13-9 遺跡の秘密
グリムは確信した。 理由は分からないが、この魔獣達はグリムの言葉に反応したのだ。
(言葉が分かるのか? いやそれは有り得ない。 だが・・・) グリムは試してみることにした。
「下がれ!」 グリムは魔獣に向って叫んだ。 すると魔獣達は、一瞬躊躇しながらも、ゆっくりと後退し始めた。
「何だと、グリムの言葉に従うと言うのか? 何故だ?」とクオール。
「俺にも分からん」
「だが、今が好機だ。 今のうちに抜けよう!」 そう言うと、魔獣達の間を通り抜けた。 その時には一行は8人まで減っていた。
(どういうことだ?)グリムには訳が分からなかった。
二時間後、遺跡の丘
グリム達は丘の上まで到達した。 幸いなことに例の巨大な魔獣はいなかった。 丘は全体が2メートルぐらいの低木で覆われていた。
グリム達は藪をかき分けながら、丘の中央辺りで石碑を探した。
「あったぞ!」 兵士の一人が叫んだ。 グリム達がその場に行くと、3メートルほどの高さの巨大な石板が立っていた。 そこには“我等の原点、我等の誇り、我等の希望”と書いてあった。 その石板の他には、辺りには何も無かった。
(これだけ? 遺跡と言うよりは墓のようだな。 本体は地下だと言っていたが、正しくそれじゃあ墓じゃないか)
「それで、これからどうするんだ? 悠長に穴を掘っている時間はないぞ」 グリムがポーラに言うと、ポーラは石碑の周りを調べ始めた。
「待ってください。 まずはこの石をどけてください」 ポーラが石碑の前の地面の2メートル四方の石板をたたいた。 クオール達が6人がかりで動かそうとしたが、ビクともしなかった。
「どいてくれ」 グリムはそう言うと、石板に意識を集中した。 すると石板がカタカタと振動しはじめると、スーッと石板が空中に浮かび上がった。
「お前は、そんなこともできるのか。 何というアクロ使いだ・・・」クオールはあきれたように言った。
石板が除かれた地面には、地面深く下に続く階段が現れた。
「行きますよ」 ポーラは松明を点けると中に入ろうとした。 その時、グリムには迫って来る大きな気配を感じた。
「来る! 東からだ。 この大きさは、ここを守っている奴だろう」 グリムは東の空を見上げた。 遙か遠くの山の向こうに小さな黒点が見えた。 そこからものすごい圧力を感じた。
「急げ!」クオールが皆を階段へ向わせた。
ポーラが先頭になって階段を下りて行った。 周りは石積みの壁に囲まれていた。 グリム達が10メートルほど下りて行った時、地上に何かが舞い降りたのを、グリムは感じた。 そいつは怒っていた。 地面に対して地団駄を踏んでいるのだろう、振動が伝わり天井から石の破片がパラパラ落ちてきた。
「ここだわ!」 ポーラが言った。 そこは行き止まりだった。 そこの壁には鳥が翼を広げているような、花が咲いているような、紋章(?)のような丸いレリーフがあった。 ポーラはリュックを下ろすと、その中をまさぐり何かをとりだした。 それは掌ほどの大きさで、6個の頂点を持つ星のような形をしていた。 グリムには素材は分からなかったが、赤い石のようなものでできていた。 ポーラはそれをレリーフの真ん中にある窪みにはめ込んだ。 それはそこにピッタリと収まった。 するとその壁が床に落ち込んだ。 そして現れたのはまた壁だった。 その黒い壁は不思議な素材だった。 石?金属?セラミック?なめらかだが光沢はなかった。 ポーラは壁面を触って探ると、突然一部が右にスライドして開いた。 ポーラはそこに現れたテンキーのようなものに何かを打ち込み始めた。 するとそこに緑の小さなランプが点灯すると、突然壁が開いた。
中にグリム達が入ると、次々とライトが点灯し室内が明るくなった。 そこはかなり大きな空間だったが、ディスプレイや計器の様なものが並んでおり、グリムには何か分からなかった。 ポーラはいつの間にか、頭にヘッドセットのような物を着けていた。
「ハイ、エマ。 調子はどう?」 ポーラは話しかけた。
「まだ良く分かりません。 現在自己診断中です」 スピーカーから若い女性の声が聞こえてきた。
「エネルギー関係はどう?」
「メイン動力準備中です。 点検終了後、起動します」
(これは、基地か? いや、違う。 これは宇宙船だ。 アルクオンの祖先の人達が乗ってきた宇宙船だ) グリムは驚きのあまり言葉が出なかった。 そしてそれはクオール達も同様だった。




