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13-8 遺跡への道(6)

 4日目、昨夜は岩山の下を何度か魔獣が通過したが、襲われることはなかった。 リオンの“気配を消す”という能力が効いたのかも知れない。 14名は日の出と共に出発した。 ポーラはグリムのところにやって来ると、言った。


「昨日はすみませんでした。 私、気が動転してしまって・・・・」

「気にしていない。 いつものことだ」


 谷の入り口

 昼前に目的の谷の入り口までグリム達は到達した。 確かに遠くに見える谷間に丘が見えた。

(問題はこれからだ。 両側が山で逃げ場がない。 そしてあの丘に到達するまでに、確実に襲われる。 だがクオールが言うような大きな魔獣の存在は感じられないぞ)


「どうする?」とクオール。

「行くしかない。 大きな魔獣の存在が感じられない。 どこかに行っているのかも知れない。 ならば今がチャンスだ」

「分かった」

「だが両側の山には、別の奴がいるぞ。 丘に着く前に見つかって攻撃を受けるだろう。 気を抜くな!」


 丘までは腰近くの高さの草原が続いていた。 グリム達は真っ直ぐに、できるだけ急いで歩いた。 2キロほど進んだとき、グリムは近づいて来る魔獣を感じた。


「来るぞ! 右だ。 4体。 まて、左からも近づいて来る。 別の奴が5体だ」

「クソッ! 戦闘準備だ」クオールは兵達に命じた。

「将軍、もう矢がほとんどありません」 兵の一人が叫んだ。

「矢が尽きたら、剣で戦え!」


 30分後、グリム達は2種類の魔獣に囲まれていた。 青い大木のような胴体に頭(?)の部分には鞭のような触手が無数に生えており、それを自在にふるって襲って来た。 それに捕らえられた兵士はそのまま、頭頂部に開いた穴(口?)に呑み込まれた。 それとは反対側には、背中に幾つもの角のようなトゲが生えた牛のような魔獣が襲ってきていた。 頭には鋭い二本の角も生えていた。


 クオールを始め兵士達も必死に戦ったが、戦況は良くなかった。 クオールは青い魔獣の触手を剣で斬り、距離を詰めると一気に胴を切り裂いた。 また別の兵士は炎で焼き払った。 キランは槍で牛の様な魔獣に立ち向かい、他の兵士も剣や槍で戦った。 しかし徐々に押され兵士達も次々と負傷していった。

(どうする、このままではじり貧だ。 流れを変える必要があるぞ)


 グリムは近くの兵士から弓と矢筒に残った3本の矢をもぎ取ると、弓に3本の矢を一度につがえ、素早く放った。 矢はそれぞれが意志を持ったかのように軌道を変え、牛の魔獣の額にめり込んだ。 3体の魔獣が同時に倒れた。


 「キャーッ!」 ポーラの悲鳴が聞こえた。 グリムが振り向くと、ポーラに牛の魔獣が迫り角でポーラを突き刺そうとしていた。

(まずい、ポーラが死んだら、これまでの苦労が全て水の泡になってしまうぞ) グリムは急いでポーラの方に向おうとしたが、間に合いそうもなかった。

(止めろ!!) グリムは思わず心の中で叫んでいた。 すると不思議なことが起きた。 突進を始めた魔獣が、突然ポーラの前で動きを止めたのだった。

(なに? どうしたのだ?) グリムは不思議に思いながらもポーラの方へ走った。 グリムは恐怖で動けなくなったポーラの体を抱えると、そのまま走り抜けた。

「ありがとうございます」とポーラ。 グリムはそれには応えず魔獣達の動きを牽制した。


 魔獣達は再び、グリムとポーラの方へ突進してきた。 四方から同時に攻め込まれ、グリムは逃げ場を失った。 グリム一人なら攻撃をかわすことも可能だったろう。 しかしポーラを抱えたままでは、完全にかわしきるのは無理だと判断した。


「止めろ!!!」 グリムは何の確証も無かったが、一か八か大声で叫んだ。 すると、周りの魔獣達の動きが一斉に止まった。

「なに! なにが起きたのだ・・」クオール達も驚いた。


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