」とキラン。
「もしそれを使えば、王都にすむ住民が何十万人、何百万人が一瞬で死んでしまうでしょう」
「それほどか・・・」
「おそらく。 そしてもしそのような物を使えば、カーセリアルも黙っていないでしょう。 私は、カーセリアルも同様の物を持っているだろうと考えています」
「むむむ、そう言うことか。 ではお互いにそんな物は使ってはいけないのでは?」
「私もそう思います」とグリム。
「それは、何としてもお止めせねばならないだろう」とクオール。




