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13-7 遺跡への道(5)

 村を出発して三日目、グリム達一行には疲労がみられた。 兵士達はそれでも強行軍の訓練は受けているし体力もあるのでまだそれほどでも無かったが、ポーラとバイルは明らかに遅れだした。

(まずいな、二人は大分疲労が溜まっている。 注意力も散漫になってきている)


 昼頃に小川に到着した。

「ここで休憩しよう」 グリムは皆に言った。

「だがここは襲われたら、防御には適さないぞ」とクオール。

「それはそうだが、あの二人は少し休ませないと持たない」 グリムは岩に座ってうなだれているポーラとバイルを見た。

「確かに・・・」

「大丈夫だ。 今近くに魔獣はいない」


 グリムは二人のところへいくと、話しかけた。

「大丈夫か?」

「あっ、はい。 大丈夫です」とバイル。

「もう少しだ、明日中には遺跡のある谷に着けるだろう」

「そうですね」とポーラ。

「それにしても、遺跡に何があると言うんだ。 あの女王様は何を欲しがっているんだか」 グリムが愚痴を言うと、二人の顔が硬くなった。

「申し訳ありませんが、それについてはお答えできません」

「そうか、すまない。 余計なことを聞いてしまったな」

「いいえ」


 30分ほど経った頃、グリムは南西からものすごいスピードで近づいて来る魔獣を感知した。

「来るぞ! 用意しろ!」

「どこだ!」とクオール。

「南西、約3キロ。 単体だがかなり大きい、スピードも速い。 すぐにここまで来るぞ」

「どうする?」

「二手に別れよう。 あそこに見える高い木の下に夕刻まで集まるんだ。 追いつかれそうになったら、ムタを犠牲にするんだ」

「分かった。 お前も死ぬなよ」 そう言うと兵達に渡河を命じた。


 グリム達は小川を渡ると、クオール達と別れた。 魔獣は小川を渡ると、クオール達の方へ向った。 グリムが一瞬見たその姿は、巨大なトカゲ、いや恐竜のような姿だった。 グリム達は背丈ほどもある草藪の中をかき分けながら、ひたすら走った。


 夕方、グリム達が約束の木の下に着いたときには、まだクオール達は着いていなかった。 グリム達も途中別の魔獣に襲われ、撃退したがそこで二名の兵士がやられてしまった。


 陽が沈んだ頃、ようやくクオール達が到着した。 10名いたはずだが、たどり着いたのは6名だった。 怪我をした兵士もいた。 バイルの姿が無かった。


「バイルは? 彼はどうしたの?」ポーラがクオールに尋ねた。

「残念だが、彼は亡くなった。 つまづいて転んだところを、首に食いつかれ首の骨を折った。 一瞬のことだった」 クオールはすまなそうに言った。

「そんな・・・・」 ポーラは泪を浮かべながらその場に崩れ落ちた。

「申し訳ないが、すぐに移動する。 そこの岩山の中ほどに洞窟がある。 今夜はそこで過ごす」グリムが言った。

「冷たいのね。 仲間が何人も亡くなっているのに」 ポーラがグリムを睨んだ。

「死んだ者は生き返らない。 俺は生き残った者達のことを考えなければならない」

「やはり噂は本当だったのね。 あなたはカーセリアルにおいても仲間から“死神”と呼ばれて、仲間がいくら死んでも平気だというのは。 アルクオン人なら尚更よね」

「よせ! グリム、気にするな、ポーラは情緒不安定になっている」とクオール。

「いいさ、そう言われるのは慣れている」 グリムは力なく笑った。 そして荷物を背負って岩山に向った。

(ここでも俺は死神と呼ばれるのか・・・)


 岩山の洞窟

 洞窟の中は意外と広かった。 中で火をおこし、食事の準備をする者、怪我人を治療する者、奥を確認する者など手分けした。 グリムは外を警戒しながらも、地図を見つめ、明日の行程を考えていた。

(たぶん明日には着けるはずだ。 だが明日はもっと苛酷になるだろう。 何人生き残れるんだ?) そんなグリムの考えを察したようにクオールがやって来た。

「明日は恐らく、奴が現れるぞ」

「例の遺跡の近くにいる奴だな」

「ああ、奴はまるで遺跡を護っているかのように現れる」

「厄介だな・・・・」

「食事ができましたよ。 とにかく食べてからにしましょう」リオンが呼びにきた。

「ああ、そうだな」


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